富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月十二日(土)夜半に猛烈なる雨音に目覚める。ゴーッといふ水の流るゝ音は雨がマンションの壁を伝ひ落ちるが、まるで滝内にでもゐるが如し。寝室のカーテン越しに閃光映り雷鳴止まず。二時間で100mm超える雨量の由。朝イチで散髪。昼まで銅鑼湾某ホテルのロビーカフェで新聞読み。先週末版の新聞読み終へてをらず。雨は歇む。昼に某日本食屋。それなりに名を通すべき食肆にもかかはらず注文の天麩羅定食がサラダ油で下手な揚げ方で驚くばかり。午後打合せ一つ。一旦帰宅。夕方久々にジムで一時間の有酸素運動。早晩に太古MTR站上のT海鮮にて所属するランニングクラブの定例会に寄す。今晩は恒例のホタル狩りのはずが折からの大雨でこれぢや螢の育つまい、と取り消し、でホタル狩り前の簡単な「やつつけ飯」で選んだT海鮮だつたが一応「全餐」となり、やはり普段来なかつたのは正解の味のレベル。昨晩の雨で熟睡に能はず、で睡魔に襲はれる。
▼八日の信報「林行止専欄」に北京五輪実現とマカオの賭場利権とにつき興味深き記述あり。2001年にラスベガスでSandsやThe Venetianなど経営のSheldon Adelson(1933〜)らが北京中南海訪れる。香港のRichard Suenを介し当時の副首相銭其琛と面談。錢副首相がまづ言及は戦時中の中国政府による上海のユダヤ人保護。(厳密には国民党政府による柔軟策だが)同行のSuen氏によれば中共の禁賭政策は党の方針に非ず阿片禁令に関はるものの由。で会見ではラスベガスの全米でも有数の見本市やコンベンションセンターとしての役割について語られ、そのマカオ誘致に話題が及ぶ。で錢副首相が「どの程度の規模のホテル建設に興味が?」と当然、これはカジノの規模の話と結びつき、つまりは中国国内からの賭場客引導が可能である前提のこと。でこのカジノ王と副首相の会談こそ上出来であつた。がSheldon Adelsonらの一行はこの北京滞在中に北京市長とも面会。その席で北京市長が08年の北京五輪開催につき米国で民主派が国会提出の、中国の人権問題に絡む北京五輪開催阻止の議案につき、どうにかならぬものか、と言及。カジノ王は多額の献金をして懇意のT. DeLayなる政治家に電話すると数時間後にはこれを廃案と決定あり。錢副首相にとつては格下の北京市長とのこのやりとりが不愉快。いづれにせよ五輪の北京誘致成功もAdelsonらラスベガス資本のマカオでの開業に大きく絡む、と。
▼Tyler Brûlé氏が先週末のFT紙の連載(The Fast Lane)でロハスに言及。Brûlé氏の一週間はミラノでの秋冬物のメンズのファッションショーをご高覧に始まり水曜晩はミラノに近いLake Comoで一憩のあと翌日には維納に飛び欧州の蹴球準決勝観覧。で金曜日は倫敦に戻りオフィス立ちより、すぐに週末のストックホルムでの会議へと倫敦を飛び立つ。……まさにジェットセッターらしひ飛び回りだが週末の瑞典での会議はなんとロハスビジネスについてのもの(笑)。全然、地球に優しくねーだろうがつ。ロハスの正体がこれかしら。
仏蘭西の在香港総領事が山頂の公邸に新鴻基地産で主席職を弟二人に解任された郭炳湘を招き仏政府の最高栄誉騎士団勲章を授与。この長男解任を認め名誉職的に主席となつた郭三兄弟の実母がこの勲章授与に参列。長男とのツーショットは騒動後初。この授与式には香港政治の元老・鐘士元、風見鶏・李鵬飛、故Y.K Pao財閥のマス夫さん・呉光正、ダウジョーンズ株インサイダー取引の李“Baby”國寶、オリンピック命の霍震霆夫妻、マカオカジノ王「だつた」何鴻燊、珠江に橋架かける胡應湘など香港財界の要人づらりと出席。仏政府も健か。それにしても新鴻基のこの三兄弟のシェークスピア的騒動、黒澤明で活劇にしたら面白からう。

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