富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-07-30

七月卅日(木)晴。雲の流れ早く幾度も驟雨あり。昼に冷蔵庫整理でパイなど食べてZ嬢とタクシーで紅磡火車站。15:15開車のT100列車で一路、上海に向け發つ。上海まで1,502kmほど。軟臥でも京滬と香港結ぶ列車(T97〜T100)にだけある「高包」二人用個室。二度目。初めてはもう十年以上前に上海から香港まで。その時の個室は長椅子ソファ寝台が向かひ合はせだつたと記憶するが今回は長椅子ソファの上に二段寝台で向ひに一人掛けソファと洗面所。こりや豪華。日本でいへば北斗星の二人用個室寝台だらう。映画だか看られるモニタや車掌室に繋がる電話まである。個室に電源は二ヶ所、さすがにWi-fiはない。どう考へてもエアパスA380のSQの個室ファーストクラスよか此方のはうが贅沢だらう。沿線の風景を車窓から眺め免税で買つたジャックダニエルを飲んでゐればいゝのだ。新聞や本も思ふ存分讀める。吉田健一ぢやないが十時間でも二十時間でも永遠にこの時が續けばなんて仕合せかしら。唯一の難点は冷凍庫のやうな強烈な冷房。温度はいぢれず風量調節はあるが不能。Z嬢がビニール製のゴミ袋とガムテープ持参はさすが。目張りして冷気口塞ぎ、それでも強烈な冷風に新聞紙を当てゝ事無きを得る。広州東站で三十分ほどの停車時間あり。かつての東莞の常平站のやうに一旦降ろされ荷物抱へ入境と通関させられるのか、と思つたが入境は上海なのださうな。黄昏に食堂車で夕餉。夕焼けが美しい。広州を出て一時間余、日暮れに飛来峡と云ふ名前からして広東の平野から山沿ひに入らうか、といふ辺り、線路沿ひ二十数キロかしら、にわたり人里離れた湖水あり。一條の自動車道がまさにCuasewayで湖水の中を走り夕暮れに柳が映える。暗くなるにつれ車室の電灯消して暗闇に沈む景色愉しむ。連江口鎮地名が辛うじて人民政府のネオンサインで讀める。列車は武水といふ川沿ひに徐々に山中に分け入り広東省北部の大都市詔関を抜け南嶺を越え湖南省に入り半夜三更、長沙の手前の株洲に至る。大きな半月が浮かぶ。

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