富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-06-20

六月二十日(土)台湾から福建省に抜けようとする颱風の影響かしら無風で蒸すばかり。こゝ二、三日の疲れか冷房のせゐか鳥渡、感冒気味。いろいろ机まわり片づけ昼にZ嬢とペニンスラホテルのGaddi's料理店に食す。食前にペニンスラのBrutを一瓶供され「お飲みになりますか?」と給仕に尋ねられたのも二人でなら、お持ち帰りの客の方が多いのだらう。でもその三鞭酒をZ嬢と白アスパラガスの前菜の頃には飲み干してしまひ良い気分。グラスで新西蘭のSelaksのSauv Blを一杯。仔羊のフィレも前菜同様Z嬢と半分づゝ、が極めて美味。ペニンスラのPinot Noirを一杯。でチーズ。いろいろ四方山話して食事してたら早や三時間。蘋果日報社主、黎智英氏の尊顔に拝す。Z嬢と「赤葡萄酒用のクリスタルの酒盃を賈ゐませう」といふ話になりChristofle商店を見るが今一つ。フェリーで中環に渡り無風で暑さ厳しいなかエスカレータ上りオリンピアグレコ珈琲店に珈琲豆購ひ中環に下り今度はBaccarat商店で酒盃を見るが気に入つたのがあつたが今日は見るだけに留まる。もう六時で帰宅。暑さにやられて暗くなるまで一寝入り。起きて揖保の白糸を茹でゝ食す。無風のまゝ晩に至り暑さそのまゝ。今日、中環のHMWで購入のNarciso Yepesのギター演奏は独逸グラムフォンのCDでアランフェス協奏曲とサルバドール=バカリッセのギター小協奏曲イ短調、Odon Alonso指揮、西班牙放送交響楽団の演奏を聴く。アランフェスをアタシが最初に意識して聴いたのは富田勲シンセサイザーによるものだつただらう。で高校の時に同級生の、Charを神様のやうに尊敬している仲の良かつたバンド少年のK君がジャコの加はつたヱザーリポートのLPと一緒に頼んでもゐないのに「聴いてみてよ」と貸してくれたのがこのヰエペスのアランフェスだつた。Charとヰエペスを聴いてしまふK君にとても驚いて彼を敬した。そのCDを突然見かけ、なんだか突然その頃が懐かしくなり購入した次第。
福建省の永定、南靖、華安などに群集、あるいは点在する客家獨有の聚合住宅「土樓」がかつてひつそりと佇んでゐたものがユネスコ世界文化遺産となつた結果がこれ。遺産として保存するはずが寧ろ破壊的情況はご立派。
▼中国がGoogleの中国語サービスに対して海外サイトへの接続不可を要求(FT紙週末版一面トップ)。中国のサーチサイト百度(Baidu、CEOはRobin Li)は楽曲の不法ダウンロードや未認可医療サイトなど整理した結果、当局の求める内容となり一先づ安泰の由。
▼十七日(水)朝日新聞オピ欄への辺見庸氏の寄稿「犬と日常と絞首刑」やうやくゆつくり讀む。死刑といふ制度が日常の当たり前のやうに社会に滲透してゐる日本の態を氏は「天皇制と同様に」一木一草、はては人々の神経細胞にまでぢつによく融けいり……と指摘する。興味深い<死刑と社会>の記述ではあるが、そもそも天皇制を「一木一草に宿る」とすることじたいに近代の誤謬が潜んでゐるはず。明治にならうとする頃から半世紀足らずで日本社会に組み入つたのが天皇制なるもので、そもそも日本「社会にとつて」は天皇制など伝統でもなく近代に氏のいふ「ジャパネスクな文化」になつたものでせう。それに比べ死刑は氏の指摘にもあるのは「地球上のいたるところですでに法以前の自然の掟として存在してゐたらしい」のなら、その死刑を語る時に天皇制を持ち出すのはアタシはちよつと修辞が過ぎる、と思ふ。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/