富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-04-04

四月四日(水)寒波再来。気温摂氏十四度迄下る。午後用事あり金鐘太古広場通り抜けようとせばLane Crawford百貨店入口の靴屋だか鞄屋が物々しき警戒ぶりで何かと思い近づけば「わざとらしい」警備員廿名ほど此の店取り囲み。翌日の新聞で日本の芸人・浜崎歩の買物と知る。その買物に何事かと窺う者の多くは大陸から観光旅行の田舎漢で浜崎歩が誰か知らず。敢えて目立つための警備としか思えず。晩に映画に急ごうと再び太古広場通り抜ければJaco Pastoriusの“3 Views of a Secret”が流れている。気持ちがふと落ち着くねぇ。尖沙咀。Space Museumで映画“Things We Do When We Fall in Love”(監督:James Lee、マレーシア、06年)見る。最近のマレーシア映画にかなり興味あるが、この映画はアタシにはちっともわからない。星巴珈琲で昨日の日剰急ぎ綴るなどして文化中心にて蔡明亮監督の新作『?眼圈』を見る。邦題は(何だか意味わからぬが)『黒い眼のオペラ』で上映中。蔡明亮の映画を文化中心の大戯院で掛けるのはちょっと無謀な気がしたが客それなりに多し。この映画は台湾を離れ蔡明亮監督の生まれ故郷であるマレーシアのKuala Lumpurの裏町が舞台。蔡明亮の映画にしては珍しく雨が降らず。ただ映画に登場する苫屋、古びたビル、喫茶店など何処も彼処も冷房などあろうはずもなく高温多湿が映画を見る側にまでじっとりと伝わる。この映画での<物象>は寝床のマットレス。映画の冒頭からベンガル出身らしき男たちが下町をマットレス担いで歩く。街頭での怪しい賭けでカモにされ行倒れのホームレスの青年(李康生)がこの男らに助けられ、そのうちの男一人が李康生を献身的に看病する。冒頭に現われたマットレスに寝かされる。場面変わって植物人間で「マットレスに」寝たきりの青年(李康生の二役)。女二人が介護。一人はこの寝たきりの青年の母で場末のカフェの女主人。もう一人はそのカフェの女給。眼が開きっぱなしのこの男、意識もなければ動きもせぬが若いだけにちゃんと「下の世話」は必要。母と女給による介護の極み。ホームレスの青年は(叩きのめされる前だろうか)そのカフェの女給相手に建物の路地裏で遊ぶシーンもあり、女主人もこの青年に寝たきりの息子を投影する。高温多湿な環境に加え途中からうっすらと霧か靄が流れ始める。かなり劣悪なるhaze(朦霧)が街中を襲い人々はSARSの如くマスク姿……と言いたいがスーパーの袋やインスタントラーメンのカップを口に当てた滑稽な姿。で看護は続く。118分の映画で科白を語るのは周辺の者が何度かあるだけ。当然のように李康生らは全く何も語らず。蔡明亮の映画では珍しいことではないが。今回の映画祭のカタログで読んでも明らかなことは蔡明亮という人にとって李康生に次は何を演じさせるか、が核心ということ(李康生は予備校生の頃だかにゲームセンターで蔡明亮にスカウトされる)。92年の『青春神話』94年の『愛情萬歳』から延々とそれ。当然のように李康生の役柄はだんたんと象徴的になり今回も李康生を植物人間にすることに監督の欲が向いたもの。李康生はこの蔡明亮の映画の主演俳優なのだが彼のブログを見ると、もはや蔡明亮とは二人三脚でコメントも監督かプロデューサーの如し。
我一直在思考這樣的問題:?若市面上充斥的都是同樣的電影,那我們的電影又剩下些什麼? 多年來,我採用純手工的拍攝方式,影評人聞天祥笑稱我的電影是「精緻手工業」,因為唯有這樣,我的創作之路才不會受到太多的干預,我得以穩穩地站在我的位置,向這個世界提出我的意見。我的新片《?眼圈》即將在三月二十三號全省聯映,我們小小的電影公司經費有限,無法大力宣傳,因此我想透過這樣純手工的賣票方式,號召肯定我創作理念的朋友,希望藉由透過?的?忙,我對藝術的理念得以散播。福袋裡面有十張《?演圈》的預售票,還有一些電影相關?品。如果?肯定我的創作理念,請將手中的九張票推銷給?的朋友。為了感謝?,我將贈送一本威尼斯影展限量版的電影手冊,聊表謝意。感謝?的支持。千萬不要小看?一個人的力量,?使得弱勢電影導演得以發聲,讓不同的文化力量能在市場生存,也期望我們的社會價?更加多元。敬祝 鈞安
哲学的でありこの精緻な手工業で誰の干渉も受けず自分の場所で延々と映画を作りたい、と。ただし弱小プロダクションで資金力に乏しく映画も商業映画としてヒット見込めぬためファンにチケット販拡の協力まで願っている。蔡明亮の映画が終って映画館を出ると景色まで違って見える。
▼Z嬢は賈樟柯『東』と『三峽好人』の二本立て見たそうな。今回の映画祭でもアジア映画賞だか受賞で賈樟柯はカンヌまで賞総嘗めの勢いだが数ヶ月前に『東』を見た時に正直言って何がなんだかちっともわからず前作の『世界』も前々作の『站台』も印象に残るが『三峽好人』は筋を聞いただけで見るのはパスしていたのだが『東』で納得のいなかかったZ嬢は今回『三峽好人』まで見て同時製作の「メーキング・オブ・三峽好人」である『東』の意味がわかった、と。今回の上映はこの一回きり。

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