富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-07-17

七月十七日(火)早晩に太古城に往きZ嬢と映画見る。我ながら“Harry Potter and the Order of the Phoenix”(邦題:ハリー=ポッターと不死鳥の騎士団)見ることになろうとは。カード会社よりUA映画館お二人様無料券貰ひ、まさか「ドラえもん」だの「ケロロ軍曹」見れもせずハリー=ポッターかDie Hardしか選択肢なし。ロードショー公開の商業映画など年に一、二本見る程度だがアクション映画なら最近でもMission Impossibleであるとか007を暇に任せて見たこともあり、その意味ではDie Hardか。だがZ嬢と「ハリー=ポッターなどこの機会逃せば一生見る機会逸するのでは?」と案じ「ハリー=ポッターと不死鳥の騎士団」見ることになる。コーラとポップコーンで雰囲気盛り上げハリー=ポッターみたが見たが「何が何だかさっぱりわからぬ」うちに二時間余、で「さっぱり面白くもない」まま終わる。前数作からの物語の筋知らぬ所為もあろうが、すっかり薹の立った主人公も精彩欠きファンタジーと言われてもアタシにとっては幼き頃にみた「チキチキバンバン」、と書くと「気違いになったばんばひろふみ」のようだがChitty Chitty Bang Bangというファンタジーの名作あり。余はこのChitty Chitty Bang Bangのミニカーなど有し、他にもサンダーバードのペネロープ号だの恐れ多くも先帝がお乗りの日産プリンスロイヤルだの「そのへんのガキがけして持っておらぬ」稀有のミニカー数台有せしミニカー富豪なり。でChitty Chitty Bang Bangに胸躍らせ「王子と乞食」に今思えばSM的官能感じた余にハリー=ポッターは「たんなるCG使いすぎ」で鳥渡も面白くなし。終わって寿司亭に回転寿司食す。
▼話は旧聞に属すが華懋集團の総帥、キャンディ=キャンディの異名とる?如心女史の逝去につき億か兆の財産相続に?如心は謎の風水師を遺言状で遺産相続人に指す。この風水師、親族、華懋集團財団の三つ巴で遺産争いとなろうか、というところ?如心の実弟の開業医、裕福なはずがその自宅が香港大学に近きマンションの、而も公道下の不法建築部分に住まう、と報じられる(十五日)。而も85平米と「医者にしては苫屋」で公道下で窓なしの暗室。かなりの偏屈者か、いずれにせよ不法建築部分で地税など納入の記録もなし。奇人の部類か。
▼米国にてドッグフードから食品まで中国産品での化合物添加への不安から“China Free”なる、中国関連無添加の商品出回り始める。かつて日本製品も米国席捲のことありしがデトロイトにて日本車壊す抗議こそあれ「ジャパンフリー」の不買には至らず。北京政府は国家質検総局局長がこのチャイナフリーにつき「過剰反応。ひとつの不合格品見つかると全部がダメといい民間企業の製品問題を政治問題化している」と批判。今日の信報は社説で、この局長発言認めつつ北京政府が反応鈍るとチャイナフリーが中国の輸出大国地位脅かすこともある、と指摘(信報が輸出「大国」という表現使うことも驚いたが)。この社説に拠れば前述の質検総局の調べで国内消費材品目の実に五分の一が不合格で殊に食品は厳重。食品産業は企業数多く企業の規模小さく、国内に44.8万社ある食品生産会社のうち78.8%が従業員数十人未満の零細企業。とても管理当局の手がまわらず、と。しかも農業製品の審査は政府の農業省、飲食店の衛生は衛生省、工商総局は食品の流通を監督し、質検総局は食品の生産、加工と輸出を管轄と役所もそれぞれの基準設け、何より食品安全法が今日まで制定されておらぬ事実。今日の、この社説は「從中國製造至「無中国」化」と題しているが、実はこれは六日の林行止専欄「没有「中國製造」美人活不下去!」(メイド・イン・チャイナなしでアメリカ人は生きていけるか!)を受けたもの。この専欄で林行止氏の指摘の要旨以下の通り。
中国の経済成長と輸出大国化で中国脅威論すら叫ばれる。米国の貿易関係業界紙の記者Sara Bongiorni記者がが“A year without Made in China”なる記録発表しており、2004年の聖誕節に贈物のかなりが「中国製」であったことに着目し、もし1年、中国製品なしで暮したらどうなるか?と発案。まず聖誕節の贈物のうち中国製は25品に対して米国含む非中国製が14品。この「不買」が中国の非民主制や人権蹂躙に対する抗議でもあり。だが、この記者のこの本の前書きで経済学者のJ. Naroffが指摘するのは実は米国の輸入(昨年1.7兆米ドル)のうち中国は15%余に過ぎず。他の先進国や日本から耐久財を輸入し、中国からは日常消耗品が殆ど。そういう意味では中国は廉価なる消費品の提供で米国家庭の家計を扶けているのも事実。前述の記者が05年の聖誕節では中国製品買わぬために、と自宅で贈物のハンドメイドに挑んだが布や針まで中国製が現実、と。米国がいつの日か中国製の抗生物質だの自動車、飛行機を購入する日が来ることを待とうではないか、その時で遅くもなし。
林行止氏にしては珍しく民枠的な対米不愉快。実はこの林行止氏の専欄の主張も前談あり。それが前日(五日)の關愚謙博士(ハンブルク大学)による愚公専欄の「皇帝不急「太監」急」を受けたもの。(アタシも暇人なので新聞を二週も前まで遡れるのだが)關愚謙博士、独逸に三十年以上住まわれつつ中国政治に対する的確な観察は見事。この随筆で語るは下記の通り。
今年、中国の党中央は第17回全国代表大会開催で来年が北京五輪。社会の安定、殊に世論(言論)の穏定が狙い目。關博士がある原稿で米国を「超級大国」と称しただけで政治的敏感として編集者がこの四文字削る、と關氏は嗤う。中国脅威論が高まるなか中国は外貨備蓄の削減に海外投資熱も盛ん。だが關氏曰く、貿易黒字という国家純利を海外投資にまわすリスク高し。關氏の知己たる西ドイツのシュミット元首相もこれを憂慮、と。目前の中国は、カネ、カネ、カネと拝金主義の横行。だが「戒急用忍」が肝心。経済成長のなか学ぶべきは欧州のルネッサンスから産業革命、民主主義熟成への経験であり、その彼らの礼儀と羞恥心こそ中国が見習うべきこと。学ぶべきものは米国の暴力と色情に非ず。
……と關博士(笑)。御意。話が長くなるが(というか最早、この一文の書き出しからは到底遠方に来たれども)この關愚謙氏の専欄のこの五日の題名が「皇帝不急、「太監」急」。中国の拝金主義と海外投資などの勢いを皇帝(中共)と太監(本来は宦官の最高位、明の時代の鄭和もこれ、ここでは「民衆」の意)に喩えたもの。但しその翌日の林行止氏はこの「皇帝不急、太監急」に対して「皇帝だってすでに充分急いでいる」と反論。中国政府じたいのバブルを指摘。この新聞の活性ぶりを日本の新聞にも期待したいのだが……。

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