富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-11-11

十一月十一日(日)快晴。朝日の読書欄「たいせつな本」で作家の桜庭一樹氏が紹介するのが『アブサン』。著者は水島新司、では「ない」。バタイユ。でもどうしても「あぶさん」と聞くと水島新司の野球漫画で、あの南海ホークスの「あぶさん」の印象が強い。朝八時半に?湾。?湾となると自宅出で丁度一時間。香港ではかなり距離感あり。花袋『東京の三十年』読みつつ。九月よりMacLehose Trailを供に歩きたるランニングクラブの面々七名と集ふ。一昨日の朝始まりしTrailwalker2007の100km踏破も本日午後二時が48時間のタイムリミットで大詰め。我々は昨年に続き、MacLehose Trailのコース清掃活動に従事。参加者のうちW会のA氏は一昨日より昨朝まで21時間で100km踏破しての今日の清掃への参加。敬服。二班に分かれ余の一班は予定通り大帽山へ。もう一班は城門ダムより針山、草山へ。タクシーで大帽山に向へばチェックポイント8はすでに撤収済み。強者ども跡形もなし。路上に点在のペットボトルだのパワージェルなど拾ひつつ大帽山の頂上。日差し強し。三時間半でLead Mine Passに到着。針山〜草山チームもすでに到着してをり合計で大きなゴミ袋に5袋のゴミ収集。Trailwalkerに参加の約千組にはどうしてもゴミ捨てて歩くバカ者をり。参加者にバカもゐるが主催者(Oxfam HK)も時間競ふこと煽る部分もなきにしもあらず。水筒持参でペットボトル飲料持込み禁止くらひの措置とるべきでは? 昼すぎ城門ダムを下りミニバスで?湾に戻りいつもの山西刀削麺に食しビール飲む。ジムの風呂に寄り帰宅。Oxfam HKに本日のレポート送付済ます。本日は12月の香港国際カップの予選レースあり(沙田、芝2000m)。Stanely Ho氏のViva Pataca(爆冷、Beadman騎手、Moore厩)が一番人気。アタシはPacking Winner(包裝大師、Whyte騎手、何良厩)に期待し、この単複。この二頭軸に脚に三頭選び六通りの三連単したらこの二頭はVP、PWの一、二着で順当でArt Trader(詩情畫意、鄭雨?騎手、Moore厩)が健闘で三着。これが単勝69倍だつたかで三連単はHK$60→HK$1,629とまぁまぁの高配当。山の掃除などしてお釈迦様のご庇護か。晩に湯豆腐。花袋『東京の三十年』読了。花袋が独歩のまさに武蔵野の家を訪れた日の話(丘の上の家)、それに
日光行はまことに行はるべきや、霧深く水多きの彼地にありて心靜かにこの春をくらし、君と共にわが燃ゆる心を筆に上すを得んには如何に幸なるべき。
で始まる独歩の花袋に宛てた手紙が殊更に佳し。井上直幸『ピアノ奏法』(春秋社)読む。井上直幸氏はアタシが中学一年生の頃にNHK教育テレビの「ピアノのおけいこ」で指導中。それまでの指導者やそれ以降に指導者とは明らかに住む世界の違ふ井上先生のドビッシーとかの曲だつたかしら「妙にヘンチクリンな」指導法と不安定でもきれいな旋律に、もう「いい加減にしてくれ」と疲労困憊でクタクタな中学校生活から戻つて、井上先生に心身癒されたアタクシ。懐かしいかぎり。
朝日新聞の地方広告に深?の世紀皇廷酒店(Royal Century Hotel、深?市龍崗区布吉)が「日本人専用フロアを完備」の由。嗚呼、嫌だ。
山口二郎・北大教授と姜尚中・東大教授が小沢一郎の「ぷつつん」と自民・民社の「大連立」に蹌踉めく日本の政治を語る(朝日新聞)。自民党支配に警鐘鳴らしてきた政治学碩学の二人。それにしてもお二人とも恰好良い政治学者のはずが今日の朝日の写真はお二人とも一言でいへば「映画『バットマン』の悪役」のやうに相に異形なるものあり。で山口教授曰く「政権交代起こすには民主党中道左派路線を展開して勝負をかけるといふ原点が小沢さんには常にあると思つてゐた」のは築地のH君もアタシも同じ。それが「政権交代めざすといふのはインチキ」で「自分が政権に入れば、政権交代しなくていいのかといふ話になつてしまつた」。で大連立などあれば参院選での民主党への一票が自民党への投票となることは「ある種の詐欺」であり選挙の洗礼受けず=民主的正当性がない=日本の運命を左右する大きな意思決定をする資格のない福田政権との連立は突つぱねるべきものであるのは当然(姜)。結局、小沢一郎は「政党政治の基本がわかつてゐない」のであり「国難とか国家の危機といふ全体のシンボルをふりかざして、それぞれの党の自己主張を抑へて一緒にやらうといふ、偽りの空虚な全体」に民主党が吸ひ寄せられたもの(山口)。小沢一郎のもとで総選挙を戦はうとしても、党内は疑心暗鬼だらうし、プッツンした人が次の首相候補と言はれても国民は困る(山口)。結局、自民党からも民主党からも日本を具体的にどうする、といふ統治能力のわかる発信がない(姜)。政府与党を批判して追ひつめると国政が停滞するリスクがあるが、そのリスクを敢へてかぶり「おれがやつたら良くなるぞ」といふ開き直りが野党には必要(山口)。政権担当能力など権力を握つて与党になれば生まれるもの=ステータスが人間をつくるやうなもの、と(姜)。……それにしてもどうにもならず。この対談での名言は何といつても山口教授の「大連立を仲介したとされる中曽根元首相や讀売新聞の渡辺恒雄さんが国難をうんぬんすることが国難だ」(笑)。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/