富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-05-01

五月朔日(金)労働節。Z嬢と、もう五年くらゐか新界西貢の鹽田仔なる島に行つてみよう、と話してはゐたが、いつもその話となるのが復活祭だつたり聖誕祭だつたり耶蘇の祭り絡みの日ばかり。この島、新界東部にある小島の一つだが150年ほど前に天主教の布教で島民が全て天主教に帰依。今から二十年以上前に島民が全て島を離れたが今でも旧村民の末裔らが耶蘇祭祀続け2003年に村の天主教堂を改修し忘れ去れし離島の教会が昨今、地場の天主教徒らの間では香港の聖地の如し。本日快晴で何だか米国西海岸か豪州パース市の如き温暖で風も爽やかな陽気、労働節で明日が佛誕ならさすがに天主教の祭祀もなからうか、とZ嬢と北角からバスで西貢。カメラはライカのM6の他、ContaxのT2にフィルムはヴェルヴィア50で、デジカメは同じくContaxのU4Rと、何とも旧時代的な装備。西貢湾の艀船雇ひ昼ころに鹽田仔。すでに廃村ゆゑ握り飯、さらにアル中のアタシは西貢のコンビニでウオトカの小瓶購ひ鹽田仔に渡つてみれば旧村民の公益組織が小さな売店を営み屋外の洒落たテラスまであり。教会や廃村となつた家々を小一時間見てまはる。島内には二、三十人の観光客あり。浅瀬の向ふには香港唯一の公営ゴルフ場ある滘西洲(Kau Sai Chau)見渡す。もともとは西貢に多い客家の集落の一つ。偶然にも明後日(五月第一日曜)がこの島の教会の祭日で世界中に散らばつた島出身の者が島に戻り祝祭挙行の由。午後二時過ぎに艀船で西貢に戻る。西貢ベーカリーでパン購ふ。林記小食でZ嬢好物の腸粉を頬張る。帰宅して昨晩に続きグスタヴォ=デュダメル指揮のSBYOでCDがなかつたがi Tuneでダウンロードして噂の(つて、もうずいぶん前だが)チャイコフスキーの五番を聴く。予想以上の第四楽章の、煽る、煽る、が見事に合奏になつてゐるから。晩は自宅で韮と大根おろしの鍋で豚肉のしやぶ/\。この鍋だといつも焼酎なのだが今晩は白でSauv Blならきつとこの鍋に合ふだらう、と帰りがけに寄つた近所の旧知の葡萄酒屋のW君のお勧めでCh. de Fieuzalの04年にしたら、実によい組み合はせ。でも韮と大根と豚肉より葡萄酒の方がずつと値が張つた。
▼今晩のNW9もまだ「疑ひ」で墨西哥感冒の報道続く。毎晩/\「迫り来る新型インフルエンザに世界各国は日増しに緊張を高めてゐます」つて、テレビの報道も新聞もあんな大袈裟なのは悪いけど日本だけです。横浜の高校生も災難なら学校も、この高校生の墨西哥感冒の疑ひ晴れた時の校長の感涙……は生徒の無事に、なのか「いつたいこれから世間様にどう釈明」の気苦労が失せての、か。前者、と思ひたいが普通のインフルエンザなら生死にかゝはるやうな心配がないのが日本の普通の感覚で、とにかく全ての心労からの解放での涙かしら。戦前に学校が火事で奉安殿で御真影が無事だつた時も学校長は同じやうに感涙に咽んだもの。小学校で教師が子どもだちに新型インフルエンザの怖さを語り感染例のない日本なのに子どもたちがマスクをして「どうですか?」といふ取材に「とても怖いです」と答へる、それが怖い。Z嬢曰く、このインフルエンザにこんなに大騒ぎするけどデング熱とか、そりや感染は極端に拡散しないから、なのだらうけど、どれだけの被害が出てゐる?、と。慥かに(日本の外務省情報)。メーデーの今日現在、日本の失業率は330万人を越えた由。メーデーの集会の報道とか就労対策とかの方が墨西哥感冒よりよつぽど重要で深刻な問題の気がするがNW九では自転車宅配で企業した青年の話題のみ。完ぺきに脳がウイルスに罹られてしまつてはゐないか。……と思つて呆れてゐたらNW9の番組の最後で「香港で亜細亜で始めての新型ウイルスの感染が発見されました」と。なんだかパチスロで「出た〜つ!」といふ感じ。昨日、上海から空路香港入りの墨西哥人で湾仔のホテルは消毒と泊まり客の検疫のため暫定閉鎖され、この感染者はすでに病院に収容され隔離観察治療中の由。さすが亜細亜の自称国際都市=香港ならでは、だが感染者が「上海経由」といふところがやつぱり21世紀は上海の時代かしら。自称政治家「文革曾」行政長官が早々と香港政府はインフルエンザ警戒を「厳重」から「緊急」引き上げるが現時点ではこの感染拡大がなければ「学校等公共活動は現時点では平常通り。パニックにならないやうに」とコメント。香港政府衞生局局長の周一嶽君が「明日の長州島の太平清醮(饅頭祭り)は現時点では予定通り挙行」と発表が何とも流感より風俗伝統なのがほのぼの。
▼左丁山氏が昨日の蘋果日報連載で天安門事件廿周年で天安門事件が後世に与へた最大のインパクトは何か?と考へ、その答へはジョルダーノの社長が天安門の学生支持のTシヤツ売り義援金募り「李鵬のバカ」と主張したことがキッカケで結果、香港と台湾で『壱週刊』と蘋果日報が発刊されたころだらう、と。

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