富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-01-09

一月九日(火)四年近く前まで香港に住まわれたK氏来港にて再会。K氏は奈良の由緒ある古刹で岳父がその寺の院の一つのご住職。K氏もいずれそれを襲うが国宝のお堂に国宝の仏像、重要文化財など寺内にいくつあるか、というほどの寺で法会や供養会など多く大変な由。暫し昔話。午後、湾仔のCECで見本市あり文具展を見にいくが期待のわりに何も興味涌く品もなく(日本の馬印という黒板&白板メーカーの白墨などはとても感動的ですらあったが)隣接して開催のToy Show覗くと童心にかえり楽し。ダイキャスト関係が充実。昏時、尖沙咀。開いたばかりのバーWでフォスター麦酒一杯。香檳大廈。David Chan氏のカメラ店に寄る。ライカのM6を見せてもらう。向いの店の方に、と普段は閉めて展示だけの向いの店でM6をTTLも含め三台、眺める。垂涎の的は製造番号からすると1998年がM6の製造中止であるから前年の97年くらいのであろうM6である(すっかりライカ通気取り、実際この数ヶ月かなり勉強)。まるで新品だがDavid Chan氏の話では、どこかの店のデッドストック物の由。尖東の東来順にバンコクから来港の(といいつつ昨日まで大阪で美々卯でうどんすき食していたそうな)Y氏とZ嬢と「寒いから」と?羊肉、格別。東来順は?羊肉ばかりか鹵水鴨など冷菜も美味。葡萄酒は当然、Grace Vineyardで、Cabernet Sauvignonの02年を2本。胃腸風邪でかなり体調悪かったが予想通り復活。
▼唯靈氏が信報に「即席麺考」の一文寄す。安藤百福翁逝去で翁が「インスタントラーメンを発明」と紹介されるが、余もいぜんから気になっていたのは香港で食す伊麺の食感がとてもインスタントラーメンに近く、またお湯でさっと湯がいて食すのなら蝦子麺もあり。で唯靈氏となれば1940年代に食べた百吉鶏茸麺がお湯をいれて即食、と。廿年ほど前に唯靈氏が食事の席で紹介された客の一人が、その百吉鶏茸麺の創業者であったそうで、昔に食べたこの即席麺のこと思い出した唯靈氏。安藤百福華人であり、どこかで蝦子麺やこの鶏茸麺を食したのではないか、と憶測。ふだんは即席麺など食さぬ唯靈氏だが、欧州で寒い独逸でなど硬いパンにハムだののせて食す寂しさを思えば温かいカップヌードルは美味かろうし、唯靈氏じたい初めてヴァージン航空の飛行機に搭乗の際に機内食嫌いの氏、思わずカップラーメンを食した、と言う。
▼久が原のT君も五年ほど前にさすが東京で梅葆玖の「貴妃酔酒」をご覧になった由。芸達者で上品とはいえ健康的で耽美の感というより「痩せた梅幸風」とは言い得て妙。梅葆玖に新劇女優として芽が出ぬ恨みで古典劇を弾圧した江青のことなど語らせたらさぞや面白いか。歌劇というものの凄さについてT君がマリア=カラス1949年ナポリ実況でヴェルディの「ナブッコ」歌う時のこと教えられる。終幕近くの合唱「行けわが思いよ金色の翼に乗って」は(当今はサッカー贔屓の日本の若者も知ってるナンバーだそうだが)みんな最初はおとなしく聴いていたのが途中で天井桟敷の誰かが感極まり「Viva! Italia!」と叫ぶや否や満場の歓呼と絶叫で収拾が付かなくなりとうとう暫く曲を中断の上、また初めからアンコールとなった由。歌劇はほんとうに知らずにいたが先週末の梅葆玖の「宇宙鋒」での観客の気の高揚に遭い、いろいろ考えさせられる。

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