富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-01-25

陰暦十二月卅。除夕。午前中、Z嬢と天后。まだお昼前でお腹が空かないといふZ嬢。独り華姐清湯腩に腩河食す。でヴィクトリアパークで歳末の出店冷やかし正月用の桃の花を購ふ。支聯會のブースにまだ朝が早いからか春聯に揮毫される司徒華先生のお姿なし。帰宅していざ桃の花を飾らうとすると岐枝広げてみれば例年以上に大ぶりで、花瓶代りに使つてゐたワインクーラーではとても間に合はず。午後、北角の華豐國貨に高さ一尺二寸ほどの地味な色合ひながらモダンな陶花瓶購ふ。夕方、按摩。陋巷に遊ぶ。帰宅して桃の花を飾り晩に中国産餃子茹でて食す。津和野の竹風軒本店の源氏巻をお茶受けに頬張る。
▼一昨日の信報で願良なる方が「只圖個樂」といふ題で映画「梅蘭芳」を荒謬無稽と評す。映画では梅蘭芳も「平易近人」にされてゐるが、それ以上に周辺の登場人物の(けして醜化はしてをらぬが)矮化が問題、と。例へば梅蘭芳の兄弟子の十三燕は伶界大王と言はれた京劇老生の譚鑫培は中国で制作された初の映画「定軍山」で主人公演じた名優だが映画では梅蘭芳の人気に負けて失意に終はる一役者として描かれ、章子怡が演じた孟小冬も男形の希代の役者だが映画では梅蘭芳との愛に翻弄され表舞台から去つてゆくに過ぎぬ扱ひ。梅蘭芳の舞台演出に尽力の齊如山(映画で邱如白)は映画では梅蘭芳の紐育公演で米国の客たちが芝居の最中にやんやの喝采せぬことに「紐育での京劇は失敗か!」と勘違ひして舞台跳ねての拍手喝采に欣喜雀躍するが、齊如山は若くして欧州に留学し西洋演劇学び中国の演劇近代化に尽くした逸材であつて、西欧の客のマナーを知らぬはずもなし。また梅蘭芳の少年時代を演じた役者が評判で、これは確かにさうだが、映画では梅蘭芳が従来の京劇に対して新派の芝居を舞台に掛け、その美しさに皆が感嘆する場面が印象的。だがこれも梅蘭芳自身が後に新派物は失敗と考へ最後はやはり「穆桂英掛帅」等の古典に尽きたのだから新派の芝居を少年時代の最後の場面にしたのは如何なものか。……以上抜粋。いくら梅蘭芳の子息・梅葆玖氏が監修についたとはいへ、やはり梅蘭芳没後半世紀以上経つての「偉人映画」。この願良なる人は最後に
《梅》片對京劇的定位,大抵就是這一句話──少年梅蘭芳在台上演《牡丹亭》,台下十三燕助手跟邱如白邪氣地笑道:「對吧?比女人更女人吧!」
と、結局、この映画で言えたことは(舞台での)梅蘭芳は女性より女らしい、とその一言に尽きる(それしかない)だらう、と述べる。

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