富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-09-26

九月二十六日(土)午前中10kmほど近所から湾岸を走る。午後に銅鑼湾。寄り合ひあり末席を汚す。寄り合ひ終はつて慌てゝ尖沙咀。今月から来月にかけ“ARCHITECTURE IS ART FESTIVAL 09”なる催事が大々的にあり、今日はその一環で進念•二十面體の「大紫禁城」なる演目。京劇趣味も含まれるが「多媒体音楽演出」なるものが収集つかぬのでは?といふ懸念あり。進念•二十面體の主催だが実際には懐かしい「達明一派」の黄耀明(Anthony Wong)の演出と主演。開幕からかなり遅れて到著し今更五列目の席に闖入も憚られ会場の者が「三階席は閉めてあるんですが宜しければ」と天井桟敷。舞台見下ろすと黄耀明がまるで新宿コマ(笑)。客席見下ろすと客の入りも寂しいものあり。フェリーで中環。FCCに涼まうか、と思つたが歩くと遠いので島西に向かふミニバスに乗れば降りる機会逸したまゝ(アタシは「有落!」と怒鳴るのが苦手)香港大学の近くまで辿り着いてしまひ散歩。Z嬢と粗呆区で落ち合ひHollywood RdのClassifiedへ。此処がかつて華僑日報の新聞社屋があつたのだ、と思ひ出す。南アのMulderboschのSauv Blと豪州のGiant StepのPinot Noirを一杯づゝ。チーズを頬張る。あちこちで野良猫を愛でつCaine Rdにあがり山東餃子が評判の京香餃に食す。これまで二度こゝに来たら休業で三度目の正直。地味で小さな店だが蔡瀾、唯霊と食家の紹介記事多く張り出され、唯霊先生の筆によれば香港で北方料理といへば京香楼だらうが京居餃は唯霊先生が訪れてみれば主人はかつて中環で先生行きつけの京味居の親方の由。なるほど。店内のちよつと鄙びた雰囲気と桃色がゝつた照明が、Z嬢曰く、昔の恵比寿の台湾料理屋みたい、と。慥かに恵比寿がガーデンプレイスなんで出来る前でまだ静かだつた頃に(二十年以上も前だが)山手線を越える通称あめりか橋の袂に「月世界」といふ台湾料理屋あり懐かしく思ひ出す。粗呆区のXTC Geratoに寄り中環に下る。
▼今日の朝日新聞(国際版)に辛亥革命孫文支援した梅屋庄吉の記事あり(外岡秀俊編輯委員「歴史を歩く」)。長崎生まれの梅屋は二十代後半に香港で写真屋を営み孫文と出会ひ、梅屋はその後シンガポールで映画事業に関はり、帰国後は日活の創設に関はり、その間ずつと孫文を支援するが同じ支援者でも宮崎滔天のやうには知られてをらず。香港での明治期の邦人社会史でも梅屋は滞在が短く記録はほとんどないだらう。梅屋の本人の遺言で彼の孫文支援の盟約は家族から口外されず、孫娘が1970年代になつてやうやく研究者に資料公開し始め、その娘(庄吉の曾孫にあたる)である方がこのたび辛亥革命百周年に合はせてか梅屋の評伝を上梓の由。この方の父方の曾祖父は日比谷のレストラン松本楼創業者の小坂梅吉。小坂も孫文のシンパで孫文松本楼を訪れてをり、さういふ関係。山口昌男的な人のつながりの面白さ。梅屋のシンガポールでの映画事業も辿つてゆくとShow brothersや蔡瀾氏への系譜ともなるのかしら。

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