富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-06-28

六月廿八日(土)夜明けより早朝は晴れ間も見えたが朝七時頃より大雨。午後まで驟雨あり。昼過ぎ久々に湾仔の再興焼臘飯店に叉焼飯を食す。土曜昼ならそれほど混んでをらぬかと思ひ赴けば確かに満席だが行列までにならず直ぐに坐す。この食肆の焼臘はタレは自分の好みでかけるのところが佳い。アタシのやうな淡味好みには叉焼など蜜汁だけで十分。米飯がびちや/\するほどタレがかかつて供されると興醒め。千客満来に客あしらひの上手さは敬服。早晩にFCCのラウンジ。名前失念の赤葡萄酒を二杯。週末のFT紙や金曜に届いたThe Economistをぱら/\捲りつつ土曜掲載のは決まつて難度高き「すどく」で遊ぶのが土曜の愉しみ。Z嬢来て軽く夕食。アイリッシュシチュー。市大会堂。香港フィルの演奏会で今晩の目玉は五嶋みどりさんでブラームスのヴァイオリン協奏曲イ長調の演奏。指揮は(江戸出悪人さんはもう夏休みか)90年代に香港フィルの音楽監督務めたDavid Atherton氏。ストラヴィンスキーのLes cinq doigts(五本の指で)を室内楽に編曲したもの、と1919年版の火の鳥。DA氏にしてみれば自らが育てた90年代の香港フィルとはすつかり楽団員も入れ替はり全く異なるオケだらうが、この人は楽団のレベルの範囲でそつなく曲を仕上げられる人、と見た。「火の鳥」は四月末に国立ロワール管弦楽団の演奏を聴いてゐるが、この香港フィルといふ楽団はどうもオルガニズムが足りぬ。曲の抑揚など。昨年の薔薇の騎士の演奏はさすがに歌劇で香港フィルの演奏としてはかなり楽しめたもの。この楽団にとつてはアンサンブルとしてのモーツァルトの楽曲と、そして歌劇はいい訓練になるはず。だがオペラ指揮では定評のワルトさんだが今年9月からの新シーズンも香港フィルはワーグナーの指輪はヴァルキューレ1幕のみ。数日前の信報で古典音楽評論の劉偉霖氏曰く、ワルト氏はこのヴァルキューレのためにハープ6基の布陣で臨む。歌劇曲の演奏会の場合はフルオーケストラに出来るところが面白みで朝比奈隆は64弦にハープ6基で指輪を演奏してみせたが、香港フィルは昨年の薔薇の騎士でもリヒャルト=シュトラウス指定の64弦のところ50弦が精一杯だつたもの。でワルトさんにとつてフルサイズで全曲演奏は香港フィルでは未だ実現はせず。閑話休題。で中入後に苾多里(Midori)登場でブラームスのこの協奏曲。ブラームスとはアタシにとつては「聴いたあとに口遊めない」のがブラームスたる「らしさ」だがブラームスの中でも殊に折り重なる主題や展開など立派だが「曲として苦手」なのがこれ。みどりさんの演奏はそりや第一楽章のカデンツァなど惚れ/\。第二楽章の半ばオーボエ協奏曲?も香港フィルのオーボエ奏者は上手。みどりさんのヴァイオリンは心底お見事なのだがアタシは曲が苦手なせゐか、どうも聞き終つたあとの感動に欠ける。アジアの演奏家は如何せん「鶴の恩返し」のよう、とZ嬢。御意。帰宅してMacBook Airに(それまで使用のMacBook G4よりの乗り換へで移行不良の)egbridgeをインストール。MacOS Xで「ことへり」の日本語環境がかなり整つたとしてエルゴソフト社も独自の日本語入力システムegbridgeの販売を中止したが「ことへり」は変換能力も低く蘊蓄多き文体には対応しきれず。再インストール済ますと幸ひなことに(登録単語辞書は当然として)数年間馴染ませてきた日本語変換の学習機能の記憶まできちんと移行されてをり全く支障なく以前と同じ感覚で日本語入力可とはあらためてegbridgeの賢さとMacとの相性の良さに感心するばかり。販売中止のこのegbridgeは後世までかなり大切。
▼ちなみに香港フィルは年間予算HK$110Mで、そのうち実際の入場料収入は昨期はHK$24M。58Mを香港政府が援助し28Mを企業寄付に頼り大口のスポンサーは12M援助するSwire集団。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/