富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月十九日(水)曇。諸事忙殺され晩に至る。年末に薮用で東京行き二泊、飛行機も宿泊先も押えたものが取り消しとなり多少がっかり。放送作家の村上氏、つねにバンコクとかへの片道切符残していることが神安定剤のようなもの、もうダメ〜っというくらい疲れた時に一泊でもいいから緊急脱出する、と、その気持ちがよくわかる。今のところ自分の近い将来のitineraryがないことが少し寂しい。ところで、あの愛煙家、蔡瀾氏が禁煙。今日の蘋果日報の随筆で公表。さすがの煙民も喫煙で咳が止まらず、で致し方なし。ただ喫煙の習慣とニコチン中毒から逃れるのは易からず東京で購入の禁煙パイポ「紅茶味」がお気に入りで、但しニコチンは禁断症状あるので日に四本のミニシガーを毎日の三食の後と「あと一回がいつかは想像にお任せ」で燻らせ、それでも禁断症状ある時はニコレットでニコチン摂取で禁断症状抑える由。蔡瀾であるから、あれほど「禁煙なんて馬鹿馬鹿しい」と言っていたが、いざ禁煙となるとそれを面白可笑しく書くから……この人らしさ、か。いつまで続くか?と皆が期待?するところ。アタシはいつの間にか喫煙の習慣失せており、たまに誰かに勧められたりバーで一服もあるが習慣戻らず。パイプも時々思い出したように燻らす程度で、パイプのほうが美味いと思っているから紙巻きに手が出ないのかも。
▼中環のKennedy Rd歩いていて軒並ぶ画廊がなにが「うんざり」かと言えばどの画廊も中国の現代画、みんな人物をテーマに男は決まって坊主頭の痩せぎすでランニングか開襟シャツ姿、大口開けて笑うがどこか寂しげ、少年には稚気失せた老いを感じ得ず、オンナはきまって七十年代の文革紅衛兵か。……とこの手の絵画ばかりがやけに眼につく香港のアート市場。これにうんざりは劉健威兄も同じだったようで先日の信報随筆で、この「ポスト天安門」の中国絵画、所謂「調侃派」、ただ「笑うしかない」巷民の蒙昧無知を的確に表している、と言えなくもないが、この醜化された中国人像が商業的に現代アートの主流に挙げられ評判となり売買されることへの中国人としての不愉快。しかも投資対象で中国人がこれを売買することに劉兄疑問呈す。御意。
親中派御用政党民建聯が昨日、立法會補選にあたり党として葉劉淑儀女史支持を正式決定。会議後、民建聯と代表と並んで記者会見のレジーナ女史「参戦を積極的に考慮」と宣う。本来であれば今月初には出馬表明のはずが泛民主派で突然のアンソン女史出馬で情勢判断続けるレジーナ女史。民建聯の支持受けても(この支持受けることで余計嫌われるか……笑)その場で出馬表明出来ず、煮え切らず。麻生太郎君ぢゃないが負け戦覚悟の善戦を挑むか、或いは出馬取り消しも自ら出馬表明後の取り消しに非ず「民建聯や親中派のご推挙はいただきましたが出馬は控えさせていただきます」も得策か。どう考えても今回の一騎打ちで落選よか今回は逃げて次回の立法會選挙に范徐麗泰(立法會議長)引退の後釜で立候補=当選の方が将来の行政長官の椅子虎視眈々と狙うなら良策。かといって今回出馬取り消しも最初の一歩で蹴躓くようなもの。今になってレジーナ女史、つくづく保安局長時代の恐怖政治ぶり後悔か。アンソン女史の出馬とて結局一言で言えばレジーナ女史に対する「あんな可愛くないオンナ、誰がアタシですらなれなかった行政長官にするもんですか」の怨念か。
▼香港の通信大手PCCWに対して大陸資本某氏が買収挑む、とSCMP報ず。PCCWといえば社主の李澤楷君は香港での普選実現求め財界代表するリベラル派。立法會選挙での泛民主派候補支援への去就注目されるところ。そのタイミングでPCCWの大陸資本による買収話も意味深。北京政府は香港財界に今回の補選で踏み絵強いるが如し。
親中派言論人として香港で威勢よかった徐四民氏(鏡報創刊人)今月九日に逝去。昨日葬儀。この葬儀の報道見ても思うのは、董建華君、行政長官退任後、とにかく彼の仕事といえば親中派要人逝去で葬儀の際に棺出しの左最前列。このした殯(もがり)での神妙な表情見ていると、この人、けして悪い人じゃない、とはわかるのだが前行政長官のためにいまだ公費拠出されているかと思うと情けない話。
▼永田町について書かせたら今いちばん凄いのが『小泉の勝利 メディアの敗北』で注目された上杉隆なのは間違いなし。このジャーナリストが安倍三世首相辞任に見事なタイミングで『官邸崩壊』を新潮社より上梓。安倍内閣、実は、就任直後の首相に、電撃的な中韓訪問で輝かしいスタートを切らせた若き側近たちの自信、忠誠心競争、功名争いが、間もなく自画自賛と自己顕示に変質し、初期には成功の要因だったチーム編成自体が危機の誘因に反転した……というアイロニーの分析の冴え(と以上、朝日新聞書評の野口武彦の記述引用)……で「読んだつもり」。今にして思えばちょうど一年前、安倍首相誕生の折、組閣よりも脚光浴びたのが首相補佐官らの勇姿。嗚呼、この人たちが日本を変えてゆくのか……と。それが結局、何もできぬままに掃いて捨てられたのだから不幸中の幸い。

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