富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-01-23

一月廿三日(水)米国が金利引き下げ。米国FRB長官よりずつと高給な香港金融管理局総裁(年収1.2億円は日銀総裁福井君の4倍)任志剛の「米金利引き下げを安定剤として歓迎しつつ金融諸問題の根本的解決にはならぬ」といふ見解に対してマカオのカジノ王・何鴻燊(Stanley Ho)様は(陶傑氏が聞いて苦笑か)恒生指数は今後23〜24千で徘徊するであらうが旧正月迎へる頃には30,000ポイント、と相変はらずハッピー。で香港市場も何鴻燊の期待に応へるかのやうに前二日の下落に反発し2,332.54ポイント(10.72%)上昇。ちなみに董建華君の東方国際はHK$40.65也、まだまだ。アタシは胃腸風邪の気配あり帰宅途中に近隣のC医師の診断請ふ。案の定、胃腸風邪。C医師のくれる薬はいつもアタシに合ひ、帰宅して服薬し養生すると晩遅くにはだいぶ回復。岡田暁生『オペラの運命』読了。ショルティ&シカゴ響でマーラーの4〜6番を聴く。晩は北角街市で売つてゐるKadoorie農場系の地鶏で親子丼。樫村愛子ネオリベラリズム精神分析光文社新書少し読む。本といへばC医師の診療所からの帰途、商務印書館に寄り陳夢因著『食經』全5巻購入。『食經』は星島日報で1950年代に連載された、香港でも飲食を記事とする魁となつた連載。著者の陳夢因氏(1911〜1997)は星島日報の元編集長。飲食関係の記事で今もよく引用される古典でアタシも「食經」の名は聞いてこそゐたが数十年絶版を商務印書館がこのたび5冊にまとめて復刻。
岡田暁生『オペラの運命』中公新書。同著『西洋音楽史』のはうが圧倒的に読み応へあり、だが、オペラ音痴のアタシにもこの本は面白い。
オペラの基本的性格が規定されたのはバロック時代である。バロック時代の宮廷文化にルーツをもつ幾つかの文化的前提を知らずして、オペラになじむことは難しい。もし読者の周囲にどうにもオペラと相性の悪い人がいるとしよう。おそらくその人は、オペラというよりまず、オペラが前提としている文化史的な諸条件と体質があわないのだろう。それはつまり華美(それも桁外れの)を肯定する体質である。この派手好みの気質の点でオペラは、同じ「クラシック音楽」でありながら、交響曲に代表される近代の演奏会音楽(器楽音楽)の対極にある。
といふ指摘に納得し、独逸留学時代に三度の飯より歌劇、の経験もつ著者ですら
いまだに記憶に残っているのは、どういうわけか、「作品」でも「歌手」でも「演出」でも「指揮者」でもない。クライバーもシノポリもムーティドミンゴも皆聴いたのだが、十年という歳月にふさわしく、これらの思い出は既におぼろげになり始めている。だが今でも鮮明に記憶に焼きついているいくつかの光景がある。それはオペラ劇場の周囲の街並であり、劇場の建物や内装であり、観客の立振る舞いであり、それらが渾然一体となって作る「場の雰囲気」である。
といふのだから鳥渡、安心。
テレビマンユニオンの村木良彦氏。萩元晴彦はすでに亡く、今野勉さんだけが設立者でご存命だが今野氏がドラマ出身であることを考へるとドキュメンタリーではやはり村木氏。当時の報道のTBS、日本テレビですら読売テレビの「ドキュメンタリーにつぽん」などなど、今のただ面白可笑しく馬鹿馬鹿しいテレビに比べ当時はシリアスな番組がいかに多かつたことか。

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