富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-04-11

四月十一日(土)昼にかけジムでかなり久々に筋力と有酸素運動を各一時間。鰂魚涌の來記車仔麺に遅めの昼を食す。いつもこの食肆では車仔麺か叻沙食してばかりだが、ふと紫菜四寶粉を注文すると、これもまた美味。夕方、Z嬢と出街。銅鑼湾のヰンザーハウスに仕宏攝影器材(L&H Photollection)なるライカ、ハツセル、リンホフなど扱ふ専門店あり先日はちよつと覗いただけだつたがBillinghamのカメラバッグの肩当て置いてゐたので今日それを購入。天気もよく何より暑くなく散歩しつゝ湾仔。Lockhart Rdの内装専門店いくつか見てまはり独逸のKohler社の洗面ボウルで地味でなか/\良い物見つける。湾仔碼頭からフェリーで尖沙咀。夕陽がきれい。早晩に香港文化中心で映画『青い鳥』観る。阿部寛の演じる吃音の代用教師が一人の生徒が「いぢめ」で自殺未遂図つた直後のクラスに現れ……吃音でしかも内向的なこの教師が実は生徒と同僚の教員にとつてうるさいくらゐ精神的にもつとも饒舌で多弁で……いかにも重松清(原作者)らしい筋、でアタシは苦手。「実はいゝ奴」の不良ぶる生徒を演じた太賀なる若い役者の芝居が実に上手。映画終はつて尖沙咀の日本料理・京笹。香港映画祭の時はかならず一度は食すのがもう何年も続くがイースターなら例年なら日に四本くらい連日映画を観続けるのに今年は本当に食指動く映画少なく京笹にも寄らぬまに映画祭終はつてしまひさうだつた。Ashley街の突当りに新装開店の店。かなりの客の入り、で小さな個室に通される。かなり小ぎれいになつたが、やはり昔の店の隣客と肘がぶつかりさうな狭さ、壁ぢゆうに張りめぐらされたお品書き、など無性に懐かしい。カツとかコロッケとか揚物がとにかく美味。揚げ方なのだ。これでデンキブランでもあれば最高だらう。帰宅して茶を啜る。最近、酒があまり飲みたい、と思はず茶ばかり飲んでゐる。健康には良いのだらうが。
The Economist誌(四月四日号)の特集“Rich”で巻頭の“The rich under attack”が面白い。富裕層は30年前に米国で人口の0.1%の富裕層の所得は下層90%(つまり富裕層10%除く大部分の国民の)所得の20倍であつたものが06年には77倍となり「富裕層がより富む」が実現。勝ち組独占資本主義が出来上がり金融トレーダーは他人のカネで莫大な利益を生み自らの所得を増やし、だが一旦その市場が崩潰すれば公的資金導入で救はれようとする。そして明らかになつたことは銀行家やファンド運用のマネージャーたちが無用であること。この経済誌がこゝまで強い論調で現在の金融システム、この富む者だけが富む資本主義そのものを批難するとは。だがThe Economist誌らしいのは、その富裕層となつた金融専門家らを今、批難の的とするのや簡単だが、敢へて読者に対して“But when you try to bash them, you usually end up punching yourself in the nose”と忠告してみせたところが妙。で小浜君が総統になつてから=ブッシュ退陣してから紐育時報でのコラムが今一つ地味であつたPaul Krugman教授も今日のIHT紙に“Making banking boring”と題して現代資本主義の中で怪獣と化した金融業を本来の「退屈な銀行業」に戻せ、と提言。さうしないと、また景気恢復の先では金融投資業が肥大化し今回の金融海嘯の再現が明らか、と忠告。The Economist紙だとかノーベル経済学賞のKrugman教授のこの言説は日本だとまるで新聞赤旗か「週刊金曜日」の論調だらう。
▼香港の行政長官の給与について。前任の董建華が月給HK$30万、現任の「文革曾」はHK$50で年俸HK$600万。英国首相の年俸がHK$200万程度だと思ふと旧殖民地の行政官が宗主国首相の三倍も不思議、だが、これも英国殖民地統治が遺した制度、と陶傑氏(今日の蘋果日報工資大比拼」)。旧来、殖民地総督の給与が本国の首相より高いのは、殖民地に派遣された公務員は文明から遠かりし南太平洋のバナナ島で未開の島民を統轄し日々、太陽が昇り暮れるのを眺め鴎鳥の啼くを聞き、土民の娘に木陰で団扇を使はせ、かうした生活のHardship Allowanceがそれ。香港返還にあたり基本法で「香港公務員の報酬は殖民地時代の標準を下回らない」こと謳つたがため香港政府の政務司長(政府ナンバー2の唐英年)の給与が米国総統小浜君を上回る、と。ちなみにHardship Allowanceは日本政府(外務省)でも瘴癘地手当といふものあり、驚くなかれ上海や北京も未だに瘴癘の地なのだ。中国政府と人民は、まづ自国を「瘴癘の地」とする日本に抗議すべき。

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