富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-08-11

八月十一日(土)台風の8號警報は昨晩二更に解除される。本日も降雨続く。昨日の信報文化欄に夏の映画祭紹介の評あり。上映作品はきちんと目を通したつもりでいて探し損ねた上映作品あり。ちょうど九月のルイス=ブニュエル監督の特集上映のチケット購うのにTom Lee楽器店(プレイガイド)に行く用あり。そこで尋ねても「そんな映画はない」と言われ前述の信報の映画評をよくよく見れば「夏の2つの映画祭」で国際映画祭と別に国際短編映画祭あり(ややこしい)。後者のチケットはネットで発売中。確かに成人映画で松竹に非ず。Tom Leeを出てPacific Coffeeでそのチケットをネット予約。午後ジムで筋力運動と有酸素運動を各一時間。油麻地のBroadway Cinematiqueまで散歩。チケット受領。この辺鄙な場所の映画館、十年ほど前であったか「よくぞ造った」と感心したが映画館ばかりか文化系書店もカフェも香港では最も充実した映画DVD店のどれも大雨のなか盛況。台湾の誠品書店の雑誌バックナンバーを立ち読み。昼飯を逸し空腹で油麻地のラーメン店・横綱に寄ると午後四時というのに満席。大したもの。葱ラーメン食す。夜食用にと、ふと景記粥王の粥が食したくなり雨のなか旺角迄戻り廣華病院裏の景記に向うと「確か此処のはず」の場所は明園なる茶餐庁あり。三、四年ぶりでは致し方なし。その明園なる店に「生滾粥」と景記の時のままの看板も残り粥を供しているので試しに購う。この廣華街や煙廠街に抜ける商業ビル一帯にプラモデル屋やモデル銃、軍事オタク用品、ラジコン飛行機などの専門店数限りなし。大人の客でたいそうな賑わい。数年前よりかなり拡充。帰宅。はっと思い返せば、上環の粥の名店・生記の職人が共同経営でこの景記を始め数年で独立して湾仔で李景粥品専家を開店していたのだった。ならば景記は閉業も当然。すっかり失念。だが、その明園の粥もそれなりになかなか。?仔飯が美味いと評判、と雑誌紹介の記事も店頭に貼られてはいたが夏では時季に非ず。晩に萱野『国家とはなにか』読む。引用の仕方が気になりフーコーだのドゥルーズ=ガダリの本など久々に書架より取り出しては参照しつつ、で萱野本読み進まず。
▼げに凄まじきは役者の意識。
今、自分で新作を演出し、主演し、スターになろうという気はさらさらない。50、60になった時に自分のせがれや後世の團十郎海老蔵君たちがやりたいことに挑めるようにする力を己に蓄えないと。時代や文化にぶっとい芯を通すこと、それが一番重要でしょう。(市川海老蔵
若いのにさすが成田屋、といえばその通り。だがまだ自らが未だ團十郎の名を襲わず父が健在の中で、しかも50、60になった時に倅がいるのは当然のようにそうであってほしいが(もうすでにいるか……笑)、後世の團十郎のため、海老蔵「君」とはよく言ったもの。この自意識過剰は海老蔵君らしさか。会社の跡継ぎ息子が未だ部長クラスで「ぼくの後継者がゆとりをもって会社経営が出来るように」などとほざこうものならどれだけ呆れられるか、だが。
北京オリンピックまであと1年。懸念されるは深刻な大気汚染と交通渋滞。北京市当局は強制的な自動車閉め出しで大気汚染改善に望むことも検討中の由。マスコミに対し、この発案を否定的に報道せぬよう通達とか。オリンピックといえば象徴的な国立競技場(鳥の巣の如き建造物)の建築に加わった建築家の艾未未氏が、その競技場が中国の発展の象徴の如く言われることに否定的見解表明。瑞西の建築設計会社Herzog & de Meuronによるこの体育館設計プロジェクトに加わった艾氏は(自らの設計はあくまで建築美術であるという理念に基づくのだろう)中国を代表する現代詩の詩人であった艾青が文革で被害被り自らも辛酸を舐めた経験から、自らの(政府の過ちなど)過去すら無視する=正当な評価もできない国家がどうして発展を祝賀できようか、と指摘。指摘はわかるがオリンピックのための国立競技場という建築に加担する時点で、それがどのような政治的目的のものであるか、は理解できようもの。
香港大学教育額院の陳介明院長が「文盲」について論じる(信報)。文盲はilliteracyだが識字率との違いに着目。中国語で現代の生活で充分な識字対象を二千字とした場合(日本の常用漢字は1945字)問題はその漢字がわかっていても文章が読み取れない、書けない者が増えてはおらぬか、と指摘。識字率に基づく文盲は減ってはいるが。

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