富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-03-25

三月廿五日(火)早晩に帰宅しドライマティーニ飲む。何年も何年もドライマティーニ飲み続けて今日ふと気づいたのが「いかに容易にオリーブを瓶から取るか」について。オシャレなバーでは瓶のオリーブ粒をトングで挟み、それを楊枝に刺すなどするが、自宅では面倒。で瓶に楊枝など入れてオリーブを突かう、とするが、これが瓶を開けた頃はいいが、だんだんオリーブが少なくなるにつれオリーブが瓶内の汁に浮いて泳ぎ逃げるので、なかなか刺せない。これも修業か、と思ひコツをつかむべく、いつも稽古してゐたが、ふと気づけば瓶の汁を捨てれば(サラダなどに使へるので捨てるのが勿体ないから別の瓶に出せば)いい。なんでこんな簡単なことに気づかなかつたのか。晩は湯豆腐。そろそろもう湯豆腐も終はりの季節。食後、ゴミ捨てようとすると昨晩の葡萄酒の瓶、マティーニで空いたタンカレーのジンの瓶、それに湯豆腐に合はせた菊正宗の一升瓶も空。偶然、三本が空いたのが一緒になつただけなのだが、ごみ捨てに出せば見るからにアル中だらう。十数年前に住んでゐたマンションで、ゴミ掃除の婆さんに「アンタ、酒が好きだらう」と、おそらく拾ひ物のウイスキーと葡萄酒を数本もらつたことあり。非常口横のダストシュートにゴミを出すとタンカレーの瓶にほんの少しジンが残つてゐたので勿体ないから飲む。と、そこに隣家の家政婦がゴミ出しに。見られてしまひ照れ笑ひ。かなり久々にNHKのNW9看れば、冒頭「新潟で信じられない事故が」と大型重機搭載のトレーラーが交差点で転送しバスに重機が突つ込み、と。いつたい何人の被害者が?と驚いたのは「更に被害が広がつた」……といふナレーションだつたが、実は「更に被害が広がつた……かもしれない事故」で被害者は軽傷一人が病院で手当て。キャスターもキャスターで「重機を運ぶ人は運転に注意してもらひたいですねつ!」と。「ベタなコメントするなよ」とプロデューサーは舌打ち、かしら。ここ数日読んでゐた、きだみのる著『氣違ひ部落周遊紀行』読了。若い頃から一度、ぜひ読んでみたい、と思ふにアタシの読書遍歴では、少なからず、この著者に縁あり(後述参照)。この本はネット検索で吾妻書房の昭和23年の初版本入手。「気違ひ部落」といふと、それだけでダブル放送禁止で一瞬、退いてしまひさうだが戦中から戦後の疎開先での集落での生活の社会観察記。敢へて「気違ひ」としてしまふところがこの著者らしいが、内容はいたつて素晴らしいフォークロア。珠玉の名言の数々。終戦は当時、社会が変はる大きな出来事だ、といふ読者の期待に背き?、戦中はあつさりと「終戦になると共に」で過ぎてしまつたり。人間のエゴや協調性、を見抜き戦後の胡散臭さを早々と安吾とはまた違ふ斜めから見透かす。批評の原点を読んだ感あり。
▼幼い頃から読んだ本の中でいくつか印象的な書物をあげると、例へばファーブルの『昆虫記』。で学生の頃に仙台の古書店で入手した「大陸を駈ける夢」だかいふ戦前の大陸紀行文学の名作選に『モロッコ紀行』なる短編あり。いたく美的。そして、ふと全く関係のない読書の最中、その『モロッコ紀行』の作者に『道徳を歪む者』なる耽美的な若い頃回憶の手記があることを知り、神田の古書店などもかなり探したが見当たらず。今のやうにネットで容易に検索できる時代でもなし。で、文化人類学など多少齧つた頃にレヴィ=ブルュル『未開社会の思惟』、マルセル=モース『交換に関する試論』などもテキストとして読んでゐる。数年前に「きだみのる」の『氣違ひ部落周遊紀行』を読みたいとネットの古書店で検索してゐて、実は気にも止めてゐなかつたファーブル『昆虫記』やレヴィ=ブルュル、モースの譯者が、そして山田吉彦といふ『モロッコ紀行』や『道徳を歪む者』の著者が、この『気違ひ』の著者・きだみのる、と知つた時の驚き!
石原銀行破綻寸前での都の追加出資を都議会が可決する動き。朝日新聞は社説で「与党は知事の言ひなりか」と都議会の与党・自公に「熟慮を」と求めるが、結局、300万票で東京都知事石原(新銀行東京だの首都大学東京だの、といつたトンマな言ひ回しに従へば石原都知事東京都知事石原だらう)を支持し自公に安定多数与へた都民に最終的な自己責任あるはず。竹篦返しが新銀行への公金支援程度で収まつただけファッショよか、まだマシか。

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