富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陰暦九月初六。霜降霜降とはひへ東京でも国電はまだ冷房がついてゐると聞く。東京といへば十一月十二日に天皇在位二十周年紀念式典の由。十年前のちやうどこの日に皇居前広場で芸人ら集め「天皇陛下御即位十年をお祝ひする国民祭典」開催。あまりの芸能イベントぶりに右翼、保守からも疑問の声あり。で今回は国立劇場で、といたつて地味、だがこれは政権交代は関係あるまい。さういへば岡田外相が国会での天皇の開会の言葉を「もつと自由に」と提言。閣議決定の内容で粛々と形式的であることの意義。天皇の立場的に「自由に」は如何なものか。まさか陛下に「護憲」諭してもらふわけにもいくまひ。早晩に中環。FCCでY女史、M氏と打合せ、と言ひつゝ面白可笑しくの鼎談。Napa StationのCab Sauvを二杯。IFCの映画館で楊凡監督の『淚王子』観る。
▼楊凡監督『淚王子』(以下、ネタばらしはないが映画についてのコメントあり)一言でいへば作りすぎ。実話に基づく物語だといふが話をドラマティック、スリリングにしすぎ、艶つぽすぎ、筋が込み入つた悲劇にしすぎ。1950年代前半の台湾の反共白色テロ、国軍内での粛清甚だしき時代の悲劇描きたいのはわかるが、台中郊外の国軍の清泉崗空軍基地とその家族が暮らす近隣の集落で、軍人の婦人たちのあの普段からのチャイナドレスと艶っぽさはなかろう、と思ふが、国民党と軍、外省人を当時、台湾に客居のかなり異質なものとして描いてみせる意図がこの映画の作り手にあつたのかしら。デジタルはもはや映画製作で常識なのかもしれぬが空や海の色までフォトショップで素人が遊んでるんぢやないんだから色づけはやめて。たゞし、さうした過剰な演出はちよつと食傷気味だが、キョービの世界のテロへの恐怖と構図は同じだが、国府中共といふ敵の存在によつて成り立つてゐる、といふ、しかも台湾に追ひ込まれた結果、敵が実質的には仮想敵になつてしまひ国民党政府と軍の内部に諜報や共産主義分子をば作ることで組織としての体裁を保つ、といふ当時の実態(中共中共で右派といふ敵を作り、は同じこと)を描いてみせた点は評価。

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