富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-09-28

九月二十八日(月)フィリピンでルソン島直撃し半世紀来の記録的豪雨でマニラ市街四割だか浸水と報道され百五十人だか死亡の颱風は海南島の方に抜け、その余波で天気不安定で雨模様。午後遅くから昏刻に大雨。帰宅して晩に野菜を無水鍋に蒸して食す。他に伊太利の燻製牛肉と無花果を合はせる。チーズはクラッカーに合はせるが、ふと冷蔵庫から固い豆餅を出して焼き、それにブルーチーズのせて頬張れば殊更に美味。MargauxはCh. MonbrisonのCru Bourgeois 01年飲む。ちよつと軽さで物足りぬが野菜とチーズとの相性佳し。
▼先日読んでゐた吉田秀和さんの水戸芸術館にかゝはる随筆やスピーチ集(水戸の− 空•風•人)で芸術館実現を果たした佐川一信、元•水戸市長の急逝で、秀和さんが1995年の芸術館での水戸室内管絃楽団の演奏会で佐川氏追悼を述べられ、そのスピーチのあとの「これからアンコールとして、佐川さんがとくに好んでいらっしゃったモーツァルトの『ディヴェルティメント ニ長調』(K136)の第二楽章を水戸室内の音楽家諸君に演奏してもらって、彼の霊に捧げたいと思います」と語られる。アタシは恥づかしながら、この曲を知らず「どんな曲なのかしら」と手つ取り早くYoutubeで漁ると「えッ、この曲」と小学生でも知つてゐるモーツァルトのこれ。あまりに有名だがこの曲の名がモーツァルトの「ディヴェルティメント」で、しかもこれが二楽章なら一楽章は聴いてみたが全く知らず。Z嬢も知らず。そりや立派な曲なのだらうが、これを好んで愛聴、といはれると、やはり佐川一信氏を当時アタシらは「水戸の菅直人」と呼んでゐたことが強ち間違つてもゐなかつたか、と今更納得。Z嬢と「意外とかういふふうに知つてゐるやうで曲を知らない」と子どもの頃に耳に残る曲の話になり、アタシはマリーの「金婚式」を聴くと小学校の時の給食を思ひ出す、と言へばZ嬢は「アルハンブラの思ひ出」が下校の曲だつた、と。ずいぶん暗い武蔵野だが菅直人が自転車で走つて選挙運動してゐるのをZ嬢は見てゐる。
自民党総裁選挙で谷垣二世当選。自民党の結党当時の理念である「国民のための」つて、つまり最近は(つていつからか知らぬが)国民のためぢやなかつた、といふことかしら。今回の総選挙での国会議員の谷垣支持と地方の意外なほどの河野三世への支持。代議士らは河野家の異端性と「首相になれない」ジンクスに怯え、地方は「谷垣では勝てない」と爆剤的にかなりお父さんとは違ふ路線(ネオリベ)に寄る河野三世に期待を寄せる。自民党でかぎりなく民主党に近い宏池会系のハト派路線の流れにある谷垣君でも、お父様と同じ路線では民主党に近いからとネオリベに寄る太郎君でも、ましてや右すぎる西村君でも、いづれでもとても現時点で政権奪回は無理。化ける可能性あり、は縄文人系の末裔として?大阪の橋下、栃木の喜美と何だかよくわからぬが「奇妙な人たちの聯合」に加担する河野三世なのかしら。橋下知事、喜美二世、河野三世、それに今回はさつさと谷垣陣営に寄つてみせたが小池女史、さらに東国原知事や横浜前市長など/\徒党を組むのを想像すると、まるでゲヽヽの鬼太郎の世界。
▼「保守主義自由主義と対立関係にあるのではない。概してマルクス主義の影響が強かったわが国では、あらゆる変化に反対を唱える頑迷固陋な守旧派達を保守主義者と呼んできた。これは大いなる誤解である。保守主義は真の自由主義の一側面であり、保守主義的な姿勢を欠いた自由主義は軽佻浮薄に流れやすい。ある特定の変化が、より良い状態を実現するという十分な「根拠」が存在する場合のみ、その改革や変化を受け入れる。軽々に制度をいじらない。その「根拠」をめぐる議論を知性の力によって十分尽くす。そこに保守主義的な姿勢の神髄がある」となか/\含蓄あるお言葉は今日の産經新聞「正論」に猪木武徳先生(国際日本文化センター所長)。「自由社会における『保守主義的態度』の重要性は強調してもし過ぎることは無い」と強調する立場は、創刊以来初めて下野の産經新聞の日頃の主張や遠藤浩一先生(拓大)の「自民敗れども保守は滅びず」(「正論」十月号)とは一線を画す真の保守思想だらう。猪木武徳といへば民社党ブレーンでもあつた猪木正道のご子息、と思へば猪木vs元民主党職員のモヒカン遠藤つてプロレスみたいだが(©築地H君)、民主党絡みの因縁対決で保守思想について討論すれば面白いかしら。さういふ、ちよつと際物企劃は「諸君!」ならあり得たけど「正論」で「論座」ならできたが「世界」ではありえない、と思ふと文春「諸君!」や朝日「論座」の休刊が惜しいところ。
▼かつては「噂の真相」誌でも敵として一目置かれた花田紀凱氏が編輯の「Will」誌、編輯長がかつてのカリスマなら書き手は石原慎太郎櫻井よしこ渡部昇一とカルト系大物がづらり。京都大学教授の中西輝政先生が「『悪魔の密約』小沢一郎日本共産党」ご執筆の由(武蔵野D君より)。中西先生の、小沢一郎の党内基盤は旧社会党系、社会党といへば共産党とともにコミンテルンの密命を受けて謀略活動をしてゐた組織といふものすごい三段論法?は民主党社会党共産党。当然のやうに講座派対労農派の対立にはじまる共産党社会党の長い左翼の確執の歴史すら言及なし、否、あるいは一応は知つてはゐても「コミンテルンの陰謀」で実際は仲良しなのに喧嘩したふりをしてるといふことかしら。あまりの奇論に言葉もなし。

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