富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-11-03

十一月三日(金)皇居にて文化勲章親授式あり。聖上陛下から吉田秀和翁に文化勲章御親授。禁中車寄からただ一人歩み入る翁の御姿、車椅子どころか足早な通常歩行は実に矍鑠たるものにて一驚、と久が原のT君。五人の受賞者より最高齢ゆゑ吉田先生謝辞述べ陛下答礼。まさに「君臣相和す」の景ながら先生が皇居にて……とは夢想だにせず。荷風散人が曰ふ、下世話にも言ふ、長生きはするものなり、と。記念写真で先生の隣席に安部三世着座。先生の胸中察すべし。早晩に久々の歯科治療。老いの証か奥歯欠けたり詰め物剥れたり。簡易なる治療のはず養和病院の門敲く要もなく近隣の間口一間半、四畳半ほどの診察室の歯科訪れる。歯科治療費はまるで暴力バーの如し。患者の住所で治療費が変わるといつた風評すらあり住所は嘘でもガサツなる路地裏とでも書けばいいとか。待合に医師の大学の卒業証書の刻板あり眺むれば台湾大学歯学部卒。思わず治療終わり「台大のご出身で?」などと患者の分際で愛想売り医者も「台大に留学でもされたか?」と聞き返され(事実、そういう過去はないが背に腹はかえられぬ嘘も方便)その結果か?、まさか、いずれにせよかなり廉価で相済む。Z嬢と西湾河に待ち合せ二記海鮮酒家に食す。晩に香港電影資料館にて世界電影経典回顧2006節目3で寺山修司映画特集あり「さらば箱舟」観賞。70頁の寺山修司全カタログをこの寺山特集のために制作し観衆に無料配布。かなり緻密な資料にて立派。当時、この映画に出演の小川真由美が髪をばっさりと切ったのが日刊スポーツの芸能欄だかで大きく取上げられていたような記憶。物語は近代化で崩壊する村落共同体。とても素直な内容とあらためて思う。ギリヤーク尼ケ崎氏も出演、八十年代っぽい。寺山修司の映画での遺作。寺山修司が亡くなったが47歳とは……。

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