富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-10-27

十月廿七日(火)日暮れに北角のHarbour Grand Hotelに寄る。Z嬢が近くにゐたので落ち合ふまでの時間潰し。ヴィクトリア湾一眸の五ツ星ホテルと鳴り物入りで半年くらい前?に開業のホテルは李嘉誠財閥でHarbour Plaza系列。紅磡(黄埔)に1997年に開業のHarbour Plaza Hotelは香港返還紀念式典参列で来港の江澤民ら中国要人が宿泊し「さすが李嘉誠系」と話題になつたが、その後、北角、紅磡メトロポリス、天水圍リゾートシティと今一つパツとせぬ展開続け、近々今度は土瓜湾に開業。いづれの立地も埋立地=紅磡、悪条件=葬儀場に隣接の北角や辺疆の天水圍などでオフィスビルにするには需要なくホテルでも建てゝおいて周辺含め都市開発整ふのを待つ感じ。旗艦の紅磡のHarbour Plaza Hotelだけがどうにか五ツ星の体裁で、ペニンスラ系であつた九龍ホテル買収を済ませ、でこの北角のHarbour Grand Hotelは紅磡に続き五ツ星売り物にするが立地条件が香港島の住人すら「どこにあるの?」の中途半端に不便な場所。油街といふ興味深い名の通り、此処で船から石油を陸揚げし発電したのが香港電力で、燃料として販売したのがシェル石油なので香港電力の舊本社もあれば蜆殻街(Shell St)がある。まぁそんな地元の郷土史好きの老人の話はさておき、この五ツ星ホテルは眺望以外の何も期待すべきぢやないだらう。所詮、やつぱり勤勉な実業家以外の何者でもない李嘉誠だから、それ以上のセンス、藝術性であるとか美学、サービスを期待してはいけない。尖沙咀の舊水上警察本部の建物はどうにか遺したが敷地内の樹木伐採し環境破壊してThe Heritage(文物酒店と云う)建造した直近の前科もある。でこゝまで前置きが長かつたが、このHarbour Grandは黄昏時は最上階のLe 188° Restaurant & Loungeなる場所が眺めは最高らしいがG階奥のラウンジがいちわうバーなので其処に寄る。だいたい初めて入つたバーで"Martini please! yes, gin martini, stir, straight up with no olives, just lemon peel dashing, yes, thank you"とか注文。こゝにバーテンダー君のいくつかの間の手が入るのだが、この会話が成立するかどうか、で、もうどんなマティーニが供されるか、がわかるといふもの。 田舎漢の宿泊客か、と思つたくらい地味な従業員の制服姿の女給がアタシの註文をとつたらカウンターに入りマティーニ調合。シェイクされちまつたので「ちょいと、ねぇ、ステアですよ」とダメ出し(これも修行だと思つてくれ)。ベルモットのちよつと多すぎる、及第にはほど遠いが最近の香港まら「マシ」と思はないといけないマティーニ飲む。麦酒はステラアルトワのずいぶんと大きなディスペンサーがこれみよがしに設置され試しに一杯飲んでゐるとZ嬢いらつしやる。BGMが二曲一緒くたにかゝつてゐる、とZ嬢。えつ?とよく聞くと慥かに天井のスピーカーから「禁じられた遊び」のギターソロと、もう一曲フラメンコが同時に流れてゐる。Z嬢と「もう来る機会がないかもしれないから」とLe 188° Restaurant & Loungeのある最上の四十一階に上がる。さすがに「飛び級」は四のつく階くらゐで十八階が四十一階表示などではない。慥かに眺めはそりや絶景のラウンジがそこに。眼下にビクトリア湾をほゞ三方見下ろす限り。景色は佳いがこゝも給仕やバーテンダーのトーシローさからして美味い酒はどうも期待できさうにない。せつかくの最上階のラウンジなのにホテルの巨大なネオンサインが五月蝿いのは台無し。“Best New City Hotel”つて八王子のビジネスホテルぢゃないんだから、まったく。当然ここは見学のみ。ホテルを出ると周囲は昔からの下町の自動車整備工場の油臭さ。絶対に李嘉誠に負けないで自動車整備続けろ!と心の中でエール送る。帰宅して豚肉のカレーライス食す。窓を開けていると、ようやく肌寒いような涼風となる。今夜は半月。晩十時前に床につくのがすっかり習慣化。
▼その人の風貌で役職のイメージとのミスマッチを嗤つては失礼だが、どこの田舎漢か、のこの人が中国で六大銀行の一つ、招商銀行董事長と言はれるとやはり驚く。
▼今日の和菓子。新潟は小千谷の松月堂喜三兵衛、黄味小判。最近、あつさり、甘み抑へめの和菓子が多い。で、この黄味小判は頬張つた瞬間に一瞬「甘つ!」と思ふのは黄卵と砂糖が昔風に贅沢に使はれてゐるから。昔はこれくらゐの菓子が当たり前だつた。懐かしく、またこれくらゐだから渋茶にとてもよく合ふ。
米朝師匠が文化勲章NHKで「古典落語では初の」つて新作で誰か文化勲章もらうたことありますか? 朝日(翌朝)の「上方落語の礎築く」もヘン。上方落語は昔からあつて戦前には春団治など人気ほこり戦後の凋落の時期からの復興に尽力が米朝師匠だろう。草間弥生さんが文化功労者。紐育でのあの前衛アートがまさか文化功労者とは。今年の文化功労者には草間デザインの紀念品を、ぜひ。それに大鵬文楽で簔助さん。すごい幅。大鵬の化粧まわしに草間プリント。蓑助さんなら草間演出の曾根崎心中。築地のH君に教へられたが天文力学の古在由秀氏は父方の叔父が古在由重で、幣原喜重郎が母方の大叔父、といふことは古在由重と幣原喜重郎とは妙。

富柏村サイト www.fookpaktsuen.com
富柏村写真画像 www.flickr.com/photos/48431806@N00/
http://twitter.com/fookpaktsuenhkg