富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-02-03

二月三日(火)快晴。早晩にTaikoo PlaceのButterfield's Clubのバーに二氏と麦酒飲み帰宅。春節の前晩には花が開くは九つ、十であつた桃の花が見事に咲ひてゐる。
▼仏元首相ドビルパン氏のインタビュー(朝日)より。仏外相としてイラク戦争の回避に動いた時、正義は通用すると思つてゐましたか。
イラク戦争を巡る私たちの闘ひは、結果がどれであれ遂行しなければならなかつた。もちろん私たちは戦争が起きないことを望んだが、戦争が起きた時、それが国際的なお墨付きを得たものでないことを明確にする目的もあつた。国連が戦争に同意してゐたら、国連の信用は失墜してゐただらう。戦争の責任は米国とごく一部の国にとどまる必要があつた。世界を分断する争ひにしてはならなかつた。
日本はこのごく一部の国の一つかしら。正義そのものに聞こえるがちやんとイラク征伐後の米国の威信失墜を予想しての外交判断がこれ。実際にドビルパン君の仕へたシラク師匠ではなく後任のサルコジ君ではあつたが欧州と地中海の中心国としての確固たる地位。
▼朝日の「大麻汚染―怖さをもつと知らせねば」の社説。角界の力士の大麻所持の逮捕、解雇処分。「体に人一倍気をつけるべきスポーツ選手の大麻汚染は、大麻はたばこより害が少ないなどといふ誤つた認識があるからに違ひない」と言つてみせる。社説は世界保健機関の検証=おそらく1997年の古典的大麻報告“Cannabis: a health perspective and research agenda”の受け売りだらう、大麻の害を紹介するが、このWHOの報告は“Programme on Substance Abuse”の一連の研究の一つ。薬物の「乱用」。朝日新聞
世界保健機関によれば、大麻は脳に影響を与へ、記憶力や学習能力を低下させる。空間がゆがんで感じられ、事故の原因になる恐れもある。無動機症候群と呼ばれる、やる気を失ふ精神障害にもなりかねない。
は実は(以下、邦訳引用はこちらより)「大麻使用の「急性の」健康への影響」の部分にある
大麻は連想のプロセスを含み、認知発達(学習の能力)を損なふ。学習と回想の両方の期間において大麻が使用されたとき、以前に学習した項目の自由な回想はしばしば損なはれる。
大麻は、運動神経、注意の分配、および多くのタイプの作用してゐるタスクなど、さまざまなタスクにおける精神運動性の性能を損なふ。複雑な機械に関する人間の性能は、大麻に含まれるわづか20mgのTHCの喫煙の後、24時間にわたつて損なはれる可能性がある。大麻に酔つて運転する人々の中には自動車事故のリスクが増加する。
と、つまりキメてハイな状態の時、どのやうな状態になつてゐるか、のこと。WHOは一服するとかういふ状態になるんですよ、と事実を書いてゐるだけだが朝日の社説では「大麻をキメてゐる時は」といふ前提が隠されてゐるため、まるで大麻を吸つてゐると(大麻でハイになつてゐない時でも)こんな精神「障害」を来すやうに読めるもの。でWHOの報告はこれに続き大麻使用が「慢性」の健康への影響を教へる。そりやアルコールなども含め精神的にも健康上にも慢性の乱用で害のない薬物などあらうはずがない。朝日の社説は「キメてゐる時」と「慢性乱用」がごちや/\。大麻の是非は此処ではアタシは問はぬが、社説として論説は正確にあるべき。それに比べ大麻力士(「大麻」といふ四股名もありか)を除名とせず「解雇」とした日本相撲協会は「弱腰」と批難されるのだらうが、なにせ力士暴行死事件に関与の親方が「解雇」処分なのだ。この判断の是非は別にして、処分が感情論に拠らぬやうに「量刑判断での判例の尊重」が大切なわけで、その原則論なら大麻で除名は重すぎ。「除名と解雇には、打ち首と切腹の違ひがある。簡単に伝家の宝刀を抜くべきではない」と冷静なコメントした監事は元警視総監なり。

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