富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-12-16

十二月十六日(日)朝の九時過ぎに新界のKadoorie農場。第13回嘉道理兄弟記念レースにZ嬢と参加。Z嬢が参加する年に一度のレースがこれ。昨年ご一緒したOさんは三ヶ月後に香港島の80kmの耐久レースで倒れ心臓発作で亡くなり、昨年のこのレースでの健脚ぶりとゴールしてからの笑顔が蘇る。今年のアタシは5.3kmといつても標高160mから602mまでを51分だかでのぼる。高低差はキロあたり83.4mなのだ。冗談ぢやない。頂上での和やかな表彰式。今年は高齢のカドーリー夫人のお姿見えず。農場の売店でミントの鉢植えと鶏卵半打購ふ。バスで元朗。紐育カフェ&グリルに参れば日曜日の営業は午後1時から。ほんの15分ほど待つてお昼。ハウスワインが智利のCab Sauのワイン産地で有名なマイポーのVina Maipoといふテーブルワインなのが可笑しい。なにせ元朗といへばラムサール条約で認定された米埔(マイポー)が地元なのだから。この洒落た気分が気にいつて昼から二人で一本。アタシはテンダーロインのステーキ(6oz)でZ嬢は煮た羊肉。スープにメインディッシュ、アイスクリームに珈琲がついて「もう少し儲けてよ」な格安ぶり。ご主人に(鄧達智君の随筆でご主人の素性までこちらは存じてゐるが)そりや昼からワイン一本空ければ他に酒など飲む客もゐないので酔狂と思はれたか話しかけられ、住まひが香港島と知つて遠路遥々と感心される。恒香餅家で老婆餅を買ひ食ひ、大橋街市近くの肉饅屋でも立ち食ひ。天后行きのバスに乗り、当然のやうに満腹感と酔ひで心地よく昼寝。目覚めれば香港島。ジムに寄りサウナに一浴し帰宅。今日の収穫のミントでハバナクラブを飲みながら靴磨き。晩は軽めに揖保白糸を食す。が先週、長野のTさんにいただいた八幡屋礒五郎のBird Eyeといふ一味を、たかだか一味でアタシらはタイの辛さにだつて慣れてゐる、と思つて蕎麦汁にちよつと入れたら、まぁ辛いの、なんの、つて。でも風味格別。今日の鶏卵の、出汁もたつぷりの厚焼き卵もとても美味。テレビで香港電台製作の「傑出華人系列」で「李嘉誠」を観る。鄧達智君の随筆で紹介され、この香港電台でも歴史に残るシリーズがもう10年も前だつた、と驚く(今回のはその焼き直し)。1938年に故郷の潮州で日本軍の空襲に遭ひ、香港に逃げ13歳から実業に身を置いた李嘉誠の、十代、二十代のその写真のまぁ聡明さうな御姿よ。NHKスペシャルで Working Poor の特集番組。ちらりと観る。「ワーキングプアーをどうやつたら扶けられるのか?」つて、答へは簡単。革命。でも貧困者を扶けようと思つてゐる人も革命なんて懲り懲りだし、貧困層も革命を起す気力もないのが21世紀。結局はお題目で終はるのかしら。ところで今日の蘋果日報の陶傑氏の「黄金冒険號」の随筆(こちら)には恐れ入つた。「老實話=結局のところは、ね」と題して、地球温暖化における中国の影響から話を始め、英国のThe Observer紙が“China's development cannot mean an uninhabitable planet”と宣ひ“Democracy and western capitalism have a better chance of saving us than the Chinese Communist party”などと指摘したのを英国人の理性ぢや解決できない問題、と嗤ひ、共産党一党独裁の終焉、で民主主義と西洋型の民主主義になつても中国の経済発展と消費は続き北極の氷の溶けるのが早まるだけ、と。地球温暖化と中国の経済発展の問題は中国の民主化の問題でもなければ、まさか中国の存在すら否定できず中国人を火星に送るわけにもいかず、結局は独裁だらうが民主主義だらうが環境汚染は続くわけで、「もう遅過ぎた」で世界は終末を待つばかり、と。

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