富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-02-07

二月七日(水)朝日新聞の生活面の「わが家のミカタ」なる記事で家づくりを建築家とともに楽しむという内容で建築家・大島健二氏によるN兄の能舞台のある家「雙徽第」が取り上げられているではないか。一度、久が原のT君とお邪魔したが、まさに施主と建築家の見事な合作。じつはこの雙徽第が建つ前の古い屋敷だった頃、先帝崩御のあと平成になってすぐの頃だが、旧家に居候させていただいた時期あり。シアトル出身で日本舞踊を学ぶJ君、余、そして夏には伊太利からN兄の知人で大野一雄先生のワークショップに舞踏学びにきたP君とL嬢で、夜な夜な文化論など語り合った懐かしい日々。早晩に歯科治療。台湾大学歯学部出のT歯科医は心なしか誤解なのだが「台湾大学で中国語を学んだ」余に殊更愛想よし。申し訳ないが今更「台大では学んでおりません」ともいえず。治療費も相場より廉価なのだが同窓割引も含み、だろうか。奥歯の治療で麻酔が残っていたがジムのトレッドミルで5kmほど走る。ランニングには支障ないが途中で水を飲んだらボケ老人のように口からでれでれと水がこぼれる。今晩のNHKのNW9は昨晩に続き静岡の稲取温泉の観光事務所だかの事務局長を全国から一般公募、の続報。こんなの報道するヒマがあるのなら、もっと政治などメスを入れるべきだが……NHKにはそれができず。中井英夫の『見知らぬ旗』を読む。東大生であった中井本人の戦時中の市ケ谷参謀本部に勤務させられた日々の回想小説(70年に『海』に連載)。我々の勝手に知る(想像にすぎない)戦時中とは全くことなる中井英夫の語る当時が実に興味深い。
丸谷才一氏が朝日新聞の「袖のボタン」の連載で一月に「戦後評価」と安倍三世の「美しい国」への非難、書いたのを読んだが、昨日だったかもまた今度は「敬語」について「敬語は日本独特のもので、他の国にはないと思っている人がいる」という書き出しで文化審議会国語分科会の「敬語の指針」を読んだ丸谷先生曰く
敬語を普遍的な人間文化のなかに位置づける見方がない。(略)敬語を日本独特のものとして尊重したい気持で文科相が諮問し、そのほのかな(?)ナショナリズムの線にそって分科会が答申した気配があるように見える。もちろん日本語の敬語は英語のそれにくらべて遥かに複雑で厄介である。敬語は言語による待遇表現なのだが、これが日本では、長幼の序や身分の上下を重んじる気風、儒教封建制度天皇制や内と外の区別のせいで、度が過ぎる煩雑なものになった。過剰を規制する機能主義的な精神は幅をきかせなかった。
と。敬語を日本独特の思いやりの言葉や奥ゆかしさととらず。「敬語が複雑にならなければならなかった」日本の風土。
▼窃盗で逮捕された埼玉在住の20歳の男性が借金取りから逃げる家庭の事情で生まれてから出生届も出されず戸籍もないまま義務教育も受けずに20年生きてきた、という報道あり(6日の朝日)。不幸というのは簡単だが、これの発覚に対して母が「自分たちでやれるところまでやってきた。そっとしておいてほしい」という言葉が耳に残る。捜査員の「きちんと学校に通っていれば、こんな事件は起きなかったかもしれない」という一言。こういう常識的な言葉、感想……の怖さ。一般的良識として否定できないようでいて「学校に通っても窃盗犯になる人もいる」。
▼昨日の信報でWilliam?智達君が彼の故郷である「新界」について書いている。今月朔日の新聞で、一月末に新界で大型トレーラーの車輪に頭を巻き込まれ死亡した12歳の少年の、その祖母が泣き崩れる写真を見たWilliam?君が、広大な農村地帯であった新界が「発展」したことで今では貨物の集積基地となり大型トレーラーが爆走する現実を嘆く。William?君の入稿は紙面搭載の数日前のはずだが折しも昨日、今日の新聞には、その新界で天水圍の新興住宅地Fairview Parkの住民等が付近を走る大型トレーラーの走行止めさせようと路上で通行止めの実力行使。住民に利がありそうだが付近の村の集落にしてみれば大型トレーラーが幹線道路通れず、では付近の村落に近い迂回路に入り込むこと必至で「新住民が何を勝手なこと言いなさる!」と抗議。元凶は不法な貨物集積場の存在に無策の政府政策なのだが。世界一の扱い量誇る香港の海運ターミナル、コンテナを泊めると当然、その料金が嵩む。そこで新界のあちこちに不法で貨物集積場が点在、ここから幹線道路で結ばれたターミナルにタイミングよくコンテナ運送。地元のWilliam?君曰く、私有地を営業用の駐車場にするだけでも無許可では批准されぬのに貨物集積場など言語道断だが最近では空きコンテナに水道や電気まで引張り仮住まいする輩まで現われた由。まさに荒涼。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/