富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-01-14

一月十四日(日)昨晩はそれなりに赤葡萄酒美味しくいただいたが今朝は六時起き、で早朝のバスは高速ぶっ飛ばしで大老山の隧道抜けた小歴源まで香港島出てからノンストップ。Hong Kong Marathon Pro 10Kというロードレースに参加。最近全然走っておらず無謀といえば無謀。小歴源から城門河に出て運河沿いを下り沙田競馬場側に渡っての往復。沙田の競馬場の向正面走るわけで、ふだん見ることない調教場から直接入れる試走用トラックなど眺め「競走馬は1000mの直線をSilent Witnessが55秒台と1分以下で走るところを自分の場合6分?」などと考えたり当然、走りに集中できず。カメラ持って走ればよかった、と後悔。さくさく、っと走って10kmで久々に1時間切る。普通の人には「遅くない?」の時計だが6分/kmというのはあたくし個人には「自分を誉めてあげたい」。レース終わってK氏の愛車Toyota Crown Saloonで西湾河までO氏ともども送っていただく。猛烈に空腹で太安樓の三益でHK$10とお値打ちの雲呑麺食す。ジムに一浴し帰宅。昼すぎ上環。午後、頼まれ事の仕事済ませ中環をふらふら散歩。最近、古いビルの消火栓が安部公房的に気になる。香港の規格にも合わぬ、おそらく老朽化したビルも建てた後から消防条例とかで消火装置が敷設されたから、なのだろうが、赤色の管が植物のようにビルの壁を這う姿が魅力的。FCCハイボール二杯。『世界』12月号、昨日購った内田ユキオ『ライカとモノクロの日々』読了。ライカの凄いところは、そして何が人を魅了するか、といえば「素人でも素晴らしい「っぽい」写真が撮れてしまう」ことなのだろう。だから何十万円もかけて、たかがレンジファインダーのカメラを手に入れる。Oliver'sでTio Pepeのシェリー酒購い帰宅。日本との時差1時間で幸いに大相撲でデーモン小暮閣下の年に1度の相撲解説拝聴。涌き出ずる泉の如き解説、お見事。おでん。
▼昨日の朝日新聞「私の視点」にリナックスカフェ社長の平川克美氏が憲法改正について「9条、「理想論」で悪いのか」と一文を寄す。明快。
現行の憲法は理想論であり、もはや現実と乖離しているといった議論がある。私は、この前提には全く異論がない。その通りだ。確かに日本国憲法には国柄としての理想的な姿が明記されている。理想を掲げたのである。そこで、問いたいのだが、憲法が現実と乖離しているから現実に合わせて憲法を改正すべきであるという理論の根拠は何か。もし現実の世界情勢に憲法を合わせるのなら、憲法はもはや法としての威信を失うだろう。憲法はそもそも、政治家の行動に根拠を与えるという目的で制定されているわけではない。変転する現実の中で、政治家が憶断に流されて危ない橋を渡るのを防ぐための足かせとして制定されているのである。当の政治家が、これを現実に合わぬと言って非難するのはそもそも、盗人が刑法が自分の活動に差し障りがあると言うに等しい。現実に「法」を合わせるのではなく、「法」に現実を合わせるというのが、法制定の根拠であり、その限りでは、「法」に敬意を払われない社会の中では、「法」はいつでも「理想論」なのである。
御意。余はこれまでこれほど明快な護憲論を見たことなし。同じ「私の視点」に桂歌丸師匠も気骨あるご意見あり。
▼やはり凄い人だ、と思ったのは今日の朝日の読書欄で、ぼんやりと宇野弘蔵『経済原論』の紹介があり、本文で
岩波全書版の宇野弘蔵著『経済原論』には人生の二度の重要な局面で助けられた。一回目は、同志社大学新学部二回生のときである。
という書き出しを読んだだけで、「あ、佐藤優だ」と思って、やはり間違いはなかった。それくらい佐藤優が強烈。書評で、これまでの数行で「あ、この書き手は」とわかったのは柄谷行人山崎浩一くらいしか記憶にない。

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