富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-06-13

六月十三日(水)米国華府に共産主義暴政にて命失った億の単位の犠牲者追悼のため「民主の女神」像建立され昨日ブッシュがこの除幕式に参加、と蘋果日報一面トップ。共産党暴政で命失ったとされる1億の三分の二は中国で、大躍進、反右派闘争や文革などの犠牲者の由。毛沢東は偉大。それにしても、共産主義に対して米国の標榜する自由と民主の讃美、共産主義罵倒も結構だが米国の戦争行為で朝鮮半島ベトナム湾岸戦争イラクなどで命失った犠牲者は追悼せぬのが米国らしい身勝手。キューバかどこかに「反米の女神」像でも建立すべきでは。で、本日。幸い、昨晩の暴飲暴食とは言わぬがリハビリと称してのドライマティーニ2杯、ワルシュタイナー0.3L2杯、ソーセージ1本と酢キャベツ、ジントニック2杯、ハイボール1杯とジャックダニエルソーダ割2杯……って暴飲か、は今朝起きると二日酔いも消化不良もなく快適。胃潰瘍が治ったのかピロリ菌がいなくなったからなのか絶好調のよう。不思議。諸事忙殺され晩に至り連日の悪天候でさっさとご帰宅。当然、休肝日で軽く食事して文藝春秋七月号読み早々に臥床。
文藝春秋の七月号は「塩野七生、ローマで絶好調〜!」って感じで(あまり見たくない)グラビアと「日本人への10の質問」と題する「古代ローマ格差社会であった」みたいな(どうでもいい)羅馬出羽守。まぁそれはいいとして、さすが文藝春秋。「絵になるものが何もない」とマスコミ各社、とくにテレビ局を困らせている「香港返還10周年」で「香港といえば」の山口文憲先生にご来港いただき「街の雑学ノート」である。最高〜!、イェーッ! 中環のかつて英国海軍基地であった人民解放軍の駐在所からタマール広場の移動遊園地(AIA)から金鐘のハーバー沿いをさらっと歩いた山口文憲先生は
賑やかな音楽にのって回転するメリーゴーラウンドに観覧車。そのわきで静かに傍観者をきめこむ人民解放軍。この構図が、現在の中国と香港の関係を象徴する。
……って、どうでげす、旦那。流石だね、エッセイストの基本で「偶然そこにある」ものにシニフィエを見出し語る、この筆致。だが「香港語り」の巨匠はちょっと筆も滑り、大陸から大挙して来港する観光客について
素朴な顏をしたおのぼりさん一行は、まずバスで香港ディズニーランドに連れて行かれる。それからデューティーフィリー・ショッパーズに連れ込まれて、香港人のカモになる。あたかも半世紀近く前の日本の農協ツアーのように。
だって。大陸旅行者ももはや香港鼠楽園には連れて行かれないし、彼らをカモにする悪徳土産物屋、物品税のない香港で「免税」と客を騙す店はいくつもあるが、「デューティーフィリー・ショッパーズ」というと香港では、それら悪徳業者を指すのではなく「免税」は語弊があるのでDFSギャラリアという名で営業するれっきとした尖沙咀と尖東にある大型小売店がそれ。DFSにとっては名誉棄損だよ、これじゃ。山口先生の文章は、それと変換前はRoyalの冠のあった英国系のメンバーズクラブが冠を外し云々、とたわいない話が続き
かくて香港は、?小平が「制度不変」を保証した五十年間の最初の十年をやりすごした。だが、この街は、植民地時代によく用いられた香港の枕詞「借りものの時間、借ものの場所」の上を、この先も漂わなくてはならない。
と、使い古された陳腐な言葉の引用で締めくくられる。「香港、旅の雑学ノート」は旅行エッセイとして、あの時代の記念碑的エッセイと認めるが、山口先生ご本人は香港から早々に足を洗いB級グルメであるとか物書きとして活躍。青木雨彦ほど行間を遊ばず立派。だが、この「街の雑学ノート」は、つまらない、の一言。で、この香港返還10周年記念特集はまるっきし、ダメ。紹介されるレストランも陳腐。あたしがいつも歩いている北角の英皇道の写真が2頁見開きのグラビアで
汚い雑居ビル、路上に着き出した看板、そしてガタゴトと走る路面電車。こうした香港の原風景は、まだそこに残っている。ただし、返還後に起った変化もないではない。路上の物売りが一掃されたせいで、歩道の上はずいぶんすっきりした。
なんてキャプション(これは山口先生ではなく編集部)。路上の物売りが一掃された? 一応、路上での物売りは返還前から非合法、で取り締まりはそれなりに昔から。一掃されてはおらぬ。ゴミのポイ捨てが罰金刑となったことと勘違いかしら。街市の紹介でも
肉、野菜、魚など生鮮食料品を扱う店は、市街各地区にある公営の小売りマーケットにすべて収容されていて(略)。この英国時代に普及した街市の制度は、返還後も引き続き発展。
って……生鮮食料品店はべつに街市に「収容」なんてされていない。これは、灣仔で、新設の公営街市新設で交加街の路上市場が新街市への移転を前提に廃止されようとしている話、か。だが、それも既得権での「路上」営業がダメなだけで街市に収容はされないし、当然「すべて」ではない。それに街市の制度って英国統治と何か関係あるか?(笑)で当然、返還後も引き続き発展、なんて……あまりの強引な展開に言葉もなし。ほんと無理矢理に特集組んでしまった結果が惨憺たるものに……。

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