富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-11-19

十一月十九日(日)朝日の読書欄で陣内秀信氏が(この陣内書評の隣にある高原明生先生の米国の中国本の評論も面白いが)元田與市『日本的エロティシズムの眺望』という本を紹介。極端に例を出せば、前近代の日本では女性の乳房は男にとってエロティックではなかった、と。それが性的な視線になるのは近代を迎える頃の西洋への憧れ、とする。元来、女性の表情や容姿、浮世絵に見られる脹脛や太股の一部のチラリズム近松の曾根崎心中で人形浄瑠璃で男の人形の手が女の人形の素足や肌を触れる、そのあたりにあるエロティシズム、と言う。風邪からだいぶ回復したが頭痛と喉の痛み残り午前中大人しく養生。昼すぎに尖沙咀。香港芸術館で中国の20世紀、恐らく最期の文人画家であろう齊白石の作品展(遼寧省博物館収蔵品)開催中で、それを見るつもりがのんびりと隧道バスなど乗ったら意外と時間要してしまい(新聞に目を通すにはよかったが)じゅうぶんな時間なく齊白石は断念。それにしても大気汚染厳重。風邪っぴきでマスクしていたからいいようなものの、ちょっと歩くのは躊躇うほど。ぶらぶらとカメラ屋など覗きながら漫ろ歩く。ライカのM8までは要らぬ、EpsonR-D1sでライカレンズがいくつかあれば後生何も欲しくないなぁと思う。今日も午前中、書斎で書棚に並んだカメラを眺めがならフィルムカメラをデジタルの時代だからこそ愛着もって使おう、と思っているのに全く使わずにいて、このままではカメラ本体は劣化しレンズにカビがはえるのは必至。それならいっそのこと全部処分もあり?などと考えた次第。薮用あり金鐘。久々に競馬の話題。今日は沙田で12月の香港国際レースの前哨戦となるスプリントとマイルの予選あり(いずれも地場G2)。午後薮用あり中継すら見られず。結果、スプリントは馬主W氏のSunny Sing(新升力)に全力投球したが6着(Silent Witnessは4位同着で優勝はAble Prince)。で悔しい結果は珍しく三連単など買いましたマイル予選。一番人気のArmada(好利威)の勝ちは堅いと軸にして実は狙いはSir Ernesto(小武士、10倍)とThe Duke(星運爵士、16倍)を2、3着の脚にした2点買い。結果、Armadaで2着にやっぱりまだ確実2着でThe Duke、でSir Ernestoが3着に入れば「やったねライカ」の500倍?のはずが2番人気のFloral Pegasus(俊歓騰、4.1倍)がSir Ernestoと1/4馬身差で3着に食い込んでしまい「ありがち」な負け、の結果。ライカ、とまでは言わぬがEpsonR-D1sへの道も遠い。夕方遅くHollywood Rdの懇意にするカメラ屋に寄る。銀塩カメラの中古機下取り価格がわずか一年前より激安というか、もはやタダ同然となっていることを知る。カメラ屋のご主人曰く下取りしたところで放出された銀塩カメラ溢れてしまいどんなに安くしても売れぬ、と。御意。擺花街でばったり遭遇したのはカナダ人のE君。香港でも屈指のおしゃべりで遭ったら最期、半時間は立ち話は覚悟。それも「ちょっと此処ぢゃ何だから」とエスカレータ下の階段横の植え込み花壇に腰かけ「蜘蛛女のキス」のモリーナの如くジェスチャアたっぷりに話し始め、余はバレンティンほどにも話せず、ただ間の手を入れる聞き役となる。ただ無駄話ではなく一つの話題で饒舌に物語るから聞いてタメになる話も多く今日の話題はカナダの年金制度について。老後は日本に帰るの?というちょっとした問いに「帰らないだろう」と答えると「年金は?」「国民年金も入ってないし貰えるはずもない」からアトは延々とカナダのお話でカナダの場合、所得や年金累積積立額により年金給付額に多い少ない、はあるが基本的に国民は全員、年金の対象である、と。日本はおかしい、年金がもらえることは国民の権利であり、その義務を行使しない政府をなぜ支持できる?、とE君。御意。だが(珍しく日本政府の肩を持つが)税率は所得税が収入の4割強のカナダと日本を比べられぬし、日本の老齢化は深刻で若年層の移民など多いカナダとは違う現実がある、カナダも将来のことは約束できぬのでは?と問うと、E君の話では確かに若者の老後までは確実な保証はないが現在40代まではまだ確実だと言う。でなければ誰が年金積立どころか税金を払おうか、と。国家、政府とは、ここまで国民が「使ってナンボ」のもの。「使われてナンボ」ぢゃない。それにしても十数年前なら蘭桂坊のディスコだのでばったり遭ったE君と立ち話で老後と年金が話題とは……。帰宅して晩におでん。
▼越南河内で開催仲のAPEC首脳会議。日中外相会談というとアジアの両大国の外交の華の如し。だが面子が麻生という「筑豊飯塚の若頭」と「山東省青島の網元」の如き李肇星であるから、笑顔での握手はどう見ても山あいの畑地めぐる抗争での示談か手打ちにしか見えず。その李肇星外交部部長、記者団から新嘉坡海峡時報記者で中国で身柄拘束されたままの香港人記者・程翔氏について質されると「誰是程翔?」と答え「那他是中国人還是外国人?」と逆に記者団に尋ねてみせる。唖然。

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