富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-09-27

九月廿七日(木)バンコクのY兄に十月の香港での「アイーダ」の公演のチケット予約請われURBTIXのサイト覗くと(アイーダは5日間6公演すでに完売)北角の新光戯院がついにネットでチケット販売開始の由(こちら)。驚愕。観客の平均年齢、ゆうに七旬は超えている世界、誰が入場券をネット予約するか疑問(笑)。いずれにせよアタシには便利至極。これまではいちいち劇場窓口で購入だったのだから。さっそく十月の上海青年京昆劇団の「牡丹亭」の席を確保。楽しみ。本日見事な快晴で夕陽もまことに燦々。晩に薮用あり夕餉を簡単に済まそうと天后の華姐清湯?に牛?河食す。初めて華姐の尊顔を拝す。濁声で店の中で陽気に捲し立て振る舞う姿に中上健次の物語にあるオリュウノオバは実在したらこんな感じか、とふと思う。この近くの上海弄堂の婆サンもおなじような雰囲気あり。ところで「薮用」なる語彙。最初はたんに「野暮用」の打ち間違い。ただ「野暮」というには、ウソでも自分で何らかの意志なり意図もってする事を「野暮」というのも謙譲表現としてもちょっと野暮、で何らかの事柄、だが具体的に綴るを厭い、さしずめ「某事」だろうが、「薮」は文字通り「薮」で「薮入り」という言葉があるが薮に入っちまえば秘匿の感じもあり、すっかり薮用という言葉頻繁に用る。今日、ふと、ちょっと不愉快なことがあり、それでムシャクシャした結果、宮澤賢治のような人になりたい、と思った。Z嬢に「賢治のようないい人に」と、その話をすると、果たして賢治はいい人だったかどうか、賢治に纏る斎藤秀雄のエピソード(『嬉遊曲、鳴りやまず』に出ていた話)など読んだかぎりでは、とてもいい人、とは思えない、とZ嬢に笑われ、確かにその通り。ところで斎藤秀雄だってかなりのものだね、あんな歪んだ性格の人が、先生、先生と慕われ今だってああして教え子たちがサイトウキネンなんてオケまで作って演奏してくれているのだから世の中面白い……と話す。晩遅く内田樹『先生はえらい』(ちくまプリマー新書)読み始めたら、師弟関係は基本的に「美しい誤解」という記述があり。「誰も知らない、この先生の素晴らしいところを私だけは知っている」という誤解。これを読むとサイトウキネンがなぜ存在し得るのか、を妙に納得する。
▼立法會港島区補選にレジーナ葉劉淑儀女史が正式に立候補。03年に50万人デモ引き起こす直接の原因となった基本法23条での治安立法について当時の保安局長として事実上、更迭の身。当時は謝罪要求など突っぱねたが今回は「市民に対して当時の自らの言動を謝罪」と。23条立法は当時の特区政府としての政策であり自らは保安局長として主管であったが立法化に尽力した、というのが彼女の弁明。それにしても「ヒットラーも選挙で選ばれた」だの「休日のデモはレクリエーションのようなもの」といった一連の言動が常軌を逸するのは確か。今回も謝罪発言は選挙での得票狙いのリップサービスに過ぎぬ、と泛民主派は一笑。確かにこのオバサンの権力志向の強さ、独特のものがあるが、かりに立法會議員、はたまた行政長官就任?の場合、けして単なる「共狗」にはならぬ気もしないでもなし。ところで今回の参選表明に同席の支援者には親中派御用政党民建聯や自由党の代表は当然として、まず気になる存在は地味だが史泰祖医師あり。03年の50万人デモで「醫學界七一民主行動」組織した史医師の、今回のレジーナ支持は「変節か?」と非難されもするが常識、いや見識ある人で今回の判断が香港の政治的分断を避けるための選択という言葉に深みあり。他に英国統治時代の政務官 David Akers-Jones卿、蘭桂坊の Allan Zemanや元喜劇役者マイケル許冠文の姿もあり。マイケル=ホイがその場にいることが喜劇か。勘違い甚だし。親中派の梁愛詩が正式にレジーナ葉の推挙人というのは驚かぬが名誉顧問に「香港の市川房枝Elsie杜葉錫恩女史(94歳)の名があることに驚き。もともと保守派ではあるが、この老政治家に「香港の良心」アンソン陳方安生に対する評を聞いてみたいところ。

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