富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-11-06

十一月六日(月)朝五時すぎに目覚め目呆けたまま居間に向うと「灯をつけっぱなしかしら」と思う明るさは東空に十五夜の月が部屋の中まで青く明るく照らすもの。思わず見惚れる。日本酒でもくいっと一杯ひっかけたいところだが朝の五時は拙い。じっと我慢。今日は、三晩も続けて寺山修司だった所為で、ふと気づくと頭のどこかで「死んでくださいっ〜お母さん〜」というフレーズがエンドレスで流れており、脳裏の画像は天井桟敷の面々が不具者だと奇形演じる見せ物サーカス小屋。困ったもの。T牙医に歯の治療請う。今日の治療も奥歯の詰め物したがHK$300とやはり廉価。T医師にも熟練の看護婦にもすっかり知己のごとく振る舞われ、やはり台大仲間と思われてしまったようで恐縮。日暮れると九龍は飛鵝山の山の上空にくっきりとした月が宙に吊ったように見事に浮かぶ。学芸会芝居の舞台セットのような満月。晩に帰宅してドライマティーニ一杯。山芋でとろろ、麦飯……とくれば焼酎。八十年代の新宿南口の「麦とろ」気分。南瓜、それに昨日Kadoorie農場で仕入れた菠薐草のお浸しと芥蘭。美味。
▼陶傑氏が蘋果日報で中国の博禍を嘆く。中国政府の発表によると中国の賭民による博打で海外に流出する資金は六千億元に及び今年年初よりの八ヶ月でマカオの21箇所のカジノで中国からの賭民らによる投資額は321億元。この六千億元が海外流出しなければ中国は第三世界の貧窮国にあらず、と陶傑氏。大陸の貧官どもの収賄、公金浪費や実質的横領は年に1兆元に達し13億人で老人や子ども、不具者や乞食など人民1人あたり百元余の損失。これが10年で10兆円だと思うと、これが公積金にでもなり自然環境や医療福祉、教育などに投資されていれば中国は米日両国に並ぶ一流強国になれる、と。それにしても国内各地に蔓延る、銀行と癒着し土地投機して高値で売り払い自腹肥やす地方官僚どもにとって中華民族の素質や総合的国力の向上など眼中になし。かりにどうしてもカジノ好きが止められぬのなら賭場をウルムチやラサに設けてはどうか、と(笑)。1年に六千億元だとしたら中央政府は5割の上前を撥ね民生基金としてウイグルチベットのインフラ整備に充て結果的にウイグルチベットの独立分子駆逐し少数民族は漢化される。マカオも賭場は米国のラスベガス資本が大挙して進出し、その中に中国の民族資本家はわずかに一つのみ。中国大陸での贈収賄や官民腐敗によりマカオが儲かるという、まるでマカオが胎内に育つ赤子なら母体(中国)は不断に栄養を送り続けねばならず、中国が汚職取締りなど強化すればマカオの流産は必至。マカオの賭場経済崩壊すれば宗主国ポルトガルの知徳でEU旅券有するポルトガル市民はみな大量にポルトガルに移民しかねず。結果、大陸の汚職風土がマカオの繁栄維持し続けることに、と陶傑氏。
▼米国の中間選挙民主党かなり有利の由。「ブッシュのイラク征伐は間違いであった」と、確かにその通りだが、それを知るためにいったいどれだけの代償がないと学べないのだろうか。人間は間違いがあるもの、その間違いがあっても悔いて改めて真実と正義を求めて生きていこう、とアメリカのこの精神も百歩譲って「悔い改めぬ」、例えば侵略者たる祖父の功績に酔うどこかの国の首相や「勃起した陽具で障子破る勢い」以外の勇気もたぬ作家都知事よかよっぽどマシだが、「ブッシュのイラク征伐は間違いであった」こと学ぶためにイラク市民の死亡は最低でも5万人で間接的な死亡者含めると65万人を超えるという指摘もあり、加害者たる米軍とて2818名の米軍兵士が死亡し負傷は21419人、戦費はHK$2.6兆、毎日HK$19.5億費やさねば「間違いがわからない」とは(以上今年10月末までの総計)。

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