富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-03-30

三月三十日(月)先週の信報の連載で劉健威兄が映画「おくりびと」評す。日本らしい死への観念、その様式美といつたものを評価しつゝ、何かと映画の風景に自然を取り込むのは良いとして、物語の筋で納棺屋の事務員が子どもを捨てゝ逃げてきた、とか銭湯の常連の老人が実は火葬場の職員だつた、とか父との唯一の思ひ出の河原の小石を父が亡くなる時に握つてゐた、とか余りに「戯劇性」を盛り込み過ぎてはいやしないか、と。小津の映画なら老人が河畔で遠くの火葬場から立ち上る白煙を眺め自らの死の近いことを覚悟する、とそれだけで死への畏敬となる。その違ひ、と。御意。ところでこの「納棺」が突然クローズアップされるが、これが「日本の死への畏敬」か。奈良の岡本寺のご住職も葉書説法で、この映画の死への対峙が「在来の死者に対する観念と違ふもの」だが「これが模範品と扱はれていくのでせうか」とおつしやつた。それに僧侶たる方でも「納棺夫といふ職業があること」をご存知なかつた、といふ。それがこの映画の「ヒット」で今後は誰かが亡くなると、これまでの戒名はどのくらゐに、祭壇はどれほど豪華に、に加へ「納棺もきちんとしないと恥づかしい」が大切になるのでせう。「死への畏敬」とは程遠き「他人様にどう思はれるか」への虚栄、と言つたら言ひ過ぎかしら。本日どうにも甘味を食したく、ふだん無性に「酒が飲みたい」はよくあるが、それも善哉や汁粉、豆寒なだまだしも「甘いケーキ」食べたく夕方、FCCのバーで珈琲とチョコレートケーキ註文し給仕に笑はれつゝ頬張る。資生堂パーラーで「三鞭酒をグラスで、それとプリン」と註文できる久が原のT君に早く肖りたいところ。
▼Lafite酒荘中国山東省蓬莱に中信集団と合辧でワイナリー設立の由。(蘋果
▼陶傑氏、HK Magazineでの連載で南沙群島の領土権問題に関してフィリピンは香港に10数万人が女傭(メイド)として働くのが現実であり、
As a nation of servants, you don’t flex your muscles at your master,
from whom you earn most of your bread and butter.
と従僕の身でフィリピンが南沙群島の領土権主張するのは身分不相応と揶揄し舌禍招く(テクスト)。陶傑らしひ過剰な筆致で、この暴論が本意とは到底思へぬが、これは筆の暴走。
▼まづ引用から。
明らかなことはアルカイダ911襲撃を計画しサポートしたその一連の組織はパキスタンと阿富汗斯担領内にゐることだ。アルカイダパキスタン内の自分たちが安全な場所から米国を攻撃する計画を具体的に立てゝゐることは複数の情報機関がすでに関知してゐる。阿富汗斯担政府がタリバーン撲滅に失敗したりアルカイダをそのまゝ放つておけば、同国がそのテロリストたちの本拠地となつてしまふ。米国にとつてのゴールはアルカイダパキスタンにある彼らの基地の撲滅なのだ。
……と勇ましいが、これが馬楽小浜総統のコメント(28日、FT紙)だと思ふとブッシュから総統が替はつたところで米国は何も変らず。レーガンソ連を悪の帝国としてゐた頃から何も変つてゐないのだが。
▼昨年来の金融海嘯で逆境を生き抜くには神に縋るか香港で聖書の売上げが二割半上昇(蘋果

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