富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-06-30

六月卅日(月)雨もひどいが涼しい日続き今朝も気温は摂氏25度なのだが地面と建物が雨で地温が上がらないからか寝てゐてもずつと冷房もつけず夏物のパジャマでタオルケット掛けてゐてちやうどいいくらゐ。午後に天后を通りかかり華姐清湯腩で好物の牛腩河粉を食さうとしたが間違つて肥腩で供される。脂身も上質だと甘みが格別。早晩にFCCのラウンジでドライマティーニと豪州のBimbadgen Estate産のBimbadgen Ridge、Shiraz Cab Sau Merlotつて「かなり」の05年はアタシにはちよつと甘すぎ、を一杯。ここ数年、中環の繁華街に異様な物乞ひ女性あり。スーパーの買物袋を幾重にも丸めて造つた異様な頭巾?で顔を覆ひ路上に寝ころんで、の物乞ひ。余りの異様さに誰も物怖ぢして近づかず。冬場になると毛布だのかけて路上に寝込んだやうな姿。安部公房のやうな世界。交差点の信号待ちで腰の位置から携帯で咄嗟に一枚撮らせていただく。Z嬢とExchange Squareの「札幌」にらーめん食す。香港の家賃高の話となり、Z嬢曰く、いい材料やサービスにコストがかかるのなら客にもメリットあるが地代ぢや全く客に還元なし、が馬鹿馬鹿しい、と。確かにね。それにしても雲呑麺ならHK$15感覚の香港の食客が日本のラーメンとなるとHK$60を費やすのが、ちよつと不思議。といひつつアタシも時々かうして香港の1,000円ラーメンを食べてゐるのだが。先週末から頻繁に市大会堂。今晩は本来はTruls Mørkはんによるチェロソナタ三昧で(ピアノはKathryn Stottによる)べートーヴェンOp.5ヘ長調ショパンOp.65ト短調、ドビッシーイ短調ブラームスOp.99ヘ長調で「これは面白さう」と期待したがMørk先生が怪我だかで欧州でも全ての公演取り消し。でColin Carrといふ英国のチェロ奏者が代演。バッハの無伴奏から第3番ハ長調、パルティータ第2番ニ短調、で中入後は無伴奏の第6番。3番はサラバンドも良かつたがブーレがジャーマンダンスらしさで殊更良く、本来ヴァイオリン曲であるパルティータのシャコンヌを聴いて今晩のこの代演で稀な機会に遭遇と感激す。アンコールで無伴奏第5番のサラバンドは崇高。Karr氏も香港の観衆相手に気が乗つたやうでピアッティの(たぶん)無伴奏チェロのための奇想曲からの一曲。これが絶妙。良い演奏会となる。
藤原新也氏の語る秋葉原事件(朝日30日衛星版Opinion欄)
情を分かち合う人とのつながりは社会に出てからもあるわけだが、終身雇用、年功序列という日本型の企業形態がアメリカ型の成果主義に変わり、正社員でさえ就労環境が非常に冷たいものになってきている。同じくそのアメリカが日本に企業進出る際に、若者の労働を「資源」と見なし、圧力をかけ、派遣社員制度の端緒をつくったわけだ。人をモノのように扱う戦前の「人買い」のような制度がのうのうとこの民主主義の時代に闊歩してゐる不思議を、僕は何年も前から言及してきた。(略)若者の犠牲と不幸の上に立って国内総生産を維持する国というのは一体何か。アメリカモデルからの脱却という根本的な指針を、行政にあずかる者はそろそろ持つべき時代に来ている。
……と尤もらしい事が述べられてゐるが日本の社会問題を米国の所為にするのは短絡的すぎぬか。成果主義は別にアメリカ型ぢやないし、そもそも日本の戦後の民主主義「らしきもの」じたい米国のご提供。アメリカモデルから脱却していつたい何があるのかしら。終身雇用と年功序列なら問題が解決つてなワケぢやない。日本といふ国じたいに「国のかたち」がないこと=革命を興してまでの建国を経験をしてをらぬゆゑの理念の欠如じたいが問題なのだが。
▼中国貴州で少女強姦の犯人釈放に数万人が抗議。中国の管制報道は何でもさうだが「……に不満をもつ人の一部が真相のわからない大衆を煽動し少数の不法分子が……」といふもの。これに倣へば中国の共産主義革命とて「中国の旧来の体制に不満をもつ人の一部が真相のわからない大衆を煽動し少数の不法分子が共産主義革命運動を起こし」となつてしまふはずだが。
▼マレーシアで政治活動再開のアンワル元副首相、23歳の男性秘書にアンワル氏による通姦を警察に通報されアンワル氏はこれを10年前と同じ政治的陰謀として鶏姦罪容疑での拘留、禁固処分を避けるためKL市内のトルコ大使館に庇護求める。何処まで策略なのかアンワル氏の何処が脇が甘いのか不明だが築地のH君(この日剰に久々に登場)曰く同じイスラム圏でも世俗的なトルコ大使館に逃げ込んだのが興味深く、これがイラン大使館なら「同性愛者がイランに助け求めるはずねぇだろうがつ!」で終はつてしまふ、と。御意。
▼左丁山氏が蘋果日報の連載でホテル業界の知人の話として六月下旬からの北京のホテルの空室率高し、と。反テロ対策でのヴィザ供給制限などマイナス要因あり旅行者の間で寧ろ五輪を避ける空気あり北京五輪で濡手に粟のはずの北京のホテル業界は早くも料金値下げで客足確保も始まつた、と。期望愈高、失望愈大。

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