富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-12-02

十二月二日(日)寺で毎年恒例の年に一度の大法會あり檀家の一人として朝夜明け前に起きて社務所で昼過ぎまで当番。午後ジムでかなり久々に筋力運動と湯酸素運動各一時間。夕方に紅磡の波止場の売店で北角行きのフェリー待ちながら魚蛋と焼売を肴に缶ビール二缶。地下鉄站の出口で「左派鐵票排山倒海 陳太勢危」と題した蘋果日報号外が配られてゐる。有権者に投票と陳方安生候補支持求めるもの。朝から親中派土共らの葉劉候補への組織票はかなりのものの由。立法会港島区補欠選挙で投票。家に帰る途中、先日の区議会選挙でまさかの落選の保守系前職が街頭で葉劉淑儀候補のビラ配り。選挙では無党派を売りにしてゐたが隠れ民建聯か……所詮こんなもの。敢へてビラ受け取り拒否。陋宅に至るまで三度、葉劉候補のビラ配りの遭遇。なんて組織力。先日まで葉劉候補、投票日直前や当日の非常事態宣言はせぬ、と宣つてゐたが最終的にコピー用紙に印刷のビラには「急求」の二文字。どうやら陳方安生候補が有利なのかしら。晩十時半に投票終了。その直後、香港大学世論調査センター(鍾庭耀主任)がアタシも出口調査され応じたが「陳方安生勝算較高」と発表。葉劉候補は選挙投票日当日の最後を「勿論、民主制と民生の改善を推進してゆく。何よりもまづ大切なのは社会の和睦であり選挙民の支持を願ふ」と締めくつてゐたが、昼間はまだ“Democracy is not monopolized.”などと叫んでをり、「ヒトラーも民主的な選挙で選出された」とまで言つた人に民主主義うんぬんは言つていただきたくないと思ふ。陳方安生候補は開票前に早くも香港大学の選挙結果予測受けて「市民の支持に感謝。民主主義は私一人が推進するものでなく各人の支持が要る」と彼女らしいコメント。今朝の蘋果日報で陶傑氏が本日の選挙について述べた「立法會補選以獨立思考投下公民一票就夠了」の文章が出色。世界に完璧な候補者などをらず、選挙民はGoodか或いはBadでなくBadかWorseで「多少マシ」な候補を選べばいひ、と。ヒッチコックの映画『サイコ』に“Money cannot buy happiness, but money can buy off unhappiness”といふ名文句があるが選挙も最良の候補者は選べずとも、ひどい方の候補者を避けることはできるわけで、1982年の中英合意から四半世紀、いろいろあつたし香港の政客のレベルは低いが、香港の公民意識は高まり成熟してゐるのだから今日の選挙は自分の判断力で投票しませう、と。御意。アタシは葉劉淑儀といふ人がけして悪人だとまでは思へず、逆に最後の最後まで陳方安生といふ人がどこまで善人かかなり疑つたが、結局、葉劉淑儀が当選することは本人より民建聯だの土共のおバカな連中が驕ると思ふと、その手助けは出来ず。ルペンと争つた時のシラクぢやないが陳方安生のはうがマシ、と結論。まぁいづれにせよ葉劉淑儀は次回の立法会の本選挙に再び立候補し、その時は保守系の立法会議長の引退で、その後釜で楽勝か。むしろ泛民主派のはうが香港島のリベラルな票田を勢ひづく公民党に加へ陳方安生の参画で喰ひ合ひ、民主党議席減がかなり濃厚。結果的に香港の政局にそれほど大きな影響もない、といふのがアタシの見方。ただ葉劉淑儀が将来の行政長官候補と噂されてゐたこと考へれば、今回の初戦敗退はかなりの痛手。あれだけの組織的応援と票の集約で、いくら相手もヘビー級であつたとはいへ「負けた」のは事実。北京中央もそのへんを厳しく評す、かどうか。ただ美濃部には負けたが、の石原慎太郎のやうな例もあり。それにしても民建聯の故・馬力の逝去がこんなスーパーヘビー級戦を実現させたのだから政治は面白いし、葉劉淑儀の立候補でそんぢよそこらの候補ぢや勝てぬ、と泛民主派協調で陳方安生担ぎ出しに成功したあたり、日本でも野党は見習ふべき。

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