富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-12-01

十二月朔日(土)朝九時に太古城のTom Lee楽器店。一月下旬の香港フィルで李雲迪がラフマニノフの3番とプロコフィエフのピアノ協奏曲の2番をやるのでユンディ=リは未だ生で聴いたことなので、ちやうど後者は彼が小澤征爾&伯林で演じたCDも聴いてゐたし、合はせるのが小澤&伯林と江戸出&香港だとどう違ふものなのかも興味ありチケット買はうとTom Leeの開店前に並ぶ。開店一時間前で七、八人の客の行列あり。本日が来春の香港藝術節の切符、カウンター売り出し開始にぶつかる。一時間並ぶのは新聞や本を読んでゐればいいので難儀せぬが十時の開店で切符発売始まつても芸術祭の切符買ふ方は一人であれもこれもでなかなか列が進まず三十分後にアタシも無事切符入手。早晩に尖沙咀。Z嬢との待ち合はせまで燈刻、多少時間あり独逸麦酒のWeinstubeに憩ひワルシュタイナー二杯飲む。さすが独逸人、冷房などつけず窓全開で涼風心地よし。アタシがつい癖で扇子使ふと、バーテンダーが “Ist es heiß?” と冷房つけようとするが “Es ist nicht heiß. Dieses ist meine Gewohnheit” なり。独逸の佳さは便所の乾浄さは当然として麦酒もグラスに300mlときちんと目盛りあるのはご愛嬌として価格がそれ。お勘定請へば二杯でHK$60也。一杯HK$30で而も300mlであるから10mlがHK$10と正確な、これもご愛嬌だが、更にHK$60の勘定に100ドル札出せば香港の地場の酒場ならチマチマと小銭揃へて祝儀乞うところ20ドル札二枚きちんと返し祝儀など期待せぬ心意気。見事。この独逸酒場、ふと気づいたがWeinstubeなら葡萄酒が主か。麦酒飲む客ばかり。向ひのGaylord印度料理店。Mc Dowell'sといふ印度産ウイスキー飲み原田治『ぼくの美術帖』の続き読む。Z嬢来て晩餐。この印度料理店、香港では香港島のアショカと並び印度料理では香港の老舗。店は大幅に内装替へしたやうだが、某飲食資本に買収されたやう。香港文化中心。李嘉齢(Colleen Lee)のピアノリサイタル。ユンディ=リが2000年のショパンコンクール第1位金賞なら李嘉齢はお香港生まれで香港の演藝學院でEleanor Wong女史に師事し05年の同コンクールで第6位入賞。個人的にはあまり好きな洋琴家でないがショパン夜想曲作品27、ブラームスがクララ=シューマンに贈つたといはれるピアノ独奏曲作品118の6曲、スクリャービンの幻想曲ロ短調作品28にシューマンの幻想曲作品17、と選挙区にやる気感じ今晩の観賞に相成る。が会場に至れば保育園の如く幼児多し。エリーゼのためにだのトルコ行進曲だの乙女の祈りだの演目並ぶリサイタルならまだしも前述の「とてもガキにはつらからう」曲が並ぶのだ。何かの間違ひか、と思つたが、よくよく見るとチケットに「満3歳以下は入場お断り」とあり。通常のコンサートは6歳以下。敢へて3歳にしたのは、どうやら今晩のリサイタルが柏斯琴行(Parsons Music)がスポンサーで舞台上のピアノも柏斯琴行が代理店のFazioliなのだが、柏斯琴行が直営のピアノ教室で生徒を今晩のリサイタルに招待してゐるのかしら(動員で)。いづれにせよ四、五歳が今晩に演目に飽きないはずもなく場内はガサガサと落ち着かず、お子様たちはまだしも子どもと勝るとも劣らず落ち着きのない馬鹿な親たちに閉口。李嘉齢もブラームスの何曲か、またスクリャービンなど強く奏でる曲は彼女の持ち味もあらうが、全体的にまだまだ二つ目の域。

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