富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-04-05

農歴二月十八日。清明節。安倍三世、安倍内閣メールマガジンにて本居宣長
しき嶋の やまとごころを 人とはば 朝日ににほふ 山ざくら花
という歌を引き合いに出し
官邸の桜が満開となりました。桜は日本の美しさの象徴であり、桜を思う日本人の心は、今も昔も変わりません。
と宣う。昔から美しい山桜あり。但し平安の歌人の歌心と本居宣長のそれは全く異なるもの。宣長の場合、明らかに策略的に桜という花木に政治的な象徴性を求めたもの。後の近代のナショナリズムに通じる。その根源的なものを江戸で見出しただけ宣長の凄さだが、いずれにせよ宣長によって同じ桜の木がそれまでの美しさとは異なる物象性を得る。本来「桜は美しい」が「日本の美しさの象徴」はあとから結びつけられた記号であって「桜を思う日本人の心は変わった」。少なくとも平安歌人宣長の流れにある(と自ら信じていよう)安倍晋三とは「桜を思う心」として異なる。桜とかで騙されてはいけない。それにしても桜になぜ日本人はこうも弱いのか、桜、で思考停止になりかねず。で本日。午前中机あたりの雑用済ませ昼にZ嬢と尖沙咀東のRoyal Garden Hotelに向いSabatini伊太利料理店に食す。大蒜と干トマトのLinguineのパスタ。赤葡萄酒はChiantiのRocca delle Macieの01年。Z嬢と別れSpace Museumで映画『畢摩記』(監督:楊蕊、中国、06年)見る。畢摩とは中国四川省涼山の彝族の司祭のこと。文化人類学的に見事なこのドキュメンタリーの監督、楊蕊は映画『呉清源』の副監督の由。このあと二本映画見るつもりが急用できてその対応で晩に至る。二更に北角の寿司加藤。独り癒し気分。菊水の純米辛口。赤貝と小鰭。バーSに飲む。
▼アジア一の女富豪と言われる『キャンディ・キャンディ』好きの?如心が逝去。享年70歳。出生於上海。1955年父母に従い香港に移居。上海で塗料業にかかわっていた父は同じ上海出身の王廷?とは知己。その息子で幼なじみの王?輝の許に18?で嫁ぎ義父となった王廷?が創業の華懋有限公司で献身的に働く。1960年代には華懋置業興し不動産投資で成功し一大財閥となる。1980年に夫の王?輝が誘拐され助かったが3年後に再び誘拐され?如心がUS$1,100万の身代金を払い救出。更に1990年に王?輝は「まさか……」実に三度目の誘拐に遭い?如心はHK$2.6億を身代金として用意したが夫は戻ってこず華懋集團は?如心が経営の主となる。1999年に王廷?は裁判所に対して愛息・?輝の法律上の死亡認定を求め自らの財閥で実権握る嫁に対して王?輝の遺産を父である自らに受領権あり、と提訴。カギを握るのは1990年に書かれたという王?輝の遺産は全て妻である?如心に譲渡という遺言状の署名の信憑性。王廷?は息子のこの遺言状が?如心による偽造と疑ったが義父と嫁の裁判劇は05年に香港終審法院で文書偽造はないと判決出て全財産が?如心のもとへ。夫の三度の誘拐といい行方不明のままの結末といい嫁に財産すっかり握られた王廷?が何億の裁判費用をどこから拠出したかの疑問といい不透明なこと多し。?如心は晴れて疑い晴れ(市井ではまだまだ首を傾げる者少なからず)香港では?湾に世界何位だかの超高層ビル建築もあり(自らの英語名NinaでNina Towerという)財閥企業で飛躍のはずが癌に侵され70歳の数奇な生涯閉じる。

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