富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-02-14

二月十四日(水)昼にJardine's Lookoutの益新美食館で点心を食す。本日はアジアにて異教徒に盛んな聖ヴァランタインの日。余は御仏に仕える身、ローマ帝政時代に遡る269年にローマ皇帝の迫害下で殉教せし聖ヴァレンティヌスに因む祝祭に関わる事情もなし。だが市井は聖ヴァランタイン日の賑わい。MTRの中環站ではハローキティーちゃん立ち合いでハローキティロマンスウェディング挙行され政府の合法化で婚姻註册も能う。好景気にこの「祝祭」の日の花束は軒並み15〜20%の値上げだが売上げも昨年の三割増しの由。男友からの花束が職場に届くのが香港の女性にとって最大の誇り。花屋が届けるよか仕事休んででも男友本人が届ければ幸甚。今朝はKCR西鉄道の大帽山トンネル内では列車パンタグラフ燃えて乗客緊急避難となったが(幸い死傷者なし)この列車にもわざわざ休暇とって元朗から九龍まで彼女の仕事場まで薔薇の花99本(九九は発音が「久久」で永遠に、の意、時価総額HK$1,000なり)届けようした男性が不運にもこの事故に巻き込まれ薔薇の花束抱えたままトンネルから脱出し緊急輸送用バスに乗り換え数時間かけ無事に花束を届けた由(以上、蘋果日報記事)。本日、携帯電話をNokia6300に取り換え。「携帯電話にデジタルカメラがついていることは根本的に間違っている」という信念から、これまでデジタルカメラ機能なき携帯を使ってきたが、前回もカメラ機能のない携帯でNokiaでは6021というかなりダサい機種以外に選択の余地なし。今回は2000番台の廉価機除き「デジカメ機能なし」が存在せぬ状況、で内心忸怩たるものありつつ6300に。デジカメ機能は200万画素も凄いがホワイトバランスから露出補正まで備わっており驚愕。白黒モードもなかなか。だが「携帯電話にデジタルカメラがついていることは根本的に間違っている」のであり、だいたい携帯を手にした時に指がちょうど当たる位置にレンズがあり必然的にレンズが汚れる、なんてことが許せぬ。晩に帰宅し灣仔碼頭餃子たくさん茹でて食す。
▼今週日曜日開催の東京マラソン。東京のシティマラソンは79年の東京女子から。81年の男子の東京国際マラソン始まる際に大規模市民マラソン構想も浮上したが警視庁から警備上参加者は100人規模にという要請などあり制限時間厳しい、謂わばプロ級に限定。市民マラソンは今年111回目のボストンのほか世界各地で開催されるが紐育ですら71年に127人参加が最初(ちなみに香港マラソンも97年の第1回は千人規模)。日本国内最大規模は沖縄のNAHAマラソンで前回は21,000人が参加。それが今回の東京マラソンはこれまでの実績なく関係者の間でも「まだ取組みが甘い」と声もあり主催事務局の幹部も「運営がスムーズにいき、都民にも受け入れられるには最低でも5年はかかる」と(朝日)。だが那覇を超える規模での実施は日本陸連幹部によれば「我々も背伸びしているのはわかっている。とにかく石原知事の大号令で3万人、7時間でやろうということになった」由。
▼岩波『世界』三月号に台北在住の本田善彦氏が中国の中央電視台(CCTV)の大型ドキュメンタリー「大国崛起」について興趣深い分析を掲載。中国でこのような大国の歴史など関心もたれたことが、これまでの帝国主義と植民地支配という史観から離れ、近代国家の資本主義制度における競走力と権力のバランス、良性の社会構造、法治の尊重などへ関心が移っただけでも興趣深いところ。中国じたいに大国意識、覇権意識でもあり。欧米列強の大国化と並び合わせ日本の明治の近代化を取り上げただけでも中国にとってエポック。番組なかで
伊藤博文的な)近代化と天皇制を含む伝統との融合図った明治維新は事実上、1890年くらい迄で終わっており、1889年の日本帝国憲法の公布と90年の帝国議会召集は(これが「何事もこのへんが始まり」の明治20年代なのだが)日本の大国化に際して対外拡張、対内高圧な軍国主義路線を摂る上での基礎になった。(中国社会科学院日本研究所の蒋立峰所長)
戦後日本には明治維新以降に築かれた下地である科学・技術・人材……すなわちソフトパワーが残った。それが日本が戦後に復興を遂げる上での基礎となった。平和憲法の枠組みのもと、明治維新で培われた基礎が作用を発揮した。(同研究所の金煕徳研究員)
などと分析している由。ただ、この見方に対しても中山大学哲学系の袁偉時教授(この人による中国の歴史教科書批判の論文が掲載され『氷点週刊』が06年1月に停刊処分)は『亜州週刊』の取材に対して
国家の興亡盛衰を決するのは指導者ではなく、制度の選択だ。ロシアが民主法治制度を選択しなかったのは根本的な誤りだった。日本も同様だ。同番組では日本が各方面で西洋の先進的な経験を学んだと描いている。しかし日本が政治制度の面で近代化せず、西洋の民主自由制度を真に学ばなかったこと、そして専制制度が軍国主義に結びつき、戦争発動の基礎となった点を、同番組は回避している。また総括の部分で、国家が長期的に安定する上でのキーポイント……民主制度、憲政と私有財産と自由の保護の重要性にも触れていない。
と指摘。御意。

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