富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-09-07

九月七日(金)昨晩深更風雨烈し。朝起きると庭を眺め凌霄花の枝が倒れたと母嘆く。台風伊豆から奥多摩、群馬を抜け東北に向う由。各地で観測史上最高の降雨量。記録的豪雨。傘の骨も折れる強風の中、朝のうちに真言宗豊山派神崎寺。先考の墓参。文字通り雨風の掃墓なり。一旦帰宅し母と出かける。みずほ銀行でT/C両替しようとせば外国為替のレートは午前10時に出ますので暫くお待ちください、と。銀行は九時に開くが十時までは両替も能わずとは……日本は鎖国か。郵便局で保険だの手続きするが暴風のなか客甚だ少なし。破綻した商店街のなかにアタシが子どもの頃から営む間口一間半の古書商あり。多少左翼系で文学書多し。今朝すでに成田空港宛で自宅に届いた書籍など送った後だったが、こういう時に限って本と出会うもの。角川書店の昭和文學全集が一冊百円!とは。小林秀雄川上徹太郎(第十三巻)、林芙美子(第十九巻)と大岡昇平三島由紀夫(第二十三巻)の三冊購うが三百円では珈琲より安い。購入。新潮社の小林秀雄全集(全五巻)は残念ながら第一巻が欠本で残念だが目に入った「透谷全集」が昭和44年版の箱入り美品で三巻揃いで三千円。いやはや。暴風と驟雨の中、持って帰るのも難儀だが買わぬわけにいかぬ。靴だの夏物の上着の売れ残りだの買物済ます。暴風雨歇む。昼に母の最近贔屓の「だぼう」なる蕎麦屋。奇妙な肆名は仏教の「坐忘」より、蕎麦を打つ、で「打忘」の意の由。郊外の住宅地の外れ、店の前には広い畑に蕎麦が育ち、見事な羽振りの大根、茄子。蕎麦が不味いはずもない。幸甚。食後に近所の「ゆきむら」という、一軒、郊外の一軒家、入ると骨董品など扱う居間で甘味供す肆。地方は市街地の駅前商店街こそ壊滅的打撃だが更に地方に分散して面白い店だの食肆だのいろいろあり。これはこれでワンダーランド。ここの女将さんが作る葛切りいただく。ふつうの一軒家の居間のようなところ坐り母と世間話などのんびりとしながら台所で女将さんが葛切りを作るのだが出てくるまで二十分ほど。お湯が沸く音が聞こえ、流しから水の音、冷蔵庫から氷を出し、……ってことは注文してからお湯を沸しつつ葛粉を溶かし、で葛切り作られたのかしら。美味い。実家で書籍、掛軸だの香港に持って帰る小間道具など片づけ。夕方スーパー銭湯に浴す。露天風呂から空を眺めれば見事な青空に白雲、西の空に夕陽。アタシが幼い頃から食べている品川屋という鰻やから蒲焼持ち帰り自宅で母と妹と食す。鰻やで酒飲みたいが、なにせアタシですら自動車の運転せねば餓死するが如き地方都市の実態。でも自宅で枝豆、焼き雲丹、蒲焼きも美味。伊豆のシャトーT.S.(志太農場)の赤葡萄酒飲む。ちょっと軽め。三更にTBSで偶然に見た「恋するハニカミ!」、初めて見たが「やさしさ」だの「ありがたさ」だの「苦しさの克服」だの晩11時の番組としてはテーマ意味深。庭に虫の鳴き声さまざま。秋近し。

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