富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-09-20

九月二十日(日)昨日から喉痛あり感冒気味。相変はらず熱の出ぬGastro-enteritisで二週間ぶり。香港では新型インフルエンザの感染が昨日は七百数十名で罹患者は累計で二万人超えてゐる由。アタシは忙しくなつたり体調が狂ふとすぐこれになる。午前中、昨日に続き書房の片づけ。昼に出街。気温は九月下旬だつてのに摂氏三十度超える猛暑だが湿度が少しは収まつたかさすがに汗が滝のやうに流れることはない。Robinson RdからFCCまで写真撮りながら散歩。FCCでこのところお気に入りのジンリッキー二杯。一杯目はGin, Lime and Sodaで通じたが二杯目に奇妙なカクテル供され一口含んでみると、こんな甘つたるい酒はdames et enfants(をんな、こども)ぢやあるまいし何かと思へばアタシの苦手なbarman féminin(をんなバーテンダー)によればジンにライムシロップ加へ炭酸で割つた由。そこに檸檬の輪切りまで添へてくれた。申し訳ないが却下。自宅の酒棚が寂しくなり酒を調達にOliver's食品店に寄れば珍しくHendrick'sのジンあり。胡瓜のマティーニが格別なので欲しいところだが値札みたらHK$670也。他のジンより高いのは日本もきつと四千円弱くらゐだらうが高すぎ。たかだかジンである。尖沙咀。午後三時から香港文化中心で香港フィルの「プロジェクト=ワーグナー」と題した演奏会。年に一度、香港フィルが香港演芸学院の学生オケのメンバー招き合同の演奏会で今年五回目だか。今季の香港フィルの演奏会日程発表になつた際はエド=デ=ワルトはんとPerry So君の二人指揮とあつたが結局、デ=ワルトさんが降りてPerry君だけ。一列目、コンマスの眼下のかぶりつき。三つ隣の席にZ嬢とアタシが「マエストロ」と呼ぶ、香港フィルから維納フィルまで一列目中央で指揮者見上げるクラシック好きの飄々爺さんのお姿。クラシックをこんな前列で聴くのもアタシには珍しいが、当たり前田のクラッカーだがそれぞれの楽器の音がそれぞれの方向から聞こえてくるのが新鮮。幕間にロビーで好事家の知り合ひ数名から「今日はどうしたの、一列目中央なんて?」と冷やかされる。曲は前半がストラヴィンスキーの「火の鳥」で後半がワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。「火の鳥」はちよつとまとまつてゐない感じもしたが「トリスタン」はPerry君が慥か指揮するのに好きな曲と言つてゐたが学生が混じつてゐるオケだと思へばなか/\ので出来映え。Perry君もまだ経験が浅く指揮者としての力がどれほどのものなのか鳥渡わからない。露西亜やカリフォルニアだかでいくつか指揮をしてゐるやうだが、香港フィルで時間を費やすより武者修行でもしてゐた方がよからう、と思ひつゝ彼くらゐの指揮者は今どき世界中に数百人ゐるのだらうし「博士失業」と同じで指揮者のポジションがあるだけでも御の字。できることなら若手指揮者の登竜門たる、たとへば今年は山田和樹なる方が優勝したがBesançonのやうな、それを目指してゆくのかしら。帰宅して晩は肉骨茶を食す。気分は印蘭マレーで金子光晴。この週末、書斎を少し片付け読み忘れてゐた月刊誌など発掘。やうやく『號外』八月号読む。「鐵路慢活」と題して鉄道旅行の特集あり。畏友William鄧達智君が鉄道に纏はる鼎談に出た、と教へてくれてゐたもの。やつぱり鉄道旅行が一番。百罒先生の「阿房列車」や谷譲次「踊る地平線」をぱら/\と捲り少しだけ読む。
▼昭和も終はりに向かはうとする1987年一月の雑誌BRUTUS誌は特集「大陸の未来派」で印象的だつたのかアタシが捨てずにとつてあつたのが郷里の物置にあり先月、帰省の際に香港に持ち帰る。景山民夫が上海を訪れ奇抜な随筆を呈する。北京のマキシム=ド=パリもさういへば当時、話題になつてゐた。返還まで十年の香港の当然、雑誌で「熱く」語られる。上海はまだ目覚めから起きたばかりで錦江飯店の看板料理屋は香港資本が広東料理屋を出して香港のリーガーデンホテル!から引き抜かれた料理長が香港の洗煉された広東料理を供する。もう一冊は同年12月の『an an』誌の保存版「香港は私の街」。赤柱市場や中環のパブMad Dogsがオシャレ。小倉エージ&理都子夫妻の香港深切案内も深切迷惑なくらい貴重。もう二十年以上も前のこと。
▼Tyler Brûléはんが週末のFT紙の連載で彼の好きな航空公司であるJALの経営再建に関して言及。
I suggested that one could always try but part of the reason the service culture is so tight in Japan is that it’s cultural and it would be tricky to get shop assistants to start running to open doors at shops in Brussels or bowing when guests speed away in taxis from hotel forecourts.
With thousands of JAL staff about to get the chop, however, a ready-made battalion of service-minded Japanese are about to enter the global job market.
▼十月一日の国慶節=中共建政六十周年に向けて五十周年の時に勝るとも劣らぬ公共催事やキャンペーン活動目立つのは「和諧」による国家安泰の大切さ。今更ながら「没有共産党、没有新中国!」をば強調するのは(この「もしAがなかつたらBもなかつた」のレトリックが諧謔的だが)毛澤東、鄧小平の昔より中共ぢたひ未来永劫の存続に危機感があるからなのだらう。国慶節当日の胡錦濤国家主席による閲兵も大規模な演習が天安門長安街で夜中に幾晩も続いたが北京飯店からだか取材してゐた共同通信の記者が妨害受けるなど当局もかなり神経尖らせ、もはや世界でも稀なスターリン体制の凄さを見せつける。

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