富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-10-23

十月廿三日(火)北京にて Les d?l?gu?s au 17?me Congr?s du Parti communiste chinois 閉幕。第17期中央委員会第1回全体会議(1中全会)開催。Coquinteau総書記筆頭にComit? permanent du Bureau politique du Comit? central du Parti communiste chinois(中国共産党中央委員会政治局常務委員)の9名が雛壇に並ぶ。よく見ると顔の表情も違うのだが、どうも「おそ松くん」的。ネクタイから背広まで同じにしなくても……。中国の最高意思決定機関といわれる、この中共中央政治局常務委員会は1928年7月の第6期1中全会で設立され(当時は中央書記処)創設メンバーには周恩来先生あり。その後、李立三、瞿秋白といった革命黎明期の懐かしい名があり、劉少奇先生が選出され(1931年)、で1935年の中央政治局拡大会議(遵義会議)で毛沢東がメンバーとなり全権掌握……うーん、大時代的。今回の顔ぶれが「おそ松くん」的なのは、例えば第8期1中全会(1956年9月)などの印象があるからで、この時は毛沢東(中央主席)筆頭に劉少奇周恩来、朱?、陳雲、林彪に?小平……と多少中国現代史に詳しければ「大看板揃い踏み」で「待ってました〜っ!」と声かけたくなる名優が揃う。その後も劉少奇の失脚、林彪の死亡などドラマがあり、文革を経て、今の中国が1977年7月の第10期3中全会で?小平復活から始まったのは多言を要すまい。当時からのこの政治局常務委員のメンツを一瞥すれば、華国鋒葉剣英、陳雲、胡耀邦趙紫陽李先念李鵬、喬石、胡啓立、李瑞環、朱鎔基、胡錦濤……と、もちろんアトになってメジャーになった人が多いから、なのだが、それでも政治局常務委員となるとズラリと「知った顔」が並ぶもの。それが今回は世代交代もあろうが胡錦涛国家主席)、呉邦国全人代)、温家宝(首相)以外、香港で中国政治をそれなりに報道で見ているアタシですら「あの役者、誰だっけ?」の「大部屋から名代昇進」クラスにしか見えないのだから。だから「おそ松くん」。
▼演舞場の中村屋の奮闘公演。ふだん歌舞伎にはちょっと甘いブラック師匠が山田洋次演出の「文七元結」を「一幕目の長兵衛は限りなく落語に近く好感がもてたが、大川端からがいけない。作り過ぎ、リアリティのカケラもない。」とバッサリ(こちら)。
いつも中村屋の芝居を見た後は才能の違いに打ちのめされるが、今回初めて余裕で見下すことが出来た。「文七」の長兵衛はあっしの方がはるかに巧い。中村屋より巧いということは日本一といっていいかもしれない。
とブラック師匠。いいねぇ。いくら文七のブザマをお久に「お前さん、なんで見ず知らずの他人に五十両もあげたんだい」「うーん、あれが俺の人生一番の博奕だったかもしれない」と言わせたところで師匠にしてみりゃ「博奕で地獄を見ていない人間が作る机上の空論」。この文七元結で芸術祭大賞狙う、と師匠。その心意気。夜の部の森光子との芝居。波乃久里子がアタシは見たい。で師匠が名優、と褒めるのは米倉斉加年。そりゃ確かに。師匠は帰宅して考える、どうして今日の文七元結がつまらないか、と。筋書きで中村屋山田洋次の対談読んだ師匠曰く「が二人共に長兵衛をどうしようもない困った奴ではあるが愛すべき存在で、こういう奴を排除する社会はギスギスして面白くないという。要するに長兵衛を見下しているのだ」。寅さん論にも通じるところありかも。師匠なら、この演出を森崎東監督!に頼もうか、と言う。卓見。そして師匠は言い放つ。
いや、森崎監督に頼むまでもない。あっしの長兵衛はあっし自身なのだから。長兵衛を否定するということは自己否定になって、生きていけなくなっちゃうから、命懸けで長兵衛を演じなければならないのだ。
と。いいねぇ、この見栄。これぞ見栄。そして山田洋次中村屋の悪口になってしまったが、としつつ
「困った奴だが同じ社会にいてもいい」という思想は、「困った奴は排除してしまえ、もう顔も見たくない」という大作家先生と、その尻馬に乗った家元よりはずっとマシであることは言うまでもない。
と一言添える。なんという素晴らしさ。ただただ敬服。
森崎東監督といえば最新作の「ニワトリはハダシだ」で元気なところ見せたがアタシは何といっても山田洋次の「男はつらいよ」で森崎東が監督した第三作「フーテンの寅さん」が好き。寅がまだヒールな役柄でおいちゃんは森川信。マドンナが新珠三千代香山美子もいい。でワキを固めるのが花沢徳衛左卜全に悠木千帆(樹木希林)。温泉宿の女将(新珠三千代)に惚れた寅次郎が番頭面で旅館で働く姿の滑稽さといったら、その後の「男はつらいよ」では見ることのできない渥美清の喜劇役者の真骨頂、という見事さなり。

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