富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-05-20

五月廿日。未明に目覚めれば昨晩が十五夜、今日が満月のはずが大雨。月を愛でるくらゐしか人生に楽しきことなき老生に月の出ぬ雨は空し。昼に食事兼ねた講演会あり。拝聴するが朝四時起きぢや昼の睡魔との戦ひは険し。粗呆區に今月開業のSundaram Tagore Gallery訪れる。千住博君の作品も数点あり。紐育と加州ビヴァリーが丘で大好評のこの画廊はその名の通り印度の文人ラビンドラナート=タゴールの末裔たるSundaram氏によるもの、香港政府の中でも「最も不要千萬」「百害あつて一利なし」な香港投資推廣署がSundaram氏に香港の芸術文化向上のためにと三顧の礼尽くし香港で開業。先日の信報にてSundaram氏曰く「伝統がけして全て良いわけでもなく、反面、現代化にも欠点がないわけでもなし。伝統はすでに静止したものに非ず伝統もまた時間に従ひ様態を変へる。ゆゑに個人の思惟もまた伝統と現代に対峙していかなければ」と。御意。だが信報のこの記事で書き手(陳耀紅)曰く、文化は社会の多くの人々の整体表現の累積(の結果)であり、もし多くの人にその新しい世界に対峙する準備も経験もなければ、ただ口先で文化向上と云ふばかりで那就是堰苗助長、這個面目模糊的渾沌還是無從開竅(こんなのなんの打開策にもならねぇよ)と。御意。HK Arts CentreにRoland Fisherの展示見ようと寄ると館長のA君と昇降機で遭遇。先週のART HK 08で草間彌生さんの今年の作品を看た話するとA君多忙にて“just money, money, money”の即売展示会には足を踏み入れてをらず、と。芸術品は公衆にあるべき、が信念のA君らしさ。HK Aarts 08といへば今朝のSCMP紙に盛況=多売、と記事あり。昨年サザビー競売にて中国モダンアート最高値(??290万ドル)で話題となりし「泣き笑ひ」画家・岳敏君(Yue Mingjun)の作品が韓国の画廊から持ち込まれ150万ドルで売れた由。現物見たが「あれがHK$150万」と驚いたらUS$150万……ただ呆れるばかり。
台湾総統馬英九君就任。東京都知事石原君赴台祝賀の由。退任の阿扁総統、英九新総統の就任祝賀大会には当然?欠席。家族ぐるみの公費横領での追訴に怯える日々の始まりは本日午後から街頭にて空き缶やペットボトルの資源ゴミ回収ボランティア活動に従事。ふとクスリや男娼監禁の軽犯罪で社会服務令に服し街頭清掃中の英国芸人ボーイ=ジョージ君彷彿。英九新総統は台北での就任祝賀済まし新幹線の普通席に乗車し一路高雄へ。祝賀宴を高雄で開催は民進党基盤の南部重視の狙ひ。地下鉄で高雄市街の漢来大酒店。漢来は高雄では高級ホテルとはいへ宴会予算は1人五千円程度で感覚的には首相就任パーティを品川のホテルパシフィツク東京で開催のやうなもの。庶民派、南部重視といふ姿勢の見せ方が電通のやうな広告代理店の演出といふいふより地方都市の商店街の泉町振興会的な発想が……いや、だからこそ庶民的か。総統官邸も総統「寓所」と改名の由。寓所と云ふには立派過ぎる日本の台湾総督官邸の建物よ。ところで台北での英九君就任祝賀大会に李登輝君、当初「開催時間が早すぎ」で欠席の意向が突然の(予定通り?)出席で国民党にとつては李登輝君は「党史に残る千古罪人」の元・主席ながら元総統として英九君、副総統に次ぎ首列第三席に座す。さすが。ちなみに李登輝君総統辞任の1996年の後任選挙で李登輝君の阿扁後援により敗北の連戦氏夫人は李登輝君の前を通る際に会釈で済まし未だ怨念顕わ。
▼台湾政府は今回の四川大震災にNT$20億(66億年)義援金として拠出。そのほか民間で6億人民元。退任の阿扁総統はこの義援を「国際的」義務と称し、それに抗するかの如く中国政府は海外各国からの支援金リストにこれを含めず。ちなみに1999年の台湾地震の際に中国は(あらためて小額だと思ふが)US$10万拠出し海外からの義援金や物資の台湾への支援に対して各国に対して「須く中国赤十字を通すこと」とクレームし台湾の反中感高めた由(蘋果日報で李怡氏による)。

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