富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-07-18

七月十八日(水)松井今朝子女史直木賞受賞。女史の時代物未だ読んだことなし。ただ歌舞伎のその筋では作家になる前からよく知られた方。ブログだけは丹念に読み続け、どうしても二つだけピンとこないのが京は祇園の「川上」のお嬢様の印象強い女史が家での食事を「QPで見た料理」でささっと済ます、祇園とQPのギャップ、それにあの細身で趣味が乗馬。失礼ながら騎乗の姿がピンと来ず。それにしても女史の昨日のブログ読めば、東京會舘の記者会見場へ直行、その後(文藝春秋の関係者に)いわゆる文壇バーに連れていかれ(築地の新喜楽からバーに河岸をかえた)選考委員のWJ氏、KK氏、AT氏、AJ氏にお目にかかってシャンパンで乾杯し、すぐにそこを出て麻布のバーで各社の担当編集者の方々と……ってのが、いかにも文壇。文壇というと聞こえがいいが、たんに文学者の政界、か。本日、早晩にペニンスラホテルのバーに往く。香港美術館に参る前に暫く前の信報に張圖という人が綴りし「?京的?個角落」と信報月刊今月号の「《清明上河圖》寫一個繁華夢」を読むため。ドライマティーニ。久しぶりだがバーカウンターに坐るなりサブのバーテンダー氏が“Gin martini with lemon peel twist, right sir?”と。嬉しいねぇ。宋は徽宗の大観年間(1101〜1110)に張擇端という画家により描かれたと云う清明上河圖(http://zh.wikipedia.org/wiki/清明上河圖)は北京故宮博物院所蔵の国宝(中共では党宝か……)で通常は門外不出。今回、香港特区十周年にて清明上河圖など数十点が<國之重寶>として香港にて展示さるる。北宋の都、?京(現在の河南省開封)を流れる?河の両岸と城門内外の生活風景を描いた図巻。描かれた当初は宮廷に献上されたが元の頃から巷に流出し様々な人の手を経て(よくぞ行方不明にならず)明代に宮廷に戻され清末には愛新覚羅溥儀により「満州国」に持ち出される。戦争の混乱で一旦は行方不明になったものが1950年に東北博物館で発見され北京故宮博物館に収まる。?河に架る虹橋が両岸の都市の境界で市場が建ち、詳細に見ると生活区と倉庫や運輸の並ぶ地区と中世都市の区界が見え社会史的にも面白いもの、と学ぶ。この二編と信報月刊の先月号に続く柯小衛氏による父・柯在鑠(中共の外交家、中英合同連絡委員会の中国側首席代表)追悼記を読む。そろそろ丁度いい時間か、というのはその香港でのこの清明上河圖が香港美術館で公開展示中。七月と八月上旬までの40日のうち前半は張擇端のこれ、後半(七月下旬から)は仇英款の臨清明上河圖が特別展。で今日は前者だが入場者殺到=盗難?恐れられ一時間に250人の入場制限で予め時間指定の入場券購わねば当日券はもはや前半の展示は売り切れ。で午後六時の入場で「そろそろ丁度いい時間か」とペニンスラのバーを出ようとするとバーテンダーもなかなか狡いもので「もう一杯如何?」と勧められる。勧められると断れぬのが酒飲みの性で「それじゃもう一杯」と二杯目のドライマティーニ。まぁ六時丁度に出向いてもどうせまだ五時台の客が見終わらずか、と思ったが酒飲みの酔った直感は馬鹿に出来ぬもので六時廿分位に美術館に入れば清明上河圖の特別展示会場は長蛇の列。で結局、清明上河圖の実物拝むまでに小一時間。作品や作者の簡介だの各段の解説展示など読みつつ清明上河圖が絹絵の部分よりなんと関係者による跋(題記、前書き)の多きことか!と勉強。で漸く清明上河圖に近づけば、なるほど廿人が一組に束ねられ参観時間は5分限定で「立ち止まらないでください」は日中国交回復での上野公演のパンダ見物の如し。五分の間に清明上河圖の虹橋までの前半部を急いで見て、見終わるとまたその廿人の列の最後に並び直しのぐるぐる巡りで五分などあっという間で追い出される。なんだかよくわからぬまま。ただ、清明上河圖が現物は予想以上に絹地が黒ばみ、而も作品保護のため証明もかなり落としてあるので、目を凝らしても不鮮明な世界。精緻なのだが個々の民衆に、たとえば広重のような人の躍動感や、安藤光雅の「旅の絵本」のような各所の物語性も乏し。そういった事を実感できただけ一時間並んで五分見ただけの甲斐もあった、と思う。この清明上河圖、北宋の?京の賑わい、といわれるし、宋の時代に清盛の日宋貿易のように商業勃興とは歴史に習へど、この図巻の動きの無さ、ふと、これは?京でなく「こうあるべき」の象徴画ではないか?とすら訝しく思う。清明上河圖を見終わり本来なら、寧ろ清明上河圖の他に北京より運ばれたる国宝級絵画や書の数々をゆっくりと鑑賞したい、と思ったのだが清明上河圖に一時間以上要し、午後七時半より美術館隣の太空館にて周凡天氏の古典音楽鑑賞講座あり、後ろ髪ひかれる思いで清明上河圖以外の作品はほぼ素通り。隋の佚名の書「章草出師頌卷」から唐の崔白「寒雀圖卷」、元の倪?「竹枝圖卷」などゆっくり眺めたくも清明上河圖の入場制限ほどぢゃないが各の図絵に十数人ずつ順番待ちでとても待っておれず断念。残念。で太空館の周凡天氏による「解剖世界名曲進入音楽世界」の講座拝聴。先週は招飲の約あり一週欠席での今晩が三回目はチャイコフスキーピアノ曲集「四季」より「舟歌」とショパン英雄ポロネーズの二曲を紹介しながらの「複雑の開始」と題してのA-B-A、或いはaa'-bb'-aa'という一つの楽曲内での展開の複雑性を周凡天氏が語りたるが90分をこの舟歌英雄ポロネーズの二曲で複雑性語るには鳥渡、話がもたぬ点も正直なところ、あり。ポーランドで生まれ巴里に旅居のショパン愛国心で云々、といった話はわざわざ周凡天氏の「古典音楽解剖」で聴く筋に非ず。帰途、ジムに一浴。

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