富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-03-26

三月廿六日(月)早晩にSpace Museumの会場で映画『副歌』(監督:崔子恩、中国、06年)見る。109分の映画でシーンはわずかに11のみ。延々と十代の兄と弟の二人が映される。両親に捨てられ二人暮らし(家があるということは両親は家に二人の子を残し蒸発という設定か)の兄弟。兄は所謂、精神薄弱。生活費にも事欠き弟はギター弾いて路上で歌い小銭を稼ぐことで糊口を凌ごうとするが身体を売りHIVに感染という背景(ここは映画では具体的には語られず解説でようやく知った事)。家族もおらず社会的福利も得られずで外界から孤立した二人。シーンは冒頭から家のなかで兄と弟は文字通り「赤裸」で振る舞うことは一見、異様ではあるが、これは「赤貧」の記号だろう。が、そういった貧困と精神薄弱、疫病といったトピックスにしては、あまりに肢体の美しい二人の若者が赤裸でずっとあることは(カメラは容赦なく全裸の二人を映す)当然、この崔子恩監督らしいところで、この映画は日本でいえば明らかに折口先生の身毒丸、それを蜷川先生が演出するようなもの。死に急ぐ弟に妖精のように振る舞う兄。精薄であるはずの兄が晩に(ちなみにこの映画はわずか5日で撮影されたそうだが物語はまるで或る日の朝から晩にかけての物語にすら見える、とくに陽光がそうなのだ。)部屋に蝋燭を沢山灯して基督教の聖式の如く対して弟に主からの給わったような葡萄酒とパンを与える。その葡萄酒は兄が夕方、自分の唾液を混ぜただけなのだが。その儀式が済み足を洗う二人。寝台に臥せると徐ろに兄は背後から弟に対して肛交の如き仕草の真似を続け物語は終章へと導かれてゆく。ほんと折口先生の世界。今晩はあと二本、映画見るつもりではあったが帰宅してやり残したお仕事の続き済ます。パスタと葡萄酒。阿部寛の『結婚できない男』だったかケーブルテレビで観る。先週あたりから忙しい日が続き憂さ晴らしにイースター連休など論外で直近で悲しいかな夏の旅行の計画立てる。

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