富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-10-16

十月十六日(火)早晩に帰宅しボンベイサファイアのジン二杯。ボンベイサファイア初めて飲みたるは廿代に今はなき千鳥ケ淵のフヱアモントホテルの酒場であつたとふと彷彿。晩飯の時に、かなり久々にNHKのNW9眺める。相変わらずNHK報道局の知性疑う、ただ不安煽る「番組づくり」に大いに疑問あり。「相次ぐ暴力団の拳銃発砲事件、白昼、繁華街に多くの人が」と使ひ古されたフレーズ。東京京橋の電器店の火災も近隣のオフィスビルはまるでタワーリングインフェルノの如し(京橋のオフィス街に木造二階建ての電器店が現存したことのほうがニュース性あり)。中共の党大会も二世エリートの昇格というネタで「太子党」取り上げ「太子とは中国語でプリンスのこと」と。太子は聖徳太子の古えから秋山祐徳太子の今日まで「太子は日本語」であり「太子は皇子のこと」だろう。昨晩より原武史『滝山コミューン1974』読み始める。原武史の「執拗な」記述面白い。些末までの語りっぷりは平成の大西巨人かも。
▼北京にてLes d?l?gu?s au 17?me Congr?s du Parti Communiste Chinois開催。嗚呼、偉大なる中国共産党。記念すべき第17回全国代表大会。全国各地から無産階級、農民、衣裳華やかな少数民族の代表などが北京に集結。第一線退いて久しい「天安門の」李鵬、「台湾の亜扁政権生みの親」朱鎔基、萬里先生など懐かしい顔ぶれ。更にチベット仏教の代表として「中共ご指名の」パンチェン=ラマであるギェンツェン=ノルブ君も参加。確か1989年生まれで18歳くらいのはずだが成年?、未成年?と思ったが全人代ぢゃない。あくまで党大会であるから未成年であっても党員ならいいのかしら。それにしても全人代ならまだしも一党独裁国家とはいへ中共の党大会にパンチェン=ラマ出席させるとは阿漕。今大会開幕で胡錦涛総書記の演説は「科学発展観」と汚職腐敗撲滅が二大柱。科学発展観とは何か。マルクスレーニン思想、毛沢東思想、?小平の改革開放、趙紫陽の中国の特色ある社会主義くらいまでの教条は実践でもあり「まだわかりやすい」が江澤民の「3つの代表」になるとピンと来ぬし今回の胡錦涛の「科学的発展観」となると漠然とした教条主義としか、一瞬、見えぬ。がこのお題目の教条主義の無味乾燥な言葉の文(あや)から核心を掴み出す作業こそ中国共産党を理解する唯一の方法であることは「竹のカーテン」の時代から今日まで何ら変わらず。そういう読みこなしの一つが例えば「シナオチ」の分析(こちら)。今回の「科学的発展観」は、この30年の改革開放政策での格差や不公平、不平等といった負の部分の尻拭いであり「根絶とまではいかないものの、せめてできるだけ改善しよう、そうしないと中共政権は潰れかねない、といった胡錦涛の危機感」が今回の科学発展観に表れている、とする。興味深い味方。それにしてもこの党大会が始まり、山中の津々浦々までオートバイに拡声器積んだ広報隊が党のプロパガンダの宣伝に走るとは……ほんと凄すぎな世界。ついていけぬ。
▼今朝の朝日新聞。連載「新聞と戦争」で戦時中に「今ひとつパッとせぬ」芥川賞のテコ入れに菊池寛が大陸に出征中の陸軍伍長玉井勝則への芥川賞授与を考えつき小林秀雄杭州に遣り駐屯地にて玉井伍長=火野葦平に授賞の話あり。「麦と兵隊」からの火野の大人気は知る通り。陣中より朝日と毎日に新聞連載送る話。
▼本日まで香港にてエレクトロニクス関連の展示会あり。湾仔のコンベンションセンターでブース数は四千六百個の由。例年この季節ハイシーズンながら今年は殊にホテル宿泊費高騰。昨晩奈良のT君の話では尖沙咀のRamada HotelですらHK$1,680+税サといふ。東京ならさしずめ帝国ホテルも宿泊可。
▼行政長官「自称政治家」Sir Donald君の「民主の極端は文革を招く」発言。北京中央もこの発言にかなり不愉快の由。在港の中央政府機関「中聯?」の副主任李剛君も昨日「何も言うことはない」としつつ「不但是香港官員,作為一個中國人,對民族的發展及?史都要有所認識,都要有所了解」と苦言(こちら)。Sir Donald君は明日より休暇四日。今回の文革失言とは関係なく事前から予定の日本旅行らしいが「失言ほとぼり冷めるまで」と映らなくもなし。

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