富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-05-23

五月廿三日(火)昨晩通読の「のだめカンタービレ」でのだめ憧れの千秋先輩が大学のオケでミルヒー先生に突然指名を受け大学のオケ相手に弾き絶讃を浴びる曲がラフマニノフのピアノ協奏曲2番。今朝起きてCDラックで確認すると我が家にはラフマニノフ本人のピアノでストコフスキー指揮、フィアデルフィア管弦楽団の1929年の演奏、ツィメルマンと小澤でボストン、それにアシュケナージでモスクワフィルの3枚がありツィメルマン&小澤を目覚めに聴く。右目まで炎症に罹り通院の医者を変えたところでどうなるものでもないか、と思ったが養和病院眼科は前回左目が少し治まった時に一応再診なしとしていたので銅鑼湾のそごう(開店22周年の由)と同じビルにある眼科の専門医の診断請う。実に誠実な若い医者で懇切丁寧に診断の結果はTracomaで私らが子どもの頃はトラホームと呼んだが今はトラコーマなのね。昔は頻繁に子どもなど罹った気がするがC医師の話では70年代くらいから少なくなっていたが最近また流行りの由。晩に尖沙咀。天祥カメラ店覗くと珍しくライカM型のコーナーに客がありトリエルマー28〜50mmのレンズ購入の示談中。ライカのオリジナルのレンズフィルターだけでHK$1.2千なんて話してるのだから困ったものだがフードも合わせた価格は計算機覗き込むとHK$21,800也。掌に乗るレンズ1本で33万円……ライカはオジサンたちにとって困った玩具。レンズも羨ましいが流石、ライカ特約店だけあってレンズ購入のオマケにライカ社の写真集だの見事な装丁のメモ帳、ライカマークのマウスパッドなど特典も多し。羨ましい。Z嬢と待ち合せAshley街のEbeneezersという店でケバブ食す。市中の繁華街で連鎖店のケバブ屋だが美味。ファーストフードもこれならいい。文化中心。先週、リール国立管弦楽団のコンサートであたしらの前列に坐ったかなり年配の老人、ボレロの時に乗って軽く指揮する姿がなかなかだったが今日も文化中心の館内をふらふら徘徊。考えてみればチケット売り場とかでよく見る顏。もしかしたら文化中心では有名な老人、鴨。客の入り悪しき音楽会などだと「ちょっと入ってよ」なんて館員に請われコンサート鑑賞でかなり耳が肥えた「大向う」さんだったり。で今晩はLe French Mayの続きでThierry Malandain振付のBallet Biarritzのバレエ公演ご鑑賞。演目の“The Creatures”は曲が、一瞬、モーツァルトか、とあたしは思ったが、これがベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」、でバレエのタイトルも「創造物」なのか、と開演後に合点。この「プロメテウスの創造物」は1801年に維納に君臨したバレエのお師匠さんサルヴァトーレ=ヴィガノのご指名でベートーヴェンが作曲したもの。この曲をこうして聴くのは今晩があたしにとってはお初かも。何もない舞台空間でただ舞者がバレエというより「体操と舞踏きわどいところ」踊る。すっかり端正で見事。舞者もけして古典的なバレエ団の踊り手とは違い、不均衡な体形でけして美貌から程遠いバレリーナもいれば、ひょろひょろもいれば筋肉質のダンサーもいて、ただ身体表現が本当に巧み、の一言に尽きる。Thierry Malandainの演出の美しさ。ただどうもこのバレエ曲だけはモーツァルトと同じであたしは生理的に好きになれず。舞台が跳ねて香港大学のT姐さんと邂逅。このバレエ、ちょっとすごい良かったじゃないの、と感激も投合。あとちょっと演出しすぎたら諄過ぎる、逆にあとちょっとセンスが足りなかったらNHKテレビ体操の日本女子体育大学っぽい<体操>になっちまう、その見事な「おとしどころ」がThierry Malandainという人の凄さか。帰宅してラフマニノフ師匠本人の奏でる3番を聴きながら久が原のT君とメール。今日、時鳥の初音を聴いた、とT君が言うので、あたしは流行りもので目をやられたので「目を病めば 耳傾けて 時鳥」と詠んで送ると、さっと返歌あり。
目を病めば 耳傾けて 時鳥 闇の深さを聽き定めけり
ところで大岡信の「折々のうた」に対してパロディで短歌評「澱々のうた」ってどうかしら。面白そう。

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