富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-07-24

七月廿四日(火)今月四日の中国愛樂樂団(中国フィルハーモニックオーケストラ)の香港での演奏会。郎朗がピアノ共演で爆満のところ急きょ郎朗の出演中止で殷承宗(http://zh.wikipedia.org/wiki/殷承宗)が代演。この演奏の模様が先週土曜日にテレビ放映され録画したものを昨晩遅くに見る。ピアノ協奏曲「黄河」、殷承宗のピアノ演奏、もう「革命的」としか表現できず。音は大きく外すし奏法も素人目にも「えっ」と驚く鷹揚さ。だが文革も生き抜いた革命家としてのピアノ奏者であるから「これでいいのだ」なのだ。曲も革命賛歌の「黄河」を上品に弾いても仕方なかろうし。それにしてもこの協奏曲「黄河」あらためて聴くと、かなりラフマニノフ的なフレーズや展開多し。この殷承宗がリストの超技法とか弾いたらどんなことになろうか、と想像すると背筋ゾクゾク。で本日、早晩に中環のColorsixにて写真現像受け取り。いつもならFCCで一飲だが猛暑にFCCまで歩くも厭い早々に帰宅。ドライマティーニ一飲。The Economistだの新聞の切り抜き読む。Z嬢に借りた中村美繪『嬉遊曲、鳴りやまず』を少し読む。斎藤秀雄傳。
▼齋藤秀雄が留学した1920年代の伯林は伯林フィルにフルトヴェングラーが登場し州立オペラはブルーノ=ワルター、で国立歌劇場にエーリッヒ=クライバーという全盛期。齋藤はチェロをライプツィヒ王立音楽学校教授でゲヴァントハウス管弦楽団の首席チェリスト、ユリウス=クレンゲルに学ぶ。このクレンゲルについて齋藤秀雄は後世、たった一度だけ師匠の思い出を認めた、という。バッハの無伴奏チェロ組曲を習う時に、齋藤は当然、クレンゲル先生が指使い書いて出版した楽譜を使ったのだが先生は「この指使いはパブロ=カザルスの方がずっと好い」といって自分の指使いを消してカザルスのを書き込んだ、そうな。齋藤はこの「先生のこの己を空しうする態度」に感じ入った、と音楽雑誌「フィルハーモニー」1929年3月号に書いた由。ところで余は個人的にこのバッハの曲を「無伴奏チェロ組曲」というのが厭なのだが斎藤秀雄はこれを「バッハの六番の組曲」と呼んでいたのを知る。この呼び方は後世残っておらぬようなのだが「バッハの六番の組曲」は余は個人的に好む。
▼星巴珈琲についてWilliam?達智君が信報の随筆に書いている。星巴珈琲を仏蘭西、伊太利では「あんなもの」と嗤われるがWilliam君は十数年前にカリフォルニアで始めて星巴珈琲店に入った時の快適さの衝撃、そして北京首都空港で飛行機待つ間に空港内に星巴珈琲があることが首都空港のかつての劣悪な環境考えればいかに幸せなことか、と論ず。御意。「珈琲があれだけの値段するのだから快適な環境など当然」と言えばそれまで、だが、首都空港の搭乗待合場所が薄汚いばかりか不潔で、さらに殊更不味い珈琲や菓子が何十元とスタバどころぢゃない高値で売られていたこと考えれば、今のスタバのほうがずっとマシなのは確か。
The Economist誌に“Longing for Lionheart”という記事あり“Political nostalgia for the Koizumi era, but is it really over?”と今週末の参院選挙で自民大敗、安倍失脚の場合に小泉三世復位ありやなしや、と。安倍の右寄り姿勢に世論反発あった場合に(ポスト安倍狙う麻生君は「右」であることで今回は外れ)「自民党中国共産党か」のお家芸で中道への軌道修正図り福田康夫首班指名ということもあり得るが(あくまで中和作用のリリーフとして)、隠居のように静かにすればするほど小泉三世の存在感が注目され、この記事の最後は猪口邦子の小泉の「自民党内の影響力は日増しに強まっている」というコメントで結ばれてる。この「小泉さんなら」も安易なら「岸のあとの池田」「金権政治のあとのクリーン三木」と同じ「所詮リリーフ」での福田首班もあんまり。この自民党体質の改善のためには民主党政権もあり、か。だが個人的には、もしかすると自民党以上に烏合の衆たる民主党の体質=極右から旧社会党左派まで、に疑問かなりあり。結局、自民党の旧宏池会的なところにお願いしておくのが無難、となるのが余の「あまりにも日本的な」結論なのかしら。
▼このThe Economist誌に“Accounting for good people”という記事あり興味深く読む。余にとって、大学のMBA経営学修士課程)と比較文化論講座とならび「お世の中でよく理解できないもの3つ」の一つが公認会計士の横行跋扈。ことにBig 4といわれるDeloitte Touche Tohmatsu、Ernst & Young、KPMGとPricewaterhouseCoopersについて。この4社で世界中で50万人を雇用。世界を跨ぐ大企業は多いが、他の業種と異なるのは会計会社の場合、まさに人材が最大の会社の資産であること、と。それは確か。だがアタクシが最も不思議なのが監査費用が当たり前のように毎年高騰してゆくのだが、香港であれば「中国での会計監査需要の高まり」による人材不足だの「国際会計基準の導入」といった名目で、否応なし。何処まで何が本当なのか。懐疑。だが記事によればDeloitteを例にすれば現在8.5千人配置する中国地区(台湾、香港を含む)を2015年には20千人体制に規模拡大の予定。と言われれば成程、人材不足は深刻か、と思うのだが、四大監査法人の利益率が収入の15〜20%と聞けば(通常の企業のそれを5%とするなら)「やはり監査報酬が高過ぎる」という結論に至る。

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