富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-03-22

三月廿二日。今日は映画四本。映画祭で朝から三更まで六本看た頃に比べれば映画祭中たつた一日の日に四本は苦にもならず。曇空が昼に尖沙咀の地下鉄站出ると本降りの雨。Z嬢と台湾の李康生の『幫幫我愛神』看る。蔡明亮がプロデュースの李康生の監督第二作。蔡明亮と李康生の映画は至今全作看過。台北個人投資家の青年(李康生)は破綻し怠惰な生活のなか大麻栽培。青年の住むマンション(すでに裁判所が押へてゐるが)から路上に出れば檳榔売りの少女たち。破綻した青年と檳榔売りの少女、自殺防止熱線の職員の女と、その女職員の豪華マンションに同居するゲイのカップル……。相変はらず絶望的な都会の人間模様。李康生が舞台挨拶で「誰か知り合ひの興行主がゐたら、この映画上映するやうに推してくれ」とコメントして笑つてゐたが李康生の映画を看たい香港の観衆は全てが今日のこの上映を看てしまつた感あり、の文化中心大劇院。大麻の烟の中のエロス、はLove & Peaceなのだが絶望的なのが21世紀かしら。会場の外は大雨。続けて映画『ガチボーイ』看る。北海道の私大のプロレス研究会舞台に記憶障害のある学生主人公に勇気・希望・友情をお笑ひのオブラートに包んで、と日本映画。スターフェリーで港島に渡り三本目は早晩から『めがね』看る。『かもめ食堂』の荻上直子監督で小林聡美終演。日本人の求める「癒し」「憩ひ」「黄昏」に香港の観衆も同感か、で満席。荻上さんの流暢な英語での舞台挨拶あり。Z嬢と別れ独り尖沙咀に戻り『圍城』看る。香港で十数年前に開発された新界の天水圍は最近ではすつかり社会問題で注目浴びるのは高島平や千里の団地で自殺者相次いだのと一緒か。今回の映画祭にはこの劉國昌の作品のほか許鞍華も同じ天水圍舞台にした作品あり。十代の少年少女の非行、暴力、麻薬……と盛り沢山。香港映画で感心するのは映画製作にあたり「旺角あたりでふらふらしてゐる」少年少女がカメラの前でかなり迫真の演技見せる事。この映画に出演の7名の少年と一人の少女が監督と一緒に舞台挨拶に立つたが「そのへんの」ガキを見事に演技させるのは劉國昌の上手。これで芸能事務所に飼はれヘンな勘違ひスター芸人にされませんように。台湾と香港の映画が未来なき真つ暗な現実で、日本映画が「癒し」系なのが印象的な一日。むしろ日本の方が絶望的なのかしら。やはり今日もどの上映もエンドロールは最後の最後まで場内の照明が灯らず。開幕上映の猛省か。
台湾総統選。国民党馬英九君当選的確にせよ民進党が台南、高雄両市落とし大票田の台南県でも辛勝で110万票差と読まれてゐた敗北は200万票の大差。台湾の蘋果日報社説(23日)曰く、今回の総統選挙では浅緑(黄緑=青(国民党)にも緑(民進党)にもなる中間層)が国民党支持した結果だが、この浅緑は国民党が一旦かつてのやうな一党独裁、金権体質の腐敗となれば直ぐに反発するわけで政権交代も容易、と。台湾独特の国民党対かつての「党外」の経緯あるとはいへ投票率が8割の立派な二大政党制はアジアでは特筆すべきもの。

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