富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-09-15

九月十五日(土)朦霧。視界悪く無風にて劣悪なる大気。出かけるもウンザリで机まわり片づけ母に頼まれた文章書くなどして昼に至る。午後出街。行く宛もなく2番バスで終点は上環のマカオフェリー。海安珈琲室に憩ふ。路地から路地を抜け中環。Colorsixで写真現像受領。早晩にZ嬢とFCCで待ち合せ、まだ二時間半もあるが朦霧に外をふらふらする気力も失せFCCへ。ジントニック一杯。競馬中継あり。クラス2の第9レースと次のクラス1の最終レースだけ単勝で賭ける。前者は1番人気のPacking Winner、後者は2番人気のPocket Moneyとするがwhyte騎乗のPWもSize厩舎でCoetzee騎乗のPMもきちんと勝つ。1.9倍と4倍で手持ち資金増やし今季幸先良し。白葡萄酒一杯。このまま飲んでいると酔いそうなのでアールグレイ紅茶を飲みながら原武史『鉄道ひとつばなし2』と姫宮栄一『香港』読む。いずれも途中まで読んでいたものの読了。新書など一、二時間で読んでしまいそうだが『鉄道2』はアタシ自身が「鉄ちゃん」だからかどうしても細部まで読み込んでしまい熟読。原氏はみずからを鉄道の専門家でもないし知識に乏しいと謙遜するが宮脇俊三種村直樹川島令三嵐山光三郎ら(筆者がこの4人の先達の文章を真似て「東海道本線での小田原から熱海」を舞台にパロディで書いてみせるのが可笑しいのだが)に対して原武史という人は鉄道随筆でなく、鉄道についてきちんと<批評>で書けるはず。ただ著者は好きで鉄道に乗っているだけで批評の対象になどしたくない、とおっしゃるだろうが。宮脇俊三の『鉄道2万キロ』、アタシも中学三年の時に受験勉強そっちのけで読んだが、すでに廃線となった路線かなりあり、昭和の記録文学として著者もかなり評価、これは再読すべき。姫宮栄一の『香港』は昭和39年の中公新書で著者は大正12年生まれで東亜同文書院出身(おそらく書院出身の最後の世代)。中日新聞の香港特派員。著者が香港駐在の1960年代初頭は香港の日本人は千人に至らず総領事館日本航空が中環のTak Shing Houseにあり(このビル、ほぼ当時のまま現存)、JETROが萬宜大廈にあり、香港大丸が出来て数年目、日本食といえばインペリアルホテルの東京レストランとミラマホテルの金田中、という時代。この本には40数年前の興味深い記述多く後日それを綴る。Z嬢がFCCに来て簡単に夕食。智利のSanta Carolinaの赤葡萄酒飲む。FCCといえば20世紀の歴史に名を残す戦場記者であるClare Hollingworth女史讃えるラウンジの専用席が消滅、今晩もいらっしゃったが女史も一メンバーとして普通扱いの由。晩に市大会堂で香港シンフォニエッタ演奏会あり。ストラビンスキーの「ダンバートンオークス協奏曲」とハイドン交響曲第94番「驚愕」。前者はJustin Brunsなる客演のコンマス除いて室内楽的小編成でこのオケでは多少難あり。指揮の葉詠詩もこういう曲は解釈が合わなく思える。後半は樫本大進のソロでベートーベンのヴァイオリン協奏曲ニ長調。実演で聴くのはアタシは初めて。個人的には第1楽章のみで完成度からいくと充分、第2〜3楽章は別の曲でもいい、とすら感じる曲。樫本大進の第1楽章は聴かせどころたっぷり。せっかくの香港公演であるからアンコールでソロで1曲くらい聴きたかったが香港シンフォニエッタのお約束でアンコールなし。帰宅して半藤一利荷風さんの戦後』少し読む。今月に入り右の肩痛ひどく按摩、湿布でも癒えず温泉も効果なし。肩にノミでも突いたような痛みに四十肩、五十肩……ただ老いを感じるのみ。枕下に茣蓙敷き枕少し高くし鎮痛剤服す。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/