富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月卅一日(水)晴。昨日までの悪寒と鼻水から今日は喉にきてほとんど声が出ず。熱が出ずに眩暈だの咳だの、といった症状の人少なからず。ウイルスの脅威、と言うが実際には医薬が「発達」しウイルスもそれも負けじとより進化して、の鼬ごっこ。その舞台となる人間の身体だけがどんどん壊れてゆく感じ。
▼厚相柳澤君の失言による野党からの罷免要求。民主党社民党など修正予算案の審議拒否など強行な姿勢で勢いづいてみせるが「人間として許されない」という表現など如何なものか。人間以外に女性をこう蔑視した発言などもともとせぬ。日本共産党は国会の予算案審議と柳澤失言は別として審議拒否には同調せず(民主党らの予算委欠席で「審議にならず」と退席してみせる)、柳澤失言についても「人間として許されない」といった感情的な表現はせず(科学的社会主義思想の立場か?)たんに「最低最悪」(志和氏)と。いつの間にか最も現実的な政党が共産党になっているの鴨。
▼中国が胡錦濤国家主席のアフリカ歴訪を前にアフリカ33カ国の対中債務免除を決定。円借款受けている国が有人宇宙ロケット飛ばしたりアフリカ諸国に経済援助ばかりか、その債務免除とは!とこれもまた日本の嫌中派が怒るのも当然か。まぁ寛容の精神で「間接的であり日本からアフリカにも善意」と思えば良いし(アフリカ諸国とて日中の台所事情は弁えておろう)、それよりも気になるのは国内にさまざまな貧困問題など鬱積であるのに対アフリカ援助とは……<国家の意思>まざまざと見せつけられる思い。
▼廿九日の朝日(衛星版)に掲載の、本田由紀さん(東京大学助教授・教育社会学)の教育再生会議批判が興味深い。安倍三世肝煎りの教育再生、一言でいえば「インパクト重視」。ゆとり教育見直し、学力向上のための授業時間増、イジメ加害児童生徒の出席停止措置、奉仕活動必修化。批判の骨子は「授業時間数増加は学力向上に直接結びつかない」こと。そもそも学力低下は「現実に生じているのか」と疑う。日本の子どもの学力は国際的に見ても「非常に高い水準を維持している」。ただしOECDの読解力調査結果(04年12月)の云わば「日本の為体」で日本の学力低下が印象づけられたが、あれは「日本の成績上位層には低下は見られないが、成績下位層の比率と点数低下傾向が増大しており、全体ではなく下方に「底が抜ける」形での低下が危惧されている」と事実を見破る。つまり「落ちこぼれ」が極端に落ちこぼれてしまっているのが実態。また日本の教育では、勉強が「好きだ」とか「楽しい」と答える子や将来の仕事と結びつけて勉強しているという意識がもてない現状に問題がある、と。具体的には「学ぶことの意義」を中身に則して実感できるような教育内容の改善、下方の「底抜け」が生じることを防ぐ制度的な仕組みの導入、の必要。「今回の報告のように手前勝手に「愛」や「規律」「奉仕活動」を押しつけても、子どもたちはいっそう内面的な離反を強めるだけ、と本田先生。御意。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/
富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/