富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-04-30

四月卅日(木)快晴。日ざしがフォトジェニック。上環にお茶を購ふ。明前龍井は林品珍茶行は未入荷、林奇苑茶行で実家に送る分など入手、で嶤陽茶行で自分好み購ふ。値段もまち/\。昨日、北角の華豐國貨で見た箱入りが某ショッピングセンター内のY記で値段がほゞ倍づけなのには驚いた。バスで北角。銅鑼湾方面から来る北角行きのバスが北角は新光戯院曲がつたところにバス停あり此処が十三座牛雑のちやうど目の前。で、いつも牛雑を一串頬張る至極。なんでこんなに美味いのかしら。帰宅して鯵の開き、山芋などで夕餉。三重県の奈良との山深き県境に近い美杉、なぜ此処が今では津市なのかさつぱりわからないが、その美杉の榧太郎生(かやたらうお)なる菓子をM女史よりいたゞき、それをお茶請けに頬張る。なんとも素樸で香ばしい。疫禍の時こそ、とグスタヴォ=デュダメル指揮のSBYOでベートーヴェンの五番と七番を聴く。
墨西哥感冒への対応で「パンデミック」と「フェーズ」なる外来語表記の中止を麻生首相閣議決定でも出来ないものかしら。「フェーズ5でのパンデミック」は楳図かづおの恐怖漫画での世紀末的な地獄絵図の風景が映る。「このまゝでは新型インフルエンザが世界各地で拡散し大流行する情況であり、その予防と拡散阻止のため厳重な警戒が必要」といふことだけなのに。香港の日本総領事館から出た情報ではフェーズ5について「少なくても二カ国以上の間のヒトからヒトへの感染が発生している情況であり、ほとんどの国は影響を受けていない情況であるもののパンデミックが差し迫っていることを示す強いシグナル」と紹介してゐるのは正しいところ。香港のメディポートなる日系医療関係会社のメール情報を紹介しておかう。例へば「米国で初の死者」も
米国で死者が出たことで事態がさらに深刻になったように一見思えるが、この患者はメキシコで感染して訪米治療を受けていた幼児で、基本的にメキシコのみでしか死者は出ていないとするべきだ。報道も、単に「米国で死者が発生した」とするのではなく、「米国滞在中のメキシコ人幼児死亡」とするべきだ。このような報道の仕方が、社会に対して不安を煽ることになることは、SARSでも学習していたのではないだろうか。
と指摘がある。その通りだらう。で以下、要旨
日本の国立感染症研究所ウイルス第3部長の田代眞人氏が今回のH1N1インフルエンザは弱毒性であると明言。つまり「体力の弱い人は」弱毒性ウイルスであったとしても死亡することもあり今後、メキシコ以外での感染者から死亡者が出ることが不思議でない。メキシコでの初発が3月で実は4月に入る頃にはメキシコ中に感染拡大しており、すでに多くの感染者が米国など国境を越えていたはず。だがメキシコ政府の怠慢か、WHOも関知せず。事実関係が明らかになるまでメキシコ以外の国々では弱毒性ウイルスで症状が軽いゆゑ通常の季節性インフルエンザとして通常の治療で済ませたら……この流行に至っても不思議ではあるまい。
慥かに。墨西哥で新型流感が流行し、嘘でもその対策が始まつてから、では遅すぎ。ふだんのフライトでも数百人の乗客ゐれば一人くらゐインフルエンザ感染の乗客がゐるのでは? その感染者のインフルエンザが新型だつた、としたらふだんから到著便の機内検疫が必要となるだろう。で、一般レベルで勧められるのは「従来のインフルエンザ予防と変わらず」で手洗ひ、うがゐ、休養、栄養であり軽い運動を行ふことで免疫力の維持に努め「この際、禁煙も大切」と。まさにこれしかないだろう。そして
マスコミは絶対に不安を煽ってはいけない。ワイドショー的な情報に一般の人が振り回されてはならない。SARSを経験した日本人も今では香港に少なくなったが、当時、マスコミ報道に本社が振り回されて、過剰な対策を駐在員に求められたため多くの香港駐在日本人がたいへん困惑していたものだ。正しい情報を収集し、冷静に判断して行動することが、今後さらに強く求められるだろう。
と。御意。だいたい病原菌が国境を超えることなんて、国境なんて人為的なもので壁でも何でもないのだから。ジャレド=ダイアモンド博士の『銃・病原菌・鉄』とか読むと面白い。麻生首相は「政府は万全の対策を期し国民の皆さんは精確な情報にもとづき冷静な対応を」と呼びかけるがマスコミが不安煽り何が冷静な対応を、か。かつて安倍&中川両君がNHKから慰安婦問題とりあげた番組の内容につき云々と問題になつたが、政治的介入があるのなら歴史番組より国民の不安煽る疫禍報道番組こそ抑制のため介入すべきか。
▼今晩のNHKのNW9。フェーズ5がどういふものか解説こそあつたが「警戒レベル“フェーズ”」といふ表の表題は「フェーズ」がなんだか「サーズ」のやうに独り歩き。フェーズが「段階」を意味するなら「警戒レベル」で表示は良いのであり「警戒レベル“フェーズ”」は悪ふざけが過ぎる。感染は世界中に広がつてゐるが墨西哥での感染も含め新型のこの流感と確証できた患者の数は感染者数万人に対してわづか9人、といふ墨西哥感冒なのに、視聴者の素人對手に、どうやつてワクチンを作るのか、国民全体に行き渡るだけのワクチンを作るには最低一年から一年半かゝる、とまで不安煽り、30分もこの墨西哥感冒の関連ニュースが続く。番組の最後でも「WHOが歴史上初めての最大限の努力が必要」としたこの事態に、結局のところ対処法としては手洗ひ、うがひに健康管理が大切で「精確な情報に基づき冷静に判断してください」と番組を結んだ。それなら余計な報道するな、と言ひたいところだし「WHOが『歴史上初めての最大限の努力が必要』とした今回の新型インフルエンザ」と紹介したのは「WHO創立以来の……」の明らかな誤謬(笑)。風が吹けば桶屋が儲かる、でマッチポンプ的に不安煽り報道するこの姿勢、こんなおバカな「報道」番組を流していひのかしら。……ちなみに今日のFinancial Times紙は今日は1面からこの墨西哥感冒の報道が消え4面で墨西哥政府当局の対応が新型インフルエンザ発生と治療開始から最低で二週間対応が遅れたことの検証記事なのでした。
▼WHOの事務局長務める陳馮富珍(Margaret Chan)女史。思ひつきり「時の女(ひと)」だが香港政府衛生署で1997年の鳥インフルエンザでは香港内の家禽血祭り全処分で女を上げた?が2003年のSARS疫禍では対応の遅れで責任問はれるなか、その年の夏に香港政府を辞す。がちやつかりWHOの伝染病対策の幹部職員となり、香港でのSARS対処経験評価されあれよあれよといふ間にWHOの事務局長補、で中国の後押しあり事務局長。とんだ棚から牡丹餅、か人間万事塞翁が馬

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富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

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