富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-03-24

三月廿四日(月)耶蘇復活祭。香港に97年まで3年居住で現在、横浜在住S夫妻の夫人Aさん会社の社員旅行で来港。Z嬢と早朝に金鐘のアイランドシャングリラホテルでAさんに再会。中環の陸羽茶室で早茶。久々の陸羽茶室。アタシももうすつかり老いたので陸羽の給仕(ギャル叔)にも慇懃丁重に扱はれ老ふま格別、と感じ入る。天気の良い休日で午後、Z嬢とふと「大角咀に行きませう」とお出かけ。九龍の昔は沿岸、東京で言へば昔の大井か鮫洲の風情。鍛冶屋、工事関係の鉄資材商など並ぶメタルタウン、が地下鉄東涌線の開通で奥運(オリムピック)站出来て站周辺に近代的なビル立ち並びHSBCの事務センターなど工場街のすぐ傍に出来たおかげで昔ながらの鉄工街に突然ホワイトカラーが侵略。で工場の職工相手の安い飯屋が突然、B級グルメ、なんて雑誌に紹介されたり。さういふアタシもそんな記事眺め「さういや大角咀なんて行つたこともない」と気づいた次第。で太子からお散歩。ところで「太子」の英語名(地名)はPrince Edwardなんだが、もしウェセックス伯爵エドワード王子(エリザベス女王の三男)が、旺角に続く、この場末の下町を見たら、どう想ふのかしら。で、まづは炭火焼肉で馳名の永合隆で叉焼飯。美味至極。Z嬢を街路の名前にも上品さ感じるSycamore街(詩歌舞街)界隈に案内。50〜60年代の都市開発。Willow St(柳樹街)を背にMaple St(楓樹街)に企つと、この街路を中心とした線対称で少しづつ意匠の異なるモダニズムの六、七階建ての建物がファサードを形成するのが美しい。都市開発で新界の天水圍の社会問題など注目される昨今、ふと半世紀前のこの九龍のモダニズムの都市計画に回想が馳せる。大角咀道の高架道潜り大角咀に入ると釣具屋あり。沿岸は1km以上先の貨物ターミナル、悠長に釣りも出来ず。復活祭の日がな鉄工街は競馬中継に浸る人々とあちこちから麻雀の喧騒。予想通り春三月の陽光が古いビル街に面白い影を映す。ビルの谷間、光と影と隠れん坊するやうに路地を歩く。東涌線の奥運站。毎年、香港マラソンのときに通るWest Kowloon HighwayでZ嬢がこの奥運站の架線橋の上で応援。その架線橋に初めて立つ。応援も大変だ。東涌線の一つ上つて九龍站。昨年ここにElements(圓方)なる「高級」商業施設出来。全く興味もないが早晩に映画看るので来た次第。時間潰しでぶらぶら。早晩に尖沙咀で別な映画看るZ嬢去る。商業施設としてつまらないが此処からの尖沙咀と港島の眺めは格別。晴天の夕方で殊にMetro Bookなる書店からの眺望映える。Taschen出版社の写真集“20th Century Photography”購ふ。この施設内の映画館でタイ映画“The love of Siam”看る。「シャムの愛」つて「ビルマの竪琴」ぢやないんだから。バンコク舞台に小学校での同級生の少年二人が十代になりお互ひに恋心抱き、といつた耽美派、所謂「やをひ」で、家庭崩壊だの絡ませ多少、当世バンコク事情。興味深いのは「豊かさ」。裕次郎や若大将の映画を看て60年代当時の日本が豊かだつたとは誰も思はぬわけで、この映画の情景も理想化された世界とは思ひつつ、豊か。この映画と表裏一体で貧困に身を窶し廓に身を売らざるを得ぬ少年少女でも一葉かゾラ的に描く作品を、このChookiat Sakveerakulといふ監督なら撮れる、と思ふ。ところでこの監督、舞台挨拶で上映前に監督から一言、と求められ「この映画は(153分と)とても長い映画ですから、上映前に今のうちにおトイレに行つてください」と宣つた。白眉。帰宅して昨晩の残りの葡萄酒飲む。
MTRの香港站に「不幸の柱」あり。アタシがさう勝手に呼んでゐるだけだが。10年前に香港新空港開港に合はせエアポートエクスプレスと東涌線の開業の宣伝。でこのコンコースの柱の最初の宣伝は当然、エアポートエクスプレス。列車には各座席に液晶画面が設けられ車内ではAirport Express Ambassador(機場快線大使……ダサい名前)がサービス、と宣伝したが一年経つたか経たぬか、で機場快線大使は(無用だから)お払ひ箱となり各座席の液晶画面も数年前に取り外し。で香港ディズニーランド開園もこの柱周辺でたいさうな宣伝されたが事後ご周知の通り閑古鳥。で昴平360のランタオ島のケーブルカーも実物大のケーブルカー模型まで展示して宣伝してゐたが「不幸の柱」の祟りか、事故あり半年だか運航停止。で今回は北京五輪のカウントダウン電光掲示板。「不幸の柱」の祟りのありませんように。北京五輪といへば最近の香港のマイナーなロードレース、とにかく全てが北京五輪開催記念の冠。良心の呵責で地味なロードレースにすらアタシは出場できず。

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