富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-12-24

十二月廿四日(月)朝、久々に裏山に入れば樹木の満開の花の地面に花弁落ちるさまから未明にそれなりの雨があつたことを知る。小一時間走る。夕方、ミッドレベルをRobinson RdからHollywood Rdに下る。坂の古い街並みも再開発であとどれくらゐ残るのかしら。FCCに憩ひバーボンソーダ三杯。中上健次の熊野集から「葺き籠り」読む。交情の場面の描写などさすが中上健次と唸らされる。Stanely街の鐘沛撮影材材行(Chung Pui Photo Supplies)にてカメラ、レンズの防湿庫(40ℓサイズ)購入。アタシの部屋はけして多湿ぢやないが、さすがに最近、カメラやレンズに黴でも生えたら、と心配も多少。父の遺品となつたニコンF2やニコマートELも防湿庫できちんと保管されたまま主を失ひ、それを高温多湿のこの香港でなら「なほさら」と。黴の除去の費用など考へれば防湿庫など安いかも。買つてからクリスマスイヴの人ごみにどうやつて帰るか、と恐ろしくなる。絶対にタクシー拾ひさうな客のゐないQueen Victoria街の路地でちやうどタクシー来合はせ帰宅。尖沙咀や蘭桂坊など繁華街に聖誕祭祝ふ者溢れんばかり、勘違ひの異教徒多し、畏れて在宅に徹す。二更に年末に帰国のN君夫妻が残つた酒や食材など届けてくれ、外に出ると見事な十六夜。近くのキリスト教会信者らが路上にて賛美歌唄ひ高らかな恍惚の歓声。これがモスクの集会所から礼拝の時刻を告げる「アザーン」が流れてきたり真言の聲明でも聞こえてきたら「薄気味悪い」と嫌がられるのかしら。健次「熊野集」続けて読む。
▼在港のジャーナリストでもないし随筆家でもない、敢へて「物書き」と呼ばせていただくがKevin Sinclair氏逝去。享年65歳。SCMP紙の往年の編集者でフリーになつてからも同紙に週一だかで随筆掲載。読み親しむ。酒焼けの赤ら顔、新界を愛した老香港の英国人。つい先週、氏の新刊“Tell Me a Story: Forty Years of Newspapering in Hong Kong and China”上梓のパーティがFCCで開催されたのが水曜日。自称政治家“文革曽”もシンクレア氏のファンでパーティで新刊に署名もらふ姿など新聞に出てゐたが肥満体のシンクレア氏がすつかり痩せ細る。一見して癌の病魔。それでも見た目は精悍な二枚目に映るのがさすが。会場では坐つたまま、だつたさうで、この本が氏の遺作となることは本人や家族、親しい方にはわかりきつたことで敢へて、の新作発表とお別れのパーティだつたのだらうか。その十日目に逝去。

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