富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-11-18

十一月十八日(土)風邪直らぬ。深?に用事あり香港から直通のバス仕立て皇崗の境界越え深?は宝安区の福永へ。工業都市建設ラッシュで殺伐たる風景。日系某社の工場見学。実に考えぬかれた組立ラインで河南、湖北、湖南、陜西省などから集まった千名超える平均二十歳の女性(7割)が精密機器の組立に従事。精緻なる工程を寡黙に唖然とするほどの素早さで作業する態に言葉もなし。器用さ、そして何よりも視力が抜群でゼロコンマ単位の精密作業を裸眼でこなす。日本人は細かい作業に向いて勤勉? 工場の責任者の方の話では同じ工程をそのスピードでこなすことは日本では不可能だそうで、この工場の生産製品は実は日本でも全く手をつけておらぬ会社にとっての新機軸商品で、それが最初から深?のこの地で生産されている現実。昼に柴火酒家なる湖南料理の食肆に食す。美味。東莞、深?で手広く展開の、このテの飲食店は数限りなし。深?というと重慶火鍋の印象強烈だが湖南省出身者などかなり多いわけで湖南料理も深?らしさ。午後、香港に戻る。風邪からだいぶ回復。帰宅して夕方にハイボール飲む。風邪の時にハイボールがいい、と誰だかも言っていた。Z嬢が湾仔の靠得住のお粥買ってきてくれて夕餉。風邪治すために寝入る。
Milton Friedman逝去につき日本の新聞の経済面の記事。フリードマンの経済思想が世界に大きな影響与えた、という要旨で、一つの例として南米智利を取上げる。
チリの有力紙メルクリオ(電子版)は、「彼(フリードマン)の思想の多くが米国よりチリで先に具体化され、成功を収めた」というエコノミストの言葉を紹介した。チリでは、アジェンデ社会主義政権をピノチェト氏が73年のクーデターで打倒。経済の混乱収拾に向け、フリードマン氏の下で学んだ経済学者たちを重用した。「シカゴ・ボーイズ」と呼ばれた彼らは民営化と外資導入を推進し、インフレ抑制と経済回復を果たした。ただ一方で、貧富格差が広まり、失業率も上昇したとされる。
と。一読してアジェンデ社会主義政権で疲労した国家をピノチェト大統領が建て直し経済が持ち直した、とまるでピノチェト体制の讃美。「民営化と外資導入を推進し、インフレ抑制と経済回復を果たした」という功績の断定に比べ、負の側面は貧富格差が広まり、失業率も上昇した「とされる」と婉曲な表現にも表れる。一瞬、産経新聞のようだが、これが朝日新聞
▼いじめ、について大人の大きな反響はちょっと変、と思う。朝日の「いじめられている君へ」なんて一面の最近の連載も読まないようにしているが鴻上尚史氏が「死なないで逃げて逃げて」と題して書いていたのをふと読んでしまう。
あなたが今、いじめられているのなら、今日、学校に行かなくていいのです。あなたに、まず、してほしいのは、学校から逃げることです。逃げて、逃げて、とことん逃げ続けることです。学校に行かない自分をせめる必要はありません。(略)だいじょうぶ。この世の中は、あなたが思うより、ずっと広いのです。あなたが安心して生活できる場所が、ぜったいにあります。それは、小さな村か南の島かもしれませんが、きっとあります。蹼は、南の島でなんとか生きのびた小学生を何人も見てきました。
と。ふと、香港もそんな南の島なのかも知れない、と思う。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/